1997年 11月12日

主題歌は大滝詠一「幸せな結末」木村拓哉と松たか子が主演【ラブジェネレーション】

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新・黄金の6年間 ~vol.20
■ 大滝詠一「幸せな結末」
発売日:1997年11月12日


優れた連ドラに共通するフォーマットとは?


連ドラ “ニコハチ” の法則がある。

優れた連ドラ(連続ドラマ)に共通するフォーマットである。ニコハチとは、通常、連ドラが放送される1クール(3ヶ月)の中の2話と5話と8話のこと。初回は登場人物の紹介や出会いがメインとなるから、最初の平常運転となる2話(ここでドラマの世界観やトーンがわかる)、次に主人公とヒロインが一度恋仲になる5話(その後また離れる)、そして主人公の内面が明かされ、最終回への起点となる8話―― 大体、この3回がちゃんと作られたドラマはヒットする。

そう、今から26年前の1997年10月クールに放送された木村拓哉主演の『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)も、そんなニコハチの法則で作られ、平均視聴率30.8%と大ヒットした。断っておくが、30越えは最高視聴率の話じゃない。全11話の平均視聴率である。ちなみに、平均値に限れば、90年代の連ドラでトップの数字だ。

木村拓哉演ずる片桐哲平は、広告代理店に勤める平凡なサラリーマン。他人思いで、明るく前向きな好青年である。まぁ、平均的な20代の独身男子がそうであるように、ちょっとスケベ。一方で、優秀な兄に引け目を感じ、時々コジらせる一面も――。個人的には、スーパーマンじゃなく、ちょっとコジらせた “二番手タイプ” をやらせた方が、俳優・木村拓哉は光ると思う。『あすなろ白書』(フジテレビ系)の取手クンしかり、『GOOD LUCK!!』(TBS系)のコーパイ(副操縦士)・新海元しかり――。

ラブコメ漫画のような出会いから始まる王道のラブストーリー





物語は、そんな哲平が街でナンパした女の子をホテルに連れ込んだら(爆睡されて未遂)、翌日、会社の異動先の部署で再会するという、まるでラブコメ漫画のような “出会い” から始まる。そのヒロインが、松たか子演ずる上杉理子。2人は当初、何かとケンカが絶えないが、次第に愛を育むという、これまた王道のラブストーリーである。

そう、ドラマ『ラブジェネレーション』は、平凡な主人公に平凡なヒロイン、平凡な物語と、スター・木村拓哉にしては、珍しく奇をてらわない作品だった。それゆえ、今となっては平凡な役を演じるキムタクが見られるドラマとして、逆に重宝がられるのが面白い。

つまり―― 同ドラマがヒットしたのは、奇をてらった題材や設定でお茶の間を釣るのではなく、世のヒットの法則を忠実に守った結果である。2話で、哲平に思いを寄せる理子と、昔の恋人・さなえ(純名里沙)を忘れられない哲平との “三角関係” という同ドラマの基本構造が語られ、5話で哲平と理子がキスをして一度恋仲になり(同ドラマ屈指の名シーンです!)、8話で哲平のとったある行動が理子の心を離れさせ、最終回への起点になるという、まさに定石通り。

そうそう、優れた連ドラは1クール中、よく地元を離れて温泉に行く回が入ったりするが(『リーガルハイ』や『逃げ恥』などもそう)、同ドラマも6話で2人は社員旅行で温泉に行く。まぁ、裏事情を明かせば、大抵の連ドラは中盤あたりで美術予算と撮影スケジュールが切迫するため、オールロケ回が1回入ると、その辺が随分ラクになる。役者たちにとっても気分転換になるため、“温泉回” は連ドラでよく作られるエピソードだという。

主題歌は、大滝詠一12年ぶりの新曲、「幸せな結末」


そんな次第で、極めてヒットの法則に忠実に作られたドラマ『ラブジェネレーション』――。だが、そんな同ドラマにおいて、たった1つだけ、他のドラマにはない大・大サプライズがあった。主題歌「幸せな結末」である。それは、あの大滝詠一御大が自ら歌うという。なんと彼にとって12年ぶりの新曲だったのである。



