2019年 12月18日

バービーボーイズは唯一無二!ツインボーカルで男と女の色恋リアリティ

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バービーボーイズのアルバム「PlanBee」がリリースされた日
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艶っぽくセクシー、憧れの杏子おねえさま


「私もきっと大人になったら、杏子おねえさまみたいになれるんだろうなぁ」
―― なんて信じて疑わなかった高校時代。80年代の音楽シーンには、数多くの歌姫がいた。渡辺美里、小比類巻かほる… 多くが初々しく清純で、明るく光り輝く存在だった。

そんな女性ボーカルの中で、一線を画していたのがバービーボーイズの杏子。その低音ボイスとステージングはあまりにも艶っぽくセクシーで、“大人の女性” という言葉がぴったりだった。

アシンメトリーのスカートの裾をひらひら揺らしながら、ストールを振り回し歌い舞うのが杏子スタイル。ひとつにまとめたポニーテールの髪を無造作にほどき、髪を振り乱しながら歌いあげていく姿は圧倒的な迫力だ。

時にはスタンドマイクに向かいながら、背中のボタンをはずしていく衣装チェンジ(なんという艶めかしさ!!)。そんな杏子に誘われて、観客のテンションも最高潮へと昇り詰めていく。それがバービーボーイズのライブの大きな魅力のひとつでもあった。

また『ARENA37℃』という音楽雑誌の中で連載されていた「コンタ&杏子の恋愛相談室」というコーナーも当時の音楽好きの高校生には人気で、読者からの恋愛相談をバッサバッサきっていく二人のコメントは秀逸だった。当時の杏子は同性から「かっこいい大人のおねえさま」として憧れの存在だったことに間違いない。

ツインボーカルで男女の駆け引き、こんなに刺激的で大丈夫?


バービーボーイズの歌詞は、そのほとんどが男女の駆け引きを描いたものだ。もう一人のボーカルKONTAが男性の心理を、杏子が女性の心の機微を、かけ合いのように歌い上げていく。曲中で男女がもがき、せめぎ合う姿がなんともリアルだ。もちろん歌詞の中にはエロティックな表現もある。代表曲「目を閉じておいでよ」の歌詞だ。

 目を閉じておいでよ
 顔は奴と違うから
 ほら いつもを凌ぐ
 熱い汗と息づかい

 目を閉じておいでよ
 癖が奴と違うなら
 でも 馴れた指より
 そこがどこかわかるから

どうだろうか。「こんなに刺激的で大丈夫?」とこちらが心配になってしまうほど、きわどいではありませんか。

KONTAと杏子の逆転リアリティ、そして圧倒的バンドサウンド


ギターのいまみちともたか(イマサ)が作る歌詞の素晴らしさはもちろんだが、それに加えてKONTAと杏子の声質がさらに歌詞の世界にリアリティを与えているように感じる。KONTAのハイトーンボイスと杏子の力強い低音ボイスには、男女の声質の逆転の面白さがある。

恋愛ではどう転んだって本質的なところでは女性のほうが強く、男性のほうが繊細だ(と思う)。そんな恋愛の本質的な部分、つまり「女性の強さ」を杏子の低音ボイスが、「男性の繊細さ」をKONTAのハイトーンボイスが見事に表現。恋愛の心の機微にさらなるリアリティが加わっている。

そしてギターのイマサを中心にベースの ENRIQUE、ドラムスの小沼俊明(コイソ)の力も忘れてはならない。

イマサのギターはまるでストーリーテラーのようだと聴くたび思う。歌詞を一文ずつなぞるようにギターの音が変幻自在に表情を変えていく。リフとカッティング、どれをとっても素晴らしいプレーだ。KONTAの歌の合間のソプラノサックスもまた、曲に鮮やかな色を添える。そしてENRIQUEのメロディアスなベースの低音の響きと、コイソによるドラムの抜群の安定感がしっかりとバンドを支えている。

新作を矢継ぎ早にリリース。今も昔も変わらないカッコイイ姿!


そんなバービーボーイズが2019年に再始動。29年ぶりとなる新作『PlanBee』をリリースした。リードトラック「無敵のヴァレリー」はキャッチーなメロディーと、彼ららしい歌詞の世界に思わずニヤリ。特にKONTAの声は以前と比べて円熟味が増していて素晴らしい。

同年1月には、国立代々木競技場第一体育館でワンマンライブ『突然こんなところは嫌いかい?』を開催。会場ではアナログ盤『PlayBee』も先行発売された。

さらに翌2月には配信限定アルバムとして『MasterBee』もリリース。ライブ会場でお土産として配られた貴重なCDから「まかせてTonight」や「あいさつはいつでも」の2曲を収録。ライブに参加することができなかったファンを大いに喜ばせた。

また、加えてバービーのライブには欠かすことのできない定番中の定番「翔んでみせろ」も初レコーディング化して収録! 思えばこの曲、これまでライブ音源しか存在していなかったのだから意外! レコーディング当日は、杏子とKONTAの2人がブースに入り、ライブと同じように掛け合いで録音しようとしたものの、本人たち曰く「あまりにも息がぴったりで気持ち悪かった(笑)」のだとか。そのため別録りに変更したのだそう。

そんなレコーディングバージョンの「翔んでみせろ」は、ライブのテンションそのままに、聴く側も自然とアゲアゲになっていく。長年聴いてきたファンも、最近バービーボーイズを知ったファンも、必聴の1曲に仕上がっている。

しかし、こんなに矢継ぎ早に、惜しげもなく作品をリリースしていく姿は、あまりに潔くてさすがバービー! 超カッコイイ!! 今も昔も私たちをワクワクさせてくれるバービーボーイズは時代の流れや理屈なんて無関係に、いつだってカッコイイのだ。

さて話を戻そう。今、こうして時は流れ、大人になって、ストール片手にアシンメトリーなスカートを着て街を闊歩する私ですが、やっぱり杏子おねえさまのような色っぽさだけは手に入れることができませんでした。そんなやるせない私の気持ちを表した歌詞が「STOP!」にあった。

 あ、ああ ときどき あたしがばかみたい

いやいや、あきらめちゃいけない… そうですよね!? 杏子おねえさま!
※2020年1月13日に掲載された記事をアップデート

2021.08.10
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  YouTube / Sony Music (Japan)


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