4月21日

SHOGUN の奏でる「男達のメロディー」時代の転換期にタイムスリップ!

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韓国料理店が立ち並ぶ国際色豊かな新宿の片隅。歌舞伎町から少し離れたこの職安通りにある一軒のBAR。今となっては季節外れの話だが、ある年の大晦日僕はカウントダウンではしゃいでいた。

場所柄多くの人種が混ざり合う店内では、DJ がマイケル・ジャクソン、チャカ・カーンからオアシスまで、お馴染みのヒットナンバーをプレイし、店は新年を祝い大いに盛り上がっていた。

ここで、僕の心に突き刺さった1曲のナンバーがあった。SHOGUN の「男達のメロディー」だ。曲がかかった瞬間、DJ をしていた店のオーナーと目が合った。僕を指さして笑ってくれた。僕のためにかけてくれたのかもしれない。

SHOGUN はギター、ボーカルの芳野藤丸を中心にスタジオミュージシャンとしてキャリアを積んだメンバーで結成。79年9月18日にスタートした松田優作主演のテレビドラマ『探偵物語』の主題歌「バッド・シティ」、エンディングに流れる「ロンリー・マン」も手掛けている。

1979年4月21日にリリースされた「男達のメロディー」は、同じく79年4月15日にスタートした沖雅也主演のテレビドラマ『俺たちは天使だ!』のテーマソングにもなって当時約50万枚のヒットを記録しているので知っている人も多いかもしれない。


 走り出したら
 何か答えが出るだろなんて
 俺もあてにはしてないさ
 してないさ
 男だったら流れ弾のひとつやふたつ
 胸にいつでもささってる
 ささってる


こんなで出だしではじまるこの曲は、爽快なフュージョン系のギターとラテンパーカッションの絡みが心地よく、ここではないどこかに連れてっていってくれるような憧憬が瞼の裏に浮かびあがってくる。

そして、この歌詞から生まれる世界観は、僕が憧れたアメリカンニューシネマの世界そのものであった。『明日に向かって撃て!』の中で、オーストラリアを終の棲家と決め、銃弾の嵐の中を駆け抜けるブッチとサンダンス・キッド。『真夜中のカーボーイ』ではニューヨークで夢破れ、フロリダ行きのバスの中で息絶えるダスティン・ホフマン演じるラッツォ。こんな切なくも哀しい名シーンに人生を重ね合わせた人も多いだろう。

つまり、70年代を生きた若者たちは、都市生活に息苦しさを感じ、痛みを分け合いながら、常に、「ここではない何処か」を夢見て、この想いを音楽や映像などの表現として打ち出していたのかもしれない。もちろん、80年代にも同じ衝動から様々なカルチャーが生まれたと思うが、70年代のそれとは一線を画していた。

僕がまだ小学生の頃、この曲の頃の SHOGUN のメンバーのようなレイヤードやアフロの長髪にグラデーションのサングラス、薄いオンスのデニムのフレアパンツを着こなしたお兄さんやお姉さんが街を闊歩していた。それは憧れの姿だった。なんて自由なんだって思った。早く近づきたいと思った。

しかし、僕が思春期を迎える80年代になると、流行の先端では、パンツの裾は細くなり、髪も短くなった。クールでスマートが身上。時代が発散していた汗臭さもなくなり、無機質になっていった。そして、それは沢田研二の「TOKIO」や YMO の「テクノポリス」が象徴している都市集中型のカルチャーに変貌していった。いつしか僕もそんなカルチャーに憧れ、当たり前のように80年代の文化を受け入れ謳歌した。


そして、今。

80年代をリマインドしていると、あの70年代の終わりの汗臭さというか、それに相反する心の疾走感というか、そんな時代に思いを馳せることがある。

それは僕が未体験の「昭和の残像」と言ってもいいのかもしれない。TV が、映画が、音楽が、今の場所に閉塞感を感じる若者たちの飛び道具であった時代。僕が体現出来なかった時代の転換期。

SHOGUN の「男達のメロディー」は、そんな時代に一瞬のうちにタイムスリップさせてくれた。


歌詞引用:
男達のメロディー / SHOGUN



※2018年1月13日に掲載された記事をアップデート

2019.06.28
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カタリベ
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