 髪をほどいた 君の仕草が
 泣いているようで 胸が騒ぐよ
 振り返るのは 終わりにしよう
 他の誰でもなく 今夜君は僕のもの

リリースは、今から26年前の1997年の今日―― 11月12日である。作詞:多幸福(おおの・こうふく)、作曲:大滝詠一。作詞の “多幸福” とは、大滝御大とドラマ『ラブジェネレーション』のチーフディレクター永山耕三サン、そして亀山千広プロデューサーお三方の共同ペンネームらしい。しかも、出だしの「♪髪をほどいた 君のしぐさが 泣いているようで胸が騒ぐよ」の一節のみ、永山Dの依頼で脚本家の坂元裕二サン(同ドラマは書いてない!)がアイデアを出したという。なんとも豪華な布陣である。

思えば、御大がその前にリリースした最後の自身のシングルが、85年11月1日発売の「フィヨルドの少女」だった。実に12年ぶりのシングルだ。その間、ラジオ『山下達郎のサンデーソングブック』(TFM)の年始恒例「新春放談」では、毎年のように達郎サンから「そろそろ新譜を……」などとイジられつつも、「そういう君はどうなのかね」などノラリクラリとかわすのがお約束だった。それが、本当にリリースされたのだから、当時僕も驚いたのを覚えている。

大滝メロディで構築された、紛うことなき名曲たち


「幸せな結末」―― 英訳すると、あの “はっぴいえんど” だけど(笑)、一聴して感じるのは、安心・安定のナイアガラ・サウンドのクオリティと、際立つメロディの美しさである。どこから聴いても100%の大滝御大の楽曲だ。この12年間のブランクは何だったんだとツッコみたくなるくらい、ロンバケ(A LONG VACATION)時代のクオリティと遜色ない。

ちなみに、御大は空白の12年間、何をしていたかと言うと―― ざっくり、ナイアガラ・レーベルの旧譜のリマスタリングと、他者への楽曲提供である。このうち楽曲提供はリリース順に、以下の通りとなる。

1985年11月20日:小林旭「熱き心に」
1986年03月06日:ハナ肇とクレージーキャッツ「実年行進曲」
1988年10月26日:小泉今日子「怪盗ルビイ」
1995年02月22日:渡辺満里奈「うれしい予感」



―― 4曲しかない! 寡作にもほどがある(笑)。とはいえ、オマージュソングで、あえてクレージーに寄せた「実年〜」を除けば、どれも100%のナイアガラ・サウンドだ。完璧な大滝メロディで構築された、紛うことなき名曲たちである。この打率(アベレージ)の高さは驚異ですらある。

一度聴いたら忘れられないメロディの宝庫


僕は、大滝御大はメロディの人だと思ってる。コロムビア時代の「Blue Valentine's Day」や「青空のように」に始まり、ソニーに移って以降はご存知、「君は天然色」「恋するカレン」「カナリア諸島にて」「A面で恋をして」等々、御大の作る楽曲は、どれも耳馴染みの良いポップなメロディを身にまとう。他者に提供した楽曲でも、シリア・ポールの「夢で逢えたら」を始め、太田裕美の「さらばシベリア鉄道」、松田聖子の「風立ちぬ」、森進一の「冬のリヴィエラ」、薬師丸ひろ子の「探偵物語」、稲垣潤一の「バチェラーガール」等々、一度聴いたら忘れられないメロディの宝庫だ。

大滝御大は1984年3月21日にリリースされたアルバム『EACH TIME』の制作時に、いわゆる「曲が出なくなる状態に陥った」と吐露している。そして、同盤を持って音楽制作活動の休止を決断する(翌85年リリースの「フィヨルドの少女」は『EACH TIME』のレコーディング時に録られたもの)。以降、他者への楽曲提供を除いて、自身の新譜の制作から遠ざかるが―― そう考えると、大滝御大が “作品を世に出す” 基準は、メロディの降臨の有無だと言える。

アーティストとクリエイターの違いは何か。“締切” である。当たり前だけど、世の音楽家や漫画家は、締切がある中で仕事をしている。だからビジネスとして成り立ち、市場にお金が回る。その意味で、彼らはクリエイターである。一方、本当の意味の “アーティスト” に締切はない。彼らは、作品が降りてきたときが発表のタイミングである。

そう考えると、大滝御大ほど、アーティスト(本人はそう呼ばれるのを嫌うだろうけど)という呼び名がハマる人もいない。実は『ロンバケ』も『EACH TIME』も、当初の発売予定から半年以上もリリースが遅れている。85年以降、自身の新譜が出なくなったのは、要は “降りてこなかった” からだろう。一方で他者への楽曲提供が成立したのは、映画の公開やアニバーサリーイヤーなどの締切があったからと思われる。



