通算79曲目となるシングル「ダンディライオン」を6月21日にリリースし、8月より全国コンサートツアー「TOSHIHIKO TAHARA DOUBLE ‘T’ TOUR 2023 DANDYLION」をスタートさせる田原俊彦のインタビュー記事を三部構成でお届けしたい。第1回はまず、ニューシングルと楽曲制作のバックステージがテーマだ。
シングルA面は約50曲のなかから厳選される勝負作
── まず、伺いたいのはシングルについてです。男女問わずに80年代にデビューしたアイドルで、今も途切れずにシングルをリリースし続けているのは田原さんだけですよね。
田原俊彦(以下:田原):僕はジャニーズ事務所を卒業してから、シングルを必ず年に1枚はリリースするという約束事を決めてずっと守っています。ここ10年ぐらいは、6月にCDを出すのがルーティンになっていますね。毎回が勝負作です。
── クリエイティブな作業はいつ頃から始まって、田原さんはどのように関わっているのですか?
田原:だいたい前年の年末に大枠のコンセプトというかテーマを決めるんですね。僕も意見を言わせてもらって「去年はジャジーな曲だったから、 次はダンサブルなものがいいだろう」、「いやいや、そろそろバラードじゃない」とかね。そのうえで、20代のミュージシャンから、経験豊富な作曲家の方まで50人ぐらいの作家陣に曲作りを依頼します。
── 大規模なコンペ形式ですね。
田原:都志見隆さんや、作詞家だったら松井五郎さんとか、最初から決め打ちでお願いする場合もありますよ。でも通常は、皆さんに大きなテーマだけを伝えて、あとはフリーダムに田原俊彦に歌わせたい曲を作ってもらうやり方ですね。募集をかけるのが年末で、1月いっぱいまでにいろんな曲調のものが集まってきます。それをまずはスタッフが絞り込んで、最終的に僕が聴くのは5曲ぐらいかな。テーブルについて、アレンジされる前の5曲のオケを聴くんです。そのなかから、僕ひとりではなく、ディレクター、プロデューサー、スタッフみんなの意見も含めて、1曲に絞り込んでいきます。
── つまり、作家のネームバリューを問わず、そのタイミングでベストな曲が選ばれると。
田原:そう。だから今回の「ダンディライオン」はKTRさんという若いミュージシャンの作曲だし、前作の「ロマンティストでいいじゃない」は、青葉紘季さんと大山聖福さんという僕にとっては初めてのコンビの曲でしたから。
── 曲が先に決まって、作詞は後からという流れですか?
田原:そうですね。「ダンディライオン」は、ライブで人気の高い「Dynamite Survival」と繋がった世界観がいいじゃないかということで、真間稜さんに作詞をお願いしました。
── 田原さんの生き様を歌った「Dynamite Survival」とリンクしているわけですね。「ダンディライオン」は2020年代の曲として通用するように仕上がっている一方で、ファンの声をSNSでみていると「こういう感じの曲は、昔もあったよね」「トシちゃんらしい曲だよね」という声も多かったように思えます。
田原:それは嬉しいですね。そこは僕らが常に意識している部分であり、ディレクターが汗をかきながら研究してくれている結果だと思いますね。今回の曲は、自分で言うのもなんですけどJ-POPではなく “T-POP”…… つまりは “田原俊彦ポップ” だなと思っています。僕のイメージに合っていますよね。
── なかでも「明日を生きよう」という歌詞のパートが、挑戦的というか、ライブで見せ場になりそうですね。
田原:そう! めっちゃ、あそこ高いんですよ! “まだまだ攻めるぞ” という感じですよね。なにしろ、ダンディなライオンですからね。ガオ~!ってね。ハハハハハハハハハハハハ。
── 田原俊彦楽曲のなかには、カッコいいトシちゃん、かわいいトシちゃん、エロいトシちゃんと、いろいろな顔があるなかで、今回は今の「ガオ~!」じゃないですけど野性的なトシちゃんの路線ですね。
田原:そうそう。それでいて、23歳と25歳の女性ダンサー2人を絡ませて、 いい感じでエロさも演出して。今後、歌っていけばいくほど進化していく曲じゃないかなと思いますよ。
カップリングは39年前の人気B面曲「風の上ならSO HAPPY」をセルフカバー
── 今回はカップリングに、人気の高い「チャールストンにはまだ早い」のB面曲「風の上ならSO HAPPY」が収録されています。これにはどういった経緯があったのですか?
