1997年 12月20日

GWに観たい3時間超え映画「タイタニック」レオ様の人気爆発!泣けるシーンはキリがない

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ゴールデンウィークに観たい3時間超え映画 - vol.3「タイタニック」

上映時間が3時間を超える映画は、いまや世界的トレンドである


ここ最近、賞狙いの秀作はもちろん娯楽大作までもが “基本的に2時間” という映画の尺の常識を覆して、2時間半、あるいは3時間超えという上映時間の作品が増えてきている。これは世界的にもトレンドのようだ。インド映画の『RRR』もそうだし、現在日本で公開中の話題作 『オッペンハイマー』も上映時間が3時間である。

ちなみに、過去アカデミー賞を受賞した3時間超えの映画を調べてみると、『風と共に去りぬ』(3時間42分)や、『ベン・ハー』(3時間32分)など、なんと8作品もあった。確かに “見ごたえ” や “重量感” など作品への没入感は内容にもよるが、オスカー像を手に入れるならば長篇映画のほうが有利なのは間違いなさそうである。

かつて長編作品は上映回数が稼げないので興行主から嫌われる傾向にあったけれど、世界中で10スクリーン以上を持つ ”シネコン”(シネマコンプレックス)が世界中に普及したことで、その収益問題はクリアされた。更に、メジャースタジオが敬遠する商業的な成功が見えない映画に対しても、Netflixが気前よく制作費を工面することで未来の名監督たちを発掘し始めたのである。これは映画界において革命的出来事だといえる。

そんな現在の潮流から遡ること27年前… 今回は、1997年に公開された3時間14分という超長篇映画『タイタニック』について語ってみたい。ジェームズ・キャメロン監督は、この映画で人間の喪失感を織り交ぜたラブストーリーを描いてみせたのだ。

若干23歳… 「タイタニック」から、レオナルド・ディカプリオの人気が爆発した


レオナルド・ディカプリオ… 日本では “レオ様”と呼ばれるディカプリオの人気に火が点いたのは、映画『タイタニック』からだろう。インターネットが普及しはじめた時期ということ(Windows95のヒット)もあって、トム・クルーズやブラッド・ピットを凌ぐ新たなるハリウッドスターの情報が広まるスピードは、すでに昭和の比ではなくなっていた。端正な顔立ちと透明感ある青い瞳は、男性から見てもカッコイイもんね。映画で演じたジャックの役柄も、真っ直ぐな無鉄砲さとローズ(ケイト・ウィンスレット)に対するやさしさいっぱいであり、ディカプリオはその好青年役を魅力的に演じていた。
そのときの演技について、主演のディカプリオはこんな風に語っている。

「ジャックはローズにプレッシャーをかけたりするような男ではない。彼女が自分で判断を下せるだけのスペースを、ジャックとの間に取れるようにしてあげているんだよね」

映画.com「超貴重!レオナルド・ディカプリオ、23歳当時のインタビュー映像公開「タイタニック」を語る(タイタニック ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター インタビュー映像」より



確かにそうだった… 映画前半、親が決めた結婚話に嫌気がさしたローズが、現実逃避して海に飛び込もうと船尾のヘリに乗り出したとき、「飛び込むなら僕も一緒に」と言って歩み寄るジャック。そのやさしさは、ローズが自分の意思で物事を決めさせるための問いかけでもある。

ジャックの「飛び込むなら僕も一緒に」という台詞は、映画後半、ローズがせっかく乗った救命ボートから降りてジャックに駆け寄り「飛び込むときは一緒よ」と抱きつくローズの台詞として再び使われる。この部分、上流階級の令嬢として育ったローズが自分の意思を貫く決意表明として伏線回収するという粋な脚本であり、ハッとするシーンだ。

ちなみに僕のお気に入りシーンは、ジャックが手錠で船室の配管に繋がれてしまった鎖の部分をローズが斧でぶった切るシーン… いざ振り下ろす瞬間、ローズは顔を背けて目を瞑っている(笑)。これには “上流階級の身分と縁を切るローズ” という意味合いもあると思うけど、みんなはどう思う?



究極の状況下でも、音楽は人の心に寄り添って勇気と癒しを与えてくれる


泣けるシーンはキリがない… 操舵室で最後を迎える船長、救命胴衣を着けずタキシード姿で覚悟を決めた男爵、ベッドで抱き合う老夫婦、幼子を寝かしつけるお母さん… 脚色されているとはいえ実在した人物をモデルにしていることもあって、どの場面も涙を禁じ得ない。この騒然たる状況下でも楽団は演奏を止めずにギリギリまで楽器を手放さなかった…。このシーンも、タイタニック号沈没事故の逸話としてよく知られるひとつである。

刻々と身に迫る危険を感じて「ここまでだ」「無事を祈る」と言葉を交わして解散するも、ひとり残ったバイオリニストの音を聴きつけて、ひとり、またひとりとアンサンブルに戻るのだ。胸が張り裂けそうな切なさの極みである。ちなみに、このとき演奏している曲は「Nearer, My God, to Thee」(主よ御許に近づかん)という讃美歌だ。

