過去に仕事で『懐かしのアニメ 最終回はこうだった!』という本を企画・制作した。
その際、重要だったのは掲載するアニメ作品選び。できるだけ多くの人に楽しんでもらえるよう、人気のあった作品をチョイスしようとしたのだが、編集会議で最も白熱した議論となったのは、1969~71年放送のアニメ『タイガーマスク』を取り上げるかどうかだった。
あまりにも有名な最終回だからこそ、「今さら本で紹介するまでもない」「もっと忘れてしまったような作品の方がよい」という意見が強かったのだ。そして、タイガーマスクは、『あしたのジョー』とともに、リストから外れることになった。
そのラストをご存じない人のために紹介すると、虎の穴最強の男・タイガー・ザ・グレートとの試合中、正義のマスクを自ら脱ぎ素顔をさらしたタイガーは、反則技をフルに使い、最後はリングを照らす照明灯にグレートを逆さ吊り。まさにフルボッコにして勝利する。
そして、「俺が帰ってくる頃は、子どもたちは必ず正しい心で成長しているに違いない」というセリフを残して一人飛行機に乗り込み(行き先は?)、ちびっこハウスの子どもたちや、あの健気で美しいルリ子さんの前から姿を消したのだった… 。
それから約10年。
タイガーマスクは私たちの前に帰ってきた。それもアニメの世界ではなく、現実のプロレスラーとして。正しい心で成長したであろう子どもたち(私はもちろん… 自信なし)は、皆心を躍らせたはずだ。
現実的な話をすると、テレビ朝日系で放送されることになった『タイガーマスク二世』とのタイアップであり、タイガーとなった佐山聡も最初は乗り気ではなかったようである。
1981年4月23日、蔵前国技館のダイナマイト・キッド戦で初登場したタイガーは、ともすれば「単なるコスプレ」ともいわれかねない状況の中で、圧倒的なスピードと、これまでに見たことがない動きを連発。後に「四次元殺法」と呼ばれる華麗なテクニックの数々で、あっという間にスターとなった。
試合は軽やかなステップから始まる。速射砲のように繰り出すキック、滞空時間の長~いドロップキック、いかにも破壊力がありそうなローリングソバット、相手をコーナーにつめて繰り出すサマーソルトキックなどを初めて見たときは、自分が強烈なダメージを食らってしまった。
ときには、ロープの上を歩いたり、「あんなところからとどくわけがない」という飛距離のダイビングヘッドバッドなども魅せる。極めつけは、場外の相手に対して反対のロープに飛んだあと、リング内で側転をしてからトップロープを超えてプランチャ。これはまさに異次元。アニメ以上の強烈なインパクトとなった。
スタン・ハンセンは超重量級のレスラーとして、プロレスの世界観を変えたと思うが、タイガーは、それに輪をかけて、体操選手のようなボディバランスとリズム、そして創造性豊かなアクロバティックファイトで一世を風靡。後のプロレススタイルが根本的に見直されるきっかけとなった。まさにレジェンド。
さて、タイガーマスクというと「白いマットのジャングルで~」というアニメの主題歌を思い出す人も多いだろう。でも残念ながら、当時人気絶頂のタイガー(新日本時代)の入場曲にはならなかった。
調べてみると、初登場のときは、ブレイン・ウォッシュ・バンドという5人組のロックバンドが生演奏した『バーニングタイガー』という曲。その後、何回も変えている。
タイガーについては、続編の原稿を用意しているので、入場曲はそこで紹介するとして、ここでは、Re:minder 世代の皆様のために、あえてアニメの主題歌を紹介したい。何を隠そう、私は以前、ケータイの着信音に使っていたことがある。由緒正しい曲なのだ。
※2017年7月31日に掲載された記事をアップデート
2019.04.23
YouTube / bladdog
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