2023年 8月19日

T-BOLAN【ライブレポート】シングル・ベストツアーで時代を彩った不朽の名曲を体感!

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T-BOLANライブツアー「T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 “SINGLES” 〜波紋〜」公演初日(三郷文化会館)
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T-BOLAN史上初! シングル全曲披露のツアー、遂にキックオフ


2023年8月19日、全国27カ所、足掛け2年に渡る大規模なライブツアー『T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 “SINGLES” 〜波紋〜』の初日を観る機会に恵まれた。

会場の埼玉・三郷文化会館は、全て固定座席の大ホール。スタンディング会場での一体感もいいが、こうした昔ながらの形式のホールはステージの視認性も良く、T-BOLANが時代に刻んだ名曲の数々をじっくり味わうには申し分のないシチュエーションだ。

今回のT-BOLANのツアーコンセプトはズバリ “シングル全曲披露”。スペシャルなシングルベストツアーとして行われるだけに、いつも以上に高まる期待に胸を躍らせたファンも少なくないはずだ。T-BOLANへのそれぞれの思いを抱いて駆けつけた大勢の観客が2階席まで埋め尽くし、キックオフの瞬間を待った。

円熟味を増したT-BOLANが生み出す極上の音像!


定刻通りに暗転しSEが流れ始めると、早くも客席のあちこちから大きな歓声が沸き起こった。均等に混ざり合う男女の声色から、T-BOLANがそれぞれのファン層からバランス良く支持されている様子がよくわかる。大半の観客は今回のツアーグッズであるペンライトを手にしており、色鮮やかな眩い光を放っている。

メンバーが颯爽と登場し、ライティングに照らされて演奏が始まると、早くも場内は外の暑さに負けない総立ちのファンの熱気に包まれていく。ステージのセンターには、サングラスに黒のロングコートを身にまとった90年代の面影そのままにクールに決めた森友嵐士(Vo)、上手(かみて)にはオールドマーシャルのスタックを背にテレキャスターをかき鳴らす五味孝氏(G)、下手(しもて)には赤いジャズベースを抱えた上野博文(B)の元気そうな姿が見える。



ステージ後方には、今回のツアーを支える強力なサポートメンバーの人時(B)、永井利光(Ds)、小島良喜(Key)、坪倉唯子(Cho)の4人がずらりと並んだ。

生粋のライブバンドとしても歴史を刻んできたT-BOLANだけに、メンバー3人を中心に7人編成で贅沢に繰り広げられる極上の音像が、1曲目からホール全体に響き渡る。

T-BOLANを象徴する森友の歌唱はさらに艶を増し、高い表現力にもいっそう磨きがかかっているようだ。パフォーマンスの面でも、普段目にするアーティスト写真そのままの、凜とした佇まいから繰り出される一挙手一投足のひとつひとつが格好良く、全ての観客の視線を釘付けにする。

音源以上の存在感を見せつけるのが、五味のギタープレイだ。T-BOLANのロックテイストを導き出すパワーコードやキレの良いカッティングに加え、恍惚の表情を浮かべて扇情的なフレーズを奏でるソロパートは特筆もの。伸びやかでコシのあるトーンが実に気持ちよく耳をつんざく。



そしてこの夜、観客の注目を一身に集めたのが、T-BOLANのボトムをベースで支えてきた上野だった。2015年3月に、くも膜下出血で倒れて生死をさまよいながらも意識を取り戻し、リハビリに励み、奇跡的に再びステージに立っている事実を知るファンにとって、そこに上野がいるだけで大きな喜びとなったに違いない。

上野がフルセットのライブに挑むのは、復帰後で今回初めてだが、それを感じさせないパフォーマンスに、誰もが感動を覚えただろう。スポットライトに照らされて「My life is My way」のイントロを弾き出すパートをはじめ、その雄姿にひときわ大きな歓声が沸き上がった。



三人三様に魅せた “生き生きとしたステージング” と、最良のサポートメンバーと絡み合い奏でられる、ライブならではの躍動感に満ちた極上の音像。今なおT-BOLANがアーティストとして深化し続ける姿を見せつけられた思いだ。

時代を彩った名曲を次々と直に体感! まさに至福のひととき


この夜のセットリストは、これから続いていくツアーを楽しみにしている方々のためにも、あえて伏せておくが、ツアータイトル通り、T-BOLANがこれまで発表してきた新旧シングル全曲が、オープニングからエンディングに至るまで、惜しげもなく披露された。

それは30年前にタイムスリップして、まるでT-BOLANの歴史を1曲ごとに紐解く特別な感覚を存分に味わせてくれた。中には、森友曰く「30年ぶりに歌うのは緊張するね」というほど、90年代から演奏されていない楽曲まで含まれ、当時からのファンにとっては堪らないセットリストだろう。