このシーン… アメリカ同時多発テロ発生後、上に行けば生きて帰れなくなるのに、レスキュー隊が「アメイジング・グレイス」を歌いながら崩壊したビルの非常階段を駆け上がっていったエピソードを聞いたとき真っ先に思い出した。人が命を賭してまで行動する尊さには、必ず音楽が寄り添ってくれる。勇気と癒しと、音楽とは人の心の拠り所なのだ。

なぜ3時間14分もの長尺になったのか?ジェームズ・キャメロン監督のこだわりとは…


人間の集中力はおよそ20分〜25分ほどと言われている。たとえば学校の授業で先生が脱線する話を途中に挟むのはそういうことである。45分授業だと、20分→5分脱線→20分という流れだ。これをポモドーロテクニックという。先にも書いたが映画の尺は基本2時間である。これは、観客が集中して鑑賞するシーンと息抜きのシーンを組み合わせて人間の集中力が持続できる適正時間なのだろう。

けれど、映画『タイタニック』は3時間14分という圧倒的長さだ。もちろんこれには理由がある。映画冒頭と終盤にある現代のシーンとエンドロールの上映時間を除くとちょうど2時間40分であり、それはタイタニック号が氷山に接触事故を起こしてから沈没するまでの実際の時間とほぼ同じなのだ。これは、ジェームズ・キャメロン監督のタイタニック号沈没事故犠牲者
への敬意というか、映画を観る人にも船が沈むリアリティーを感じてほしいという思いである。

結果、3時間を超える長尺であっても、その時間を感じさせない脚本力やダイナミックな映像があれば何ら問題無いことをジェームズ・キャメロン監督は証明してしまった。恐るべき才能である。



海に投げ入れた碧洋のハートのペンダントは、ローズの分身である


最後にもうひとつだけ。ローズがずっと隠し持っていた “碧洋のハート” と称される呪われたブルーダイヤモンドのペンダントについて深読みしてみよう。

これは、ローズの婚約者であるキャルドン・ホックリーからプレゼントされた “所有した人に不幸が訪れる” という曰くつきの宝石である。僕の深読みでは、このダイヤの青色は、メーテルリンクの物語「青い鳥」と同じく “真実” や “幸福” を意味していて、そこにダイヤが持つ “無敵” や “不屈” という意味を加えたペンダントであり、不幸とは真逆の “幸せのメタファー” だと考える。なぜなら、その意味を含めた謎が映画の最後で明かされているからだ。

映画のラストシーン… 101歳のローズが海へ投げ入れたペンダントがゆっくりと深く沈んでゆき、それはいつしか若き日のローズの目線となって沈没したタイタニック号の船内を辿りラウンジにある時計台に向かってゆく。この場所は、映画前半にジャックと時計台の下でこっそり待ち合わせした思い出の場所であり、事故から84年後のジャックに再び会いにゆくという悲劇にしてハッピーエンドという、いかにもハリウッド映画らしい切なさを伴った心大円団だ。

 約束してくれ 僕のために
 絶対に生き残ると

 何があってもあきらめないと
 望みを捨てないで

これは、ジャックが力尽きる前にローズに託した言葉である。ジャックとの約束を守ると固く決意したローズは生還した。

僕は断言する。ペンダントは海に捨てたのではない。ペンダントはジャックとの約束を守るべくローズのお守りであり、それは時を経て自分のための人生を生きるという不屈の意思を貫いたローズ自身。つまり、碧洋のハートとはローズの心であり、そのペンダントは言わばローズの分身なのである。ジャックが眠る海に飛び込んだローズの分身が、「今を大切に、自分のための人生を生き抜いたわ」という言葉を届ける “幸せのメタファー” なのだ。

今年のGWは3時間超の映画にチャレンジしてみよう


この映画は、人間の持つ醜い部分と純粋に人を愛することをタイタニック号の沈没事故という極限の状態で表現しているけれど、僕は「今を大切に生きる」というジャックの言葉が一番心に残っている。シンプルなことだけれど、実践するのはとても難しい。「あぁ、また月曜日か…」などと惰性で毎日をやり過ごしがちだけど、ふつうの日常とは実は奇跡の連続である。ある日突然ふつうはふつうじゃなくなることを、身にしみて感じている人は多いだろう。

さて、3時間超の映画を観るのは気合がいるけれど、時間の取れるゴールデンウィークだからこそ『タイタニック』を振り返ってみるのはいかがだろうか。未見の人は存分に、久方ぶりに観る人でも人生経験を重ねた今なら新たな視点が生まれているはずで、きっと楽しめるはずである。そして、びっくりするくらいレオ様がカッコイイことを最後に付け加えておきたい。

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2024.04.29
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カタリベ
1967年生まれ
ミチュルル©︎たかはしみさお
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