田原俊彦が、82枚目のシングル「ナニコレ最高!!!」のCDを6月17日にリリースする。1980年6月21日のデビュー曲「哀愁でいと」から45年以上にわたり、途切れずにシングルを出し続け、65歳の今もフルスペックで歌い踊るライブを続けている田原は、今、シングルという形をどう考えているのか。今回の前篇では、「ナニコレ最高!!!」の制作背景、6月リリースへの思い、そして82枚のシングルが現在のステージでどのように活きているのかを訊いた。
82枚目のシングルはアダルトでファンキー
―― Re:minder には、このところ毎年ご登場いただいていますが、今回も “2026年バージョンの田原俊彦” の実像を引き出せるインタビューにしたいと思います。よろしくお願いします。
田原俊彦(以下:田原):ハイ。“ナニコレ最低” ってならないように頑張ります!
── さっそくですが、6月17日リリースの82枚目のシングル「ナニコレ最高!!!」のお話から。曲は派手ですが、ミュージックビデオの映像はシャープでソリッドな印象で、そのギャップが面白いですね。
田原:ありそうでなかったトーンですよね。衣装はシルバーのジャケットに、白シャツでシャキッとして。ま、曲はイケイケなんだけど、ビジュアルは全体的に割と渋く、ポップに遊んでみたって感じですね。
── この曲はどのようなコンセプトで生まれたのですか?
田原:スタッフと “今回はちょっとアダルトで、ファンキーに行こう” という話になって。サウンド的にはジェームズ・ブラウンっぽいノリで行ってみようか、みたいな感じで始まりました。アレンジもふくめてMISSING Sound Tracksというチームが作ってくれて、作詞には2023年の「ダンディライオン」以来になる真間稜さんも加わってくれました。真間さんは、僕をずっと見てくれている方なんで、田原俊彦の世界を投影して、僕とファンの皆さんの関係を言葉にしてくれています。
── イントロが始まると “あ、トシちゃんのシングルだ” って感じがすごくしました。
田原:アレンジは派手で、いかにも田原俊彦のスタンダードなシングルっぽい感じですよね。グルーブ感があって、1980年代からの流れを継承しています。
── 一方で、早口で多くの言葉を送り込むスタイルは、今っぽいですし、田原さんには新しい挑戦ですね。
田原:そうそう。この曲の収録時間はトータルで3分50秒ぐらい。長すぎず、短すぎず、いい感じのサイズですが、その中に相当のフレーズが叩き込まれているんですよね。ラップのように早口で歌う必要があるので、ブレスが難しい。踊りながら、どこで息つぎしてパンって言い切るか、そのタイミングを取るのが大変でした。で、割と高音でしょ。ミュージックビデオをご覧になったのなら分かると思いますが、振りも途切れずについているんですよ。だから、身体に曲が入るまでは、いつも以上に気合いが必要でしたね。
── 曲が “身体に入る” という感覚なんですね。
田原:そうですね。撮影のときは、ダンサーを従えた振り付けを2回練習して、3回目が本番だったんですね。まだ90%ぐらいの状態だったので、結構時間がかかりました。でも、今は100%入っています。かなり、いい仕上がりになったと思っています。
── カップリングの「恋のミラージュ」は中米風のサウンドですね。これも新鮮です。
田原:そう。割とアダルトな曲で、ラテンのテイストがありますよね。今までになかった曲調で、こっちをメインにしてもよかったんじゃないかと思うぐらいにカッコいい曲です。これはもうステージ映えするでしょ。ちょっとセクシーに見せようかなと思っています。
毎年6月のリリースは「哀愁でいと」とつながっている
── 毎年1枚、6月にシングルを出すという流れは、コロナ禍でちょっとズレたことはありましたが、2014年の「LOVE&DREAM feat.SKY-HI / Bonita」からずっと続いています。6月リリースというのは、デビュー曲の「哀愁でいと」のリリース日とつながっていると考えてよろしいですか?
田原:それはありますね。6月は僕にとって、すごいインポータントな月になるのかなと。1年の流れが決まっていて、1月〜2月に新曲制作、2月にバースデーイベント、4月〜5月にファンクラブの温泉ツアーがあって、5月から新曲のプロモーションで動く。そしてデビュー記念日の6月21日前後に新曲を発売。リリースパーティがあって、7月からツアーに入り、12月のディナーショーで締める。そのルーティンをファンの方も理解して、1年のスケジュールを決めてくれているんです。
── 毎年のシングル制作には、田原さんご自身はいつ頃から、どのように関わっているのですか?