田原:グリコの「カプリソーネ」というドリンクのCM曲でね。(松田)聖子ちゃんもCMに出ていたよね。そんな時代ですよ。当時は12インチシングルでもリリースされましたが、この曲だけセルフカバーしてなかったんです。それと、今年はファンクラブ会員にライブで歌って欲しいB面曲・カップリング曲のアンケートを取りましたが、「風の上ならSO HAPPY」もランキング上位に入っていました。 だから、そういうタイミングのめぐり合わせだったかなと思います。今回、レコーディングは原キー(原曲のキー)でね…… いやぁ、それがまだ出たんだよね。1時間ぐらいでスムーズに終わりましたよ。
──「風の上ならSO HAPPY」もそうですが、「ハッとして!Good」や「NINJIN娘」、「原宿キッス」(作詞を担当)、「チャールストンにはまだ早い」、アルバム曲の「ジュリエットへの手紙」と宮下智さんの楽曲は人気が高いですよね。
田原:宮下さんは、“ザ・田原俊彦ワールド” を作った人ですからね。やっぱり人気があったんだなぁって思いますね。
ライブの選曲は自分の感性で決めている
── シングル曲の絞り込みにも関わっているとのことですが、ライブのセットリストも田原さん自身が決めていると聞きました。
田原:ジャニーズを卒業してからは、コンサートの選曲、並び順、構成は全部、僕がやっています。絶対歌わなきゃいけない曲以外は、僕が歌いたい曲を選びます。でも、さっきも言ったようにファンクラブ会員にアンケートをとったり、スタッフに意見を聞いてみたり、そういうヒントをもらうこともありますね。
── たとえば、「ラブ・シュプール」をアンコールで歌うとか、そうしたことも田原さんの感性が反映されているのですね。
田原:そうだね。あれはねぇ、お遊びとして最後にセグウェイ乗りながら歌いたいなと思って。そうしたお遊びのシーンにファンはワ~ッと喜んでくれるから。もちろん、「ラブ・シュプール」は最高の曲だし、最高にハッピーで元気が出るじゃないですか。あれをアンコールでやったら盛り上がるなと考えての選曲だったんですけどね。
── 昔からのファンの方には、あの曲が主題歌になった映画『ウィーン物語 ジェミニ・YとS』(1982年)は大切な作品でしょうしね。
田原:ああ、それはあるでしょうね。あの王子様の役ね。僕にはあんな要素はないけどね。ハハハハハハハハ。
── でも、イメージをダブらせている人は多いと思いますよ。
田原:当時、自分のなかでは、「え、こんな役?」って思ったけど、歴史を重ねていくうちに「みんなそんな風に思ってくれているんだ」と感じるようになりましたね。一瞬にしてあの時代に還るみたいですよ。歌っている僕がそのときの顔になるって。それで、みんな、中学生、高校生だった頃の自分の気持ちになるんじゃないですかね。
── いやいや、そうではなくて、映画で田原さんの恋人役だったヒロコ・グレースさんになった気持ちだと思います。
田原:ハハハハハハ、そっちかよ! でも、そうかもしれない。まあ、そうやってセットリストを考えるのは楽しい作業ですね。
『最新インタビュー【田原俊彦】デビュー40周年記念ライブからコロナ禍の3年間を総括』につづく
特集! 田原俊彦
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2023.06.17