高校3年の夏、あの時の僕は今思うと、とてもピュアだった。当時、文化祭の準備の真っ只中。僕たち3年8組はステージ発表で何を踊ろうかと悩んでいた。
他のクラスでは、その時流行っていた『ゴリエのペコリナイト』や『修二と彰の青春アミーゴ』などありきたりなものばかり。「そういうのはサブいから辞めよう」というのが8組の考えで、”粋なもの”を探していた。
そんな時、親父の車でよく聞かされた「前略、道の上より」の事を思い出し、文化祭実行委員だった僕は独断でこの曲を踊ることに決めた。
男子だけでの練習が始まり、そこそこ完成してきた時にクラスの女子に見てもらう事に…。その中に今まで話したことは無かったけど、何かと俺の事を見てくる子が一人。
「もしかして俺に気があるのか?」
なんて思いながら、少しの高揚感を感じていた。すると彼女は僕に近づいてきて
「素意やッ、ってもっとこうビシッと腕を伸ばしたほうが良いんじゃない?」
なんて言って話しかけてきた。
僕が彼女の指導のもと踊りを練習していると、他でも男女のペアがポツリポツリと出来始め、気が付けば僕はその彼女とペアになっていた。
そこからの展開はとてつもなく早く、異性を常に意識する思春期の僕たちは、文化祭の本番を迎える前にはもう付き合っていた。
迎えた文化祭当日。
緊張しながらステージに上がったのを今でも覚えている。「素意や!」という声と同時に曲が始まり、盛り上がっているのは生徒よりも先生の方だった。
好調な滑り出しで始まった8組のステージは、その後女子だけのダンスに次いで男女ペアのダンス。もちろん僕はその彼女と一緒に踊った。周りから冷やかされても、気にならないくらい彼女しか見えていなかった。
今振り返ってもまさに純愛だった。この曲を聴くとあの子と過ごした夏を思い出します。
前略、道の上より
作詞:セピア
作曲:GOTO
発売日:1984年(昭和59年)6月25日
2016.02.03
YouTube / 11asnet11
Information