田原:10月ぐらいから翌年のシングルの構想を練り始めるんですよ。来年はどんな曲調で行く? とスタッフと話して、通常はコンペ形式で12月には曲が集まってくる。そこからみんなでキャッチボールしながら詰めていく感じです。僕も、もうちょっとこうしようとか、テンポを少し上げようとか、意見を言います。トータルプロデューサーがバークリー音楽大学を出ている優秀な人で、いろいろなルートを持っているんです。だから、今回も海外のプレイヤーに入ってもらいました。かなりスゴいメンツでやっているんですよ。マスタリングをロンドンのスタジオにお願いしたりね。
── 年に1枚のシングルを、時間も手間も予算もかけて作っているということですね。長く活動しているミュージシャンの場合、ライブで新曲より昔の曲を求めるファンも多いと思います。ですが、田原さんのファンは、今も新曲を心待ちにして、ライブでも楽しんでいるように見えます。
田原:知らない曲を歌われるとキツイよな。昔の曲を歌ってくれよ、ってならないように、意識して新曲を作っていますから。おかげさまで今回も配信ランキングで1位をゲットできましたが、この勢いでCDセールスでもトップ10入りを目指したいですね。
昔の曲だけでコンサートを作るのは普通すぎる
── ポップス系のシンガーで、1980年代から2020年代までほぼ途切れずにシングルをパッケージとして出し続けている方は、ほとんど見当たりません。そう考えると、田原さんの続け方はかなり特別だと思うんです。
田原:メジャーレーベルのユニバーサルさんにお世話になって9年になりますが、マイナーリーグの時代もあったので、その頃は、大変ではあったよね。でも、どんな状況であっても、スタッフの力を借りながら、自分のスタイルは変えずにやってきたというだけなんです。毎年ライブをやるのが決まりごとで、その前に花火を打ち上げる意味でシングルを出す。昔の曲だけでコンサートを作るのは普通すぎてね。やっぱり現時点での進化してるスタイルを見せていきたいんですよね。
── ライブは、最新曲と誰もが知るヒット曲をバランスよく織り交ぜた構成ですね。ただ、シングル曲のなかでも、ライブで必ずやる曲と、ときどきやる曲と、ほぼやらない曲があるような印象があります。
田原:そうですね。特に地方は、コアなファンの方ばかりでもないので、「哀愁でいと」、「ハッとして!Good」など外せない曲はあるんですよね。シングルメドレーをやって、なんとか昔の曲を7曲ぐらいぶち込んだりね。まあ、毎年曲が増えているから、2時間の構成の中にどう組み込んでいくのかというのは考えどころなんですよ。2020年代の曲でも「HA-HA-HAPPY」のように毎年歌う曲もありますが、それすらハミ出るかもしれない。逆に去年の「愛しすぎて」のように久々にやる曲もあります。しばらく歌っていない曲も、いつか歌うことはあると思います。
──「チャールストンにはまだ早い」「ジャングルJungle」「抱きしめてTONIGHT」など、特にダンスが激しく、消耗度も高い曲は、観る側として今年も完璧だったと心のなかでガッツポーズをすることが、毎年の楽しみになっているように感じます。あのあたりは、やめられない曲ですね。
田原:やめられないですね。本当に体力勝負ですよ。でも、もっとバラードを増やそうと思って。
── それ、毎年、ステージでハードな曲を歌った後にお客さんに言っていますよね。バラード増やしていい? って。それでも、増やさないのは、田原さん本心ではバラードを増やしたくないのかと思っていました。
田原:ハハハハハ。増やしたいよ! 今年こそ増やすよ!

セットリストは前年のライブ直後から考える
── 田原さんは、ライブのセットリストをご自身で組んでいるようですが、いつも、どのように決めていくのですか?
田原:ウチのリビングのテレビの前の白いテーブルには、常に過去10年分ぐらいのコンサート関連の資料が散乱しているんですよ。1年中、片付いていることはない。汚い部屋だな。ハハハハハ。で、いつもその前に座って、資料を見ながら、次のツアーのセットリストを、ああでもない、こうでもないと考えているんです。この曲はやりすぎたとか、今年は「ナニコレ最高!!!」のカップリングの「恋のミラージュ」を歌うから、同じラテン風の曲はハズそうとか。
それで、ファンの方からいただいたアンケートとか、手紙も並べて、全部読むんですよ。そうしながら、瞬間的にパッと浮かんでくることがあるから、それもどんどん紙に書いていくの。パソコンなんかできないから、つねに手書きですよ。それで、全体の構成を何度も何度も組み直して、入れ替えて。その作業をいつも、前の年のライブが終わった瞬間からやってますよ。
── セットリストに対する取り組み方は、並々ならないものですね。去年のツアーでは、『3年B組金八先生』でも流れたオフコースの「さよなら」を歌いました。あのチョイスは、そうやって浮かんできたものですか。
田原:あれはもう4、5年前から、1回サプライズでやったら面白いんじゃないかなと思っていて。それをたまたま去年やったんですよね。
──『3年B組金八先生』の映像付きでした。いろんな権利問題をクリアしたスタッフの皆さんのご苦労が忍ばれます。
田原:ここだけの話ですが、ああいう映像を借りるのって、めちゃくちゃお金がかかるんですよ。びっくりする金額ですよ。
── あれがあったから、ファンの方は、今年は『ただいま放課後』をやるんじゃないかとか、映画『ウィーン物語 ジェミニ・YとS』の映像が流れるのでは?とか、そんな期待をしてしまいますね。
田原:毎年はないから! 金かかるんだから! その代わり、今年はファンの方からリクエストが多かったサプライズ的な曲と、面白い小道具を用意しているので、そこは楽しみにしてほしいですね。
次回の後篇では、65歳を迎えた田原俊彦のコンディション作りの秘密や、イオンシネマでのライブ映像上映、全国ツアー『DANCE with KING of IDOL 2026〜パーティーはこれからだ!〜』への思いも語ってもらいました。
Information
▶︎ ニューシングル「ナニコレ最高!!!」
2026年6月17日発売
UNIVERSAL MUSIC SNTORE▶︎田原俊彦 Dance with KING of IDOL 2026 〜パーティーはこれからだ!
ツアー日程
https://toshihikotahara.com/info/i2682/▶︎田原俊彦 Dance with KING of IDOL 踊るパワースポット!
応援上映@イオンシネマ
https://toshihikotahara.com/info/i2932/
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2026.06.05