多くのプレイヤーを魅了した「THE KING OF FIGHTERS 」シリーズ 1990年代におけるアーケードゲーム、および家庭用ゲームの花形といえば? という問いに、なんといっても《格ゲー》でしょ!そう答える人は決して少なくないだろう。
1991年に登場したアーケード版『ストリートファイターⅡ』(CAPCOM)をきっかけに巷にブームを巻き起こし、ゲームの世界に格ゲーという一大ジャンルを築き上げた《対戦格闘ゲーム》作品の数々—— その中でも1990年代半ば以降、ひときわ存在感を発揮していた作品がSNK社の『THE KING OF FIGHTERS '94』からスタートした “KOFシリーズ” だった。
SNK社発のゲーム機であるNEOGEO用のソフトとしてすでに人気を博していた『餓狼伝説』『龍虎の拳』シリーズのキャラクター共演に加え、KOFシリーズにおける主人公的位置付けの草薙京を筆頭とした新規キャラ、さらには『サイコソルジャー』や『怒』シリーズなどの1980年代からのゲーマーに親しまれた往年のSNKキャラたちが、3人1組のチームバトルで勝ち抜き戦を繰り広げるという、新たな駆け引き要素の導入が多くのプレイヤーを魅了した。
編曲を手がけた新世界楽曲雑技団 そんなKOFシリーズ初期作のBGMアレンジ楽曲集、『THE KING OF FIGHTERS '94 ARRANGE SOUND TRAX』(初出:1994年11月18日)と『THE KING OF FIGHTERS ' 95 ARRANGE SOUND TRAX』(初出:1995年9月21日)が、2026年6月から各種音楽配信サービスで配信されている。
NEOGEO CDなどの家庭用ゲーム機で、KOFシリーズを遊んだプレイヤーにとってはBGMとして馴染み深く、アーケードゲームのプレイヤーにとっては新鮮に響いたであろう、生楽器などを用いたアレンジ音源の数々。オリジナル楽曲の作曲とアレンジ版の編曲を手掛けたのはSNKのサウンドチーム・新世界楽曲雑技団である。本コラムでは生演奏で生まれ変わったアレンジ音源の魅力をふんだんにお届けしたい。
オリジナル版とは全く響きの異なるエレキギターの “鳴り” VIDEO ▶︎『THE KING OF FIGHTERS '94 ARRANGE SOUND TRAX』 オリジナルにあたるアーケード版のサウンドはFM音源によるメタリックな響きが特徴的で、多くのゲームの音が鳴り響くゲームセンターのような空間でもプレイヤーの耳にしっかり届くような、インパクトに重きをおいたサウンドデザインが全体に施されている。一方、家庭用ハードのNEOGEO CDでの再生を想定したアレンジ版の楽曲では、生音に比重をおいたゴージャスな編成の編曲が中心となっており、各楽器の “鳴り” をしっかり感じ取れる、音楽好きには聴きどころが実に多いのが大きな違いといえるだろう。それでは、今日的な視点も含めた聴きどころを紹介していこう。
TRACK1:THE KING OF FIGHTERS’94開幕 37秒という短いトラックながら、バトルを目前に湧き上がる闘志や高揚感を見事に表現した楽曲だ。オリジナル版とは全く響きの異なるエレキギターの “鳴り” にまずはぶっ飛ばされてほしい。
TRACK3:ね!(イギリスステージ) 不知火舞 、ユリ・サカザキ 、キングからなる女性格闘家チームと闘うイギリスステージのBGM。楽曲名もなかなか珍しいが、華やかな響きのホーンセクションのリフが楽曲を引っ張るちょっと珍しいタイプの曲。晴れやかな空気感にエッジの効いたギターサウンドや浮遊感のあるシンセが絡むことで、進行とともにリスナーのテンションもグッと上がる元気系楽曲だ。
TRACK5:SLUM No.5(アメリカステージ) 1980年代後半に人気を博したニューヨーク発のダンス音楽、ニュージャックスウィングのスタイルを取り入れた楽曲。タメの効いた反復ビートの心地よさ、後半のエモーショナルなサックスのソロのパートなどもしっかりと聴かせてくれる。
TRACK7:ESAKA(日本ステージ) 主人公格の草薙京とその友人、二階堂紅丸、大門五郎と拳を交える日本ステージのBGM(SNKのお膝元であった大阪府吹田市江坂町が曲名の由来)。ハードロック / ヘヴィメタルの意匠をまといながらも、その中にオリエンタルな楽器の旋律を忍ばせることで激しさの中に雅なテイストを違和感なく表現。細かな楽器編成のアンサンブルを存分に楽しめる。