そうした90年代の記憶に思いを馳せながらも、今の時代を逞しく生きるT-BOLANの充実ぶりを実感する心憎い構成でショーは進んだ。通常のライブではシングル曲をある程度散りばめるのが定石だろうが、全曲シングルが次々と演奏される今回のライブでは、文字通り “終始クライマックス” の状態がこれでもかと続いていく。そんなレアな感覚を贅沢に体験できること請け合いだ。

さらに、シングル曲を並べて演奏していくだけで終わらないのが、今回のライブをさらにスペシャルなものに昇華している所以だろう。当時の演奏やアレンジに忠実に再現されていく楽曲もあれば、大胆なアレンジを施し、ライブならではの編成で奏でられる楽曲がいくつも用意されており、ここでしか聴けないスペシャルな瞬間を何度も味わわせてくれた。

次々と繰り出されるシングル曲の連打の合間には、森友のMCが何度か挟まれた。そのご機嫌な語り口から、この夜のライブに確かな手応えを感じている様子が手に取るように伺えた。

「何よりファンのみんなが一番喜ぶものは何だろうと考えて、たどり着いた結論がシングル全曲披露だった」

―― と語ってくれたが、満面の笑顔を浮かべた観客の様子を見るにつけ、森友のファンに向けた思いは確実に伝わったようだ。

T-BOLANを思うハートフルな雰囲気に終始包まれた空間!


この夜のライブでひときわ印象に残ったのが、会場全体を終始包み込むハートフルで温かい雰囲気だった。その源泉は、ステージ上のT-BOLANと客席のファン双方に去来した、様々な思いが醸し出したものに違いない。

数多くのロックバンドが存在するけれど、T-BOLANほどドラマティックで激動の歴史を刻み続けたバンドはそう多くないだろう。シングル曲でバンド史を振り返る、この夜のライブを噛み締めながら、これまでにバンドに起こった様々な出来事が走馬灯のように甦ったファンも少なくなかったはずだ。

多くの困難を乗り越えた今もなお、T-BOLANの音楽をバンドとファンで共有できる喜びが、お互いを思う気持ちとして溢れ、交差し、その結果としてハートフルな空間と一体感が生まれたのだと思う。

いくつかの曲では、待望の声出し解禁による地鳴りのようなコールアンドレスポンスが巻き起こったり、「No.1 Girl」ではペンライトを使った揃いの振り付けをしたり、過激ゆるキャラ “ちぃたん” が、この夜だけのスペシャルゲストで登場したりと、会場中が一体となって楽しめる仕掛けが次々と用意された。



中でも印象的だったのが、アンコールとして披露された「愛のために 愛の中で」で、森友がおもむろに客席に降りて1階席の隅々まで赴き、ハイタッチや抱擁をしながら観客と交流したひとときだ。

90年代当時、手の届かない存在に思えた森友が、自分の眼の前に現れ、近くで歌まで披露してくれるなんて誰が想像しただろうか。森友曰く「若い頃は斜に構えていたかもしれないけど、今はハッピーな仲間と1日1日を大切に過ごせればいい」と語ってくれたように、様々な苦難を乗り越えた森友だからこそ、より人に優しくなれるのだろう。

その様子の一部は、オフィシャルYouTubeチャンネルにアップされているので観てほしい。そこにはT-BOLANとファンの心の交流が生み出した、この日のハートフルな空間を象徴する素敵な光景が広がっているからだ。

もちろん、本編では後半に向かって会場内は一気にヒートアップし、ロックバンドらしい緊張感を放つT-BOLANが、日常をスカッと忘れさせてくれる熱い空間を与えてくれたことも記しておきたい。

「最初で最後」だからこそ見逃したくはない! シングル・ベストツアー


栄光に満ちた歴史の総括に加えて、その先の未来への期待を抱かせてくれる、実に2時間半超の長丁場を一切感じさせない大満足のライブとなった。この夜、森友が観客に向けて何度も発した言葉は「サイコー!!」だった。心の底から上げた森友の叫びが、この夜のライブの充実ぶりを端的に物語っていた。



今年後半から2024年にかけてツアーは全国各地を巡り続いていくが、当初発表された日程から2公演が追加。すでにソールドアウトの会場が出始めるなど、スペシャルなライブに対する各地のファンの並々ならぬ期待感が伝わってくるようだ。

時代を彩った不朽の名曲の数々を、T-BOLANと一緒に声を出して歌うもよし、自らの懐かしい思い出とシンクロさせてじっくり聴き惚れるもよし。正真正銘の “最初で最後”、想像を超えたクライマックスが連続するT-BOLANのシングル・ベストツアーを、ぜひ見逃さないように体感してほしい。

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2023.10.08
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カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
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