毎年夏には必ず海やプールへ出かけて甲羅干しをしていたものだったが、齢40を過ぎたくらいから徐々に足が遠のくようになってしまった。
昨年くらいからは若い女子たちの間でナイトプールが流行っている様で、若い男子ならともかくおじさんは近づけない。しかしながらホテルのプールの良さは、トレンドの王様ホイチョイ・プロダクションズが15年以上前から既に提唱していましたぞ。
少々お高くても実に快適なので、もしも20歳くらい若返れたら、多少無理してでも夏の間は毎週通って浸かりたいところ。
実際に30代だった頃は鶴見にあった「ワイルドブルーヨコハマ」へ足繁く通ったものだった。一年中泳げるなかなか素晴らしい施設だったのに10年もたなかったのは惜しまれる。船橋の屋内スキー場「ザウス」を手がけた空間設計のデザインだったそうで、一年中滑れるザウスもほぼ同時期に(約1年遅れで)スタートし、やはり9年で幕を閉じている。
ワイルドブルー閉園の年、2001年には桑田佳祐「波乗りジョニー」の PV 撮影が行われ、ラストサマーは園内で曲がガンガンかかっていたのを想い出す。
それよりもっと若かった20代、つまり80年代には夏となれば渋滞を覚悟で湘南方面へ車を走らせるのが常だった。その際に欠かせないアイテムがカーステレオで聴くためのカセットテープだったわけで。
大滝詠一『A LONG VACATION』、山下達郎『FOR YOU』といった夏の定番アルバムを LP からカセットにそのままダビングしたのはもちろんのこと、サザンやユーミンは各アルバムのほかに夏っぽい曲ばかり集めて自分セレクトの編集テープを作った。同じ様な経験のある向きは多いことだろう。
アイドルの夏うたテープも当然の如く作ったが、主に男子向け。70年代篇は南沙織「夏の感情」に始まり、天地真理「恋する夏の日」、キャンディーズ「暑中お見舞申し上げます」、ピンク・レディー「渚のシンドバッド」、榊原郁恵「夏のお嬢さん」辺りが定番。
80年代篇はもちろん、松田聖子「青い珊瑚礁」から、河合奈保子「夏のヒロイン」、小泉今日子「まっ赤な女の子」、早見優「夏色のナンシー」と弾けたサマーソングをひたすら並べるのだ。一部、同志の愛好家のため、合間に新井薫子「イニシャルは夏」とか渡辺千秋「夏にフレッシュ。」といったマニアックな曲を挿むのも忘れずに。
車内でのテープのチョイスはだいたい助手席、たまに後部座席の人間の役目である。アイドルコンピまでは面白がって聴いてくれた友人たちも、なかなか手を伸ばしてくれなかったのが、自家製「湘南サウンド・コレクション」だった。
石原裕次郎に始まり、加山雄三、ワイルドワンズ、ユーミン、サザンの名曲が散りばめられた自信作だったのだが、これを積極的に聴こうという猛者は残念ながら少なかった。海辺で聴くには最高の選曲なのに。ごく稀に助手席に座った女性が「加山雄三全曲集」のテープを手にとって「これ、聴いてみたい」などと言ってくれた時には、彼女が女神のように見えたものだ。
「湘南サウンド」は GS に流されて「湘南サウンズ」にならなかったところがいい。サザンのおかげで存続し、少なくとも TUBE までは繋がった。では80年代最強の湘南サウンドは何だろう。それは TUBE でもオメガトライブでもなく、独断と偏見で中井貴一「青春の誓い」を推したい。
TBS 系ドラマ『青春泥棒・徹と由紀子』の主題歌。『夜のヒットスタジオ』や『ザ・ベストテン』でも歌われた無類の良曲なのだ。春の歌ながら、ワイルドワンズの加瀬邦彦の作曲で、作詞は岩谷時子。完全に加山雄三の後継である。
当時は中井貴一と沢口靖子の主演で『若大将シリーズ』がリメイクされるという噂もあったほど。ちなみに第2弾「噂のルーズガール」も加瀬作品ではないものの、夏っぽさ満点のいい曲だった。2曲とも30年以上前に作った我が「湘南サウンド・コレクション」のテープに収録されていたのは言うまでもない。
※2017年8月20日に掲載された記事をアップデート
2018.09.18
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