80年代は日本武道館で単独ライブを行うことに、まだ強烈なステータスがある時代だった。ざっくりだけど、テレビで言えば「紅白歌合戦」、ライブで言えば「武道館」。そういう実績を作ることで、ミュージシャンの格がひとつもふたつも上がっていたはずだ。こんなたとえが適切かどうかはわからないけど、「ドラクエ」でレベルアップするときの、タラララッタッターみたいな効果音が聞こえてくる感じ。 1966年、ビートルズが日本武道館を初めてライブ会場として使って以来、集客力のある洋邦の名だたるミュージシャンやアイドルがこのステージを使うようになったからなのかもしれないが、いつの頃からか日本武道館はトップミュージシャンの冠を得るための試金石のようなホールとなり、80年代に入っても、というか80年代こそ、その意味合いを色濃く放った時代だったのかもしれない。「武道館◯日公演!」とか「武道館SOLD OUT!」という類の言葉を聞くだけでとにかくすごいと思ったし、そんなにすごいミュージシャンならライブ見にいかなきゃなと思った。 1987年6月25日、スターダストレビューがその武道館のステージに立った。舞台の上に颯爽と登場した5人の姿を見たとき、泣けてきたのはぼくだけではなかったに違いない。「ミュージシャンとしてのステータス」とかにまるで興味がなさそうなメンバーたちは特別感慨深いわけでもなかったかもしれないが、81年のデビュー以来、彼らを支えていたスタッフや、それこそこまめにスタレビを追いかけ、応援してきたファンの多くは、その瞬間の感動を今も忘れてはいないだろう。 正直なところ、彼らが何を演奏したのかは、はっきりと覚えてはいない。でも、同じ日に発売になった5枚目のオリジナルアルバム『NIGHT SONGS』の収録曲も含めて、けっこうな曲数で楽しいライブをやっていた気がする。 スタレビのなかではヒット曲と言ってもいい「夢伝説」や、デビュー曲「シュガーはお年頃」、その頃の盛り上がり曲の定番「と・つ・ぜ・ん Fall In Love」を演奏したことは微かに覚えている。『NIGHT SONGS』のなかでぼくがいちばん好きな曲「One More Time」は演奏してくれていただろうか? まるで夢のなかにでもいるような浮遊感のある、クールなチューンだ。……うん、歌っていた気もするな。「スタレビの武道館」というだけで浮足立って客席にいたその日、まさに夢心地でふわふわと体を揺らし「One More Time」を聴いていた気がする。 でも、そのときのライブ自体は、ほんとに夢のなかのできごとのようで、はっきり実感として覚えているのは、舞台から高くそびえるように並ぶ客席のてっぺんまでお客さんで埋まっていたことと、彼らがステージに登場した瞬間に、ポロポロと涙が出てきたことくらいなのだ。 なんて不思議なんだろう。あのなんともいえない喜びをかみしめた日からもう30年経ったなんてね。30年だよ、30年! トップミュージシャンとしての冠を得てから(彼らはそんなこと微塵も思ってないだろうけど)もう30年も最前線でライブやりまくってるなんて、嬉しくてしょうがない。
2017.01.28
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YouTube / STARDUSTREVUEch
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