10月21日

韓国からみたシティポップ:濱田金吾「ミッドナイト・クルージン」とクールな男のやせ我慢

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韓国人男性から見た日本人男性のイメージは高倉健?


男なのだから… いや、男であるために、辛いときでも大丈夫と言ったり、悲しいときでも笑顔を振りまいたりすることは日本の男性でもよくあることなのか? 同じ時代を生きる韓国人男性として、私はとても気になっている。

私から見た日本人男性のイメージは、映画『鉄道員(ぽっぽや)』の高倉健や、90年代のサントリーウイスキーのCMに登場する長塚京三のイメージがとても強い。

一方、今の韓国の典型的な男性は、職場でどんな大変なことがあっても、帰りには子供が好きなお菓子などを手に持って、何ごともなかったように笑顔を見せることが多いような気がする。過去には、会社で働いた稼ぎを自分の家庭に渡すことだけでも自分の男性としての仕事はやり切ったと言えたかもしれないが、今はもちろんそうではない。

若い男性だってやせ我慢する?


では、それよりよりも若い、未成熟な男性はどうなのだろう? 別れの悲しみが整理できないまま格好付けて強がってしまうのか? 涙が流れるときには “目にゴミが” と言ってみたりするような…

例えば、こんなストーリーを想像してみる--

兵庫県の田舎で育った少年は東京の立派な大学に進学し、優秀な成績で卒業。そして一流企業に就職して自分自身を広げていく。そんな彼に、中学生の時に振られて以来生まれることのなかった恋愛感情が芽生えた。

場所は渋谷駅の近くのバー。偶然同席した女性によって恋愛感情は再び燃え出した。でも、その女性は結婚という現実的な問題にはどうしても興味がなかった。自由な彼女は他の出会いを求めるため、彼を心の中から追い出してしまう。

彼は彼女にすがることは出来ず、その別れ話に何気ない笑顔を振りまいて歩く。夜の街の賑やかなネオンが、心の傷が癒えてない男の心に深く染み込む。時は1月、強い雨風がコートの中まで入り込む。冬の雨と冷たい風のせいで足取りは重くなくなるが、それでも彼は重くないふりをする…

--といった具合のストリーリーだ。

そう、あだち充作品の主人公がそのまま大きくなったような成人男性を思い描いているが、そんな彼の姿を濱田金吾の音楽で見つけることはさほど難しくない。

濱田金吾のシティポップはミディアムレアの和牛ステーキ?


さて、シティポップというジャンルの音楽が伝えてくれる都会のイメージは、クールでストレート。派手さと程よく酔っぱらった時に感じられる余裕だ。

濱田金吾の『ミッドナイト・クルージン』といった素晴らしいアルバムを聴いた時に感じるのは、その余裕の裏で震えている未成熟な男性の姿だった。そう、昔の自分を思い出しながら感情移入できる主人公が濱田金吾の曲の中にいたりする。

彼のとんでもない創作力は、良い契約をそれほど力を入れずにとってくる才能を持つ日本のサラリーマンと重なって見える。そこには、その裏に潜む数多くの努力を決して表に出さない “男” の姿も感じ取ることが出来るのだ。

また、シティポップのレコードの多くは、西洋的なニュアンスを日本流に解釈した作品が多いだけに、歌詞を英語に変えてみると、日本らしい独特の雰囲気が消えてしまう場合も多い。だが、濱田金吾の音楽はそうでもない。

その作曲スタイルはもちろんだが、彼のハイトーンとハスキーボイス、強くはないけれど弱くもない自分だけの声を持っている。その2つが、一番適切な取り合わせが何かを教えてくれるのだ。

彼が仕込んだ感情豊かな作品は、例えるならば、肉汁をしたたらせたミディアムレアの和牛ステーキといったところか。自分の口に入れて噛まなければ感じられないこの美味しさは、文句を言われないはずだ。

韓国でもリクエストされる “男” の歌「ミッドナイト・クルージン」


韓国では数年前から昭和の日本の曲を紹介する独立ラジオ番組が YouTube やネットラジオを通して紹介されている。こういった番組は、今まで情報もなしに接してきた数多くの楽曲や歌手、作曲家、プロデューサーの話が盛り沢山で、日本の曲の知識を増やせるありがたい番組だ。

しかし、“ハマダ” という名字の歌手で韓国人が思い浮かべるのは浜田省吾や浜田麻里がほとんどで、濱田金吾はさほど知られていない。それでも、この番組のおかげで多くの韓国人が泥の中に埋もれていた宝石みたいな濱田金吾の存在を知ることができた。そうそう、「ミッドナイト・クルージン」がオープニングテーマで流され、すごい数のリクエストを受けた事件もあった。リスナーのみんな、正しい選択じゃないか!


少しずつ人足が減っていく夜の街で、恋愛の成就しなかった男が「ミッドナイト・クルージン」を聴きながら歩く。クールな笑顔を見せ、周りに押し流されないように… その姿は決して私だけの想像ではない。実際に存在すると断言する。男というのはそんな生き物なのだから。

2020.01.31
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カタリベ
1979年生まれ
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