TRACK9:サイコソルジャー “K.O.F. Version” (中国ステージ) 麻宮アテナを筆頭に、サイコソルジャーチームが待ち受ける中国ステージのBGM。1987年に歌うアーケードゲームとして登場した『サイコソルジャー』メインBGMの新録ボーカルバージョン。『KOF ’94』アーケード版のBGMではインストだったが、アレンジ版ではロックテイストの歌唱音源として聴けるのは何とも得をした気分だ。
もちろん、これ以外の楽曲もステージごとの国やシチュエーションに合わせた、バラエティに富んだ楽曲アレンジが堪能できるようになっている。
ジャズファンク、ヒップホップともリンクしたサウンドチームの絶妙なこだわり VIDEO ▶︎『THE KING OF FIGHTERS '95 ARRANGE SOUND TRAX』 『KOF ‘95』のアレンジ楽曲集における大きな特徴は、前作『KOF ’94』ではギター主体のロック寄りなアプローチの楽曲が目立っていたのと異なり、ファンキーなベースラインを編曲に際して多く取り入れている点だ。本作発表当時はUKを震源地にクラブジャズのシーンが世界的な広がりを見せており、モッズ文脈でのジャズファンク系の楽曲の再評価やヒップホップともリンクした、同時代性の高いサウンドデザインを試みた作品としても評価されるべきだろう。筆者のピックアップ楽曲は以下のトラック。
TRACK2:FUNKY ESAKA(日本ステージ) うねるベースラインにハモンド風の電子オルガンがグルーヴを紡ぐ、モッドなジャズファンクでタイトル負けしていない内容だ。中盤に挿入されるフリーキーなサックスのフレーズも絶妙なアクセントになっていてスリリングに聴かせてくれる。
TRACK3:嵐のサキソフォン(アメリカ工場ステージ) こちらもブリブリのベースラインがグッと腰にくるジャズファンク系に編曲された楽曲だが、インストながら歌心のあるサックスやフルートなどの管楽器が活躍するメロディアスなトラック。静かに燃える青白い炎のようなクール&ホットな音像には中毒性あり。
TRACK6:DESERT REQUIEM(中近東ステージ) オルタナロックと中近東音楽の旋律が融合し、さらにモッドなオルガンが絡むという、無国籍ヘヴィロック的なサウンドは冒険心にあふれた編曲の賜物。一本調子のストレートなロックに満足できないリスナーには新たな発見となること間違いなしの楽曲だ。
TRACK11:MY LOVE ~勇気を出して~(アテナのうた) 初代麻宮アテナは『サイコソルジャー』の歌唱を担当した清水香織だったが、この楽曲では女優の長崎萠(現:平良千春)が担当。いかにも80年代アイドル風の楽曲という意味では『サイコソルジャー』のエンディング曲、「傷だらけのBLUE MOON」の後継的な作品といえよう。楽曲のミックスに関しても他の曲に比べてあえて80年代的な質感を狙ったように見受けられ、サウンドチームの絶妙なこだわりの凄さに震える。
TRACK12:THE SUNSET SKY PartⅥ~LIEBE~(スタッフロール) ゲームのスタッフロールで流れる楽曲を生音でしっとりメロウなジャズグルーヴに仕上げた、じんわり心に染みるトラック。激しい戦いのBGMの中にこのような緩急のアクセントとなる曲の存在はグッとアルバム全体が引き締まる。何気に重要な楽曲だ。
この『KOF '95』は、前作『KOF ’94』以上に、サウンドの軸となる部分が明確に打ち出されたことで、通して聴いた印象がスムースで心地よいという印象だ。オリジナル版の音源と比較してアレンジの妙を楽しむのも一興かと。生演奏を主体としたアレンジ版楽曲に関しては、編曲のコンセプト次第でアルバム毎の印象が異なってくるという点が浮き彫りになったのは実に面白い。
原曲にあたるアーケード版のオリジナルサウンドトラックと同じチームがアレンジ版を手掛けているという点ではアーケード版のFM音源では実現できなかったサウンドをアレンジ版で形にしたケースや、逆に全く異なるアプローチを試みたという曲もあるだろう。双方を聴き比べで新たなアレンジの魅力や制作陣のクリエイティブに対するこだわりを再発見する楽しみもぜひトライしてみてもいいのではないだろうか。
Information THE KING OF FIGHTERS シリーズ SNK/新世界楽曲雑技団 2026年6月24日配信
▶ THE KING OF FIGHTERS '94 ARRANGE SOUND TRAX
https://lnk.to/KOF94 ▶ THE KING OF FIGHTERS '95 ARRANGE SOUND TRAX
https://lnk.to/KOF95
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2026.07.31