大滝御大の先見の明、ZARDは「負けないで」でブレイク


では、このコラムの本題である「幸せな結末」は、どういう経緯で作られたのだろう。

時に、ドラマ放送からさかのぼること7年前の1990年秋―― フジテレビ第一制作部の亀山千広プロデューサーは、翌91年1月クール(ちなみに『東京ラブストーリー』も同じクールである)に放送される連ドラ『結婚の理想と現実』の主題歌をお願いするために、大滝御大のもとを訪れた。この時、御大は亀山Pにこう助言したという。

「今は俺よりも長戸大幸さんの方がすごく当たっているから、ビーイングに行くべきだ」

そして、御大の忠告に従い、亀山Pがビーイングの長戸大幸社長のもとを訪れると―― デビュー予定の新人アーティスト数名のデモテープを聞かせてもらったという。その中に、洋楽のようなサウンドに、瑞々しい女性ボーカルが乗った楽曲があった。亀山Pは同曲を気に入り、ドラマ主題歌に起用する。それが、ZARDのデビュー曲「Good-bye My Loneliness」だった。

このエピソードから分かるのは、大滝御大の先見の明である。この2年後の1993年―― ZARDは「負けないで」でブレイク。同年、ビーイングはB'z、WANDS、大黒摩季、DEEN、T-BOLANらも擁して、オリコンシングルランキングで年間50週のうち、実に26週で1位を制する。

とはいえ、亀山Pは諦めなかった。その後もことあるごとに御大への日参を重ね、1996年―― やっと御大がドラマ主題歌を引き受けてくれる話になった。亀山Pのオーダーは「 “恋するカレン” のような曲を」。しかし、この時は締切までに曲が上がらず、時間切れ。やむなく名盤のタイトルだけ拝借する許可をもらう。ドラマ『ロングバケーション』(フジテレビ系)である。

「幸せな結末」はオリコン最高2位と大ヒット。ミリオンセラーとなった


面白いもので――“その時” は突然、やって来た。97年夏、フジテレビの月9の10月クールに予定していたドラマ『じんべえ』が、主演の田村正和サンの体調不良で流れ、急遽、代わりに立てられた企画が『ラブジェネレーション』だった。
(C)フジテレビ



 さみしい気持ち 隠して微笑う
 強がる君から 目が離せない
 昨日じゃなくて 明日じゃなくて
 帰したくないから 今夜君は僕のもの

メインキャストは、別枠で主演を予定していたキムタクと、『じんべえ』に娘役で出演予定だった松たか子サン。プロデュースは『ミセスシンデレラ』の小岩井宏悦Pの担当となり、その流れで脚本は浅野妙子サンと尾崎将也サンが起用された。2人とも、フジテレビヤングシナリオ大賞出身の若手の有望株だった。

そして―― 奇跡が起きた。このタイミングで、前年、亀山Pがオーダーしていた御大の楽曲のアイデアが降臨する。ドラマ『ラブジェネレーション』の主演の1人はキムタクで、チーフ演出は永山耕三Dと、前年の『ロンバケ』と基本の座組は同じ。小岩井Pも亀山Pのラインの人で、気心は通じてる。主題歌を正式に御大に依頼する算段になった。亀山Pが同ドラマの直接の担当じゃないのに、作詞に絡んでいるのは、そういう事情である。

 踊り出す街に 二人の今を
 探し続けて はしゃいだあの日

大滝御大は、主題歌「幸せな結末」を、バート・バカラックの「True Love Never Runs Smooth」をイメージして仕上げたという。チーフ演出の永山Dは、それを聴いて、同ドラマのキービジュアルのアイデアを思いつく。それは、裸の女性がガラスの林檎に口づけするもので、コピーは「True love never runs smooth」―― モデルを演じた市川実和子サンのドラマデビューとなった。

 さよなら言うよ 虚ろな恋に
 いつまでも離さない 今夜君は僕のもの

主題歌「幸せな結末」はオリコン最高2位と大ヒット。ミリオンセラーとなった。それだけじゃない。俗にアイデアは連鎖するというが、B面も同じ座組で新たに書かれ、その「Happy Endで始めよう」も美しい大滝メロディのゴキゲンなポップスに仕上がった。前述の温泉回の6話で、一行の旅を盛り上げるのに一役買っている。

そして、同ドラマのラストはハッピーエンドである。

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2023.11.12
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カタリベ
1967年生まれ
指南役
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