相変わらず土曜の夜のテレビの話である。フジテレビ系で放送していたのは「欽ちゃんのドンとやってみよう!」(1975〜80)、そしてその欽ドンを引き離して駆逐したのはTBS系「8時だョ!全員集合」(1969〜85)だった。
欽ドン終了後、若手漫才ブームにあやかってスタートした「オレたちひょうきん族」はその遺志を継ぎ仇をとるために送り込まれた刺客のように見えた。初回放送は1981年5月16日。プロデューサーは横澤彪。まだEPOはジングル参加程度。この時のエンディングテーマは「星に願いを」だった。
この初回放送を中坊の私が見たかどうか、実は記憶が不確かなんだけど、とにかく晩餐会のオープニングコント〜ビートたけしの「オレたちひょうきん族!」宣言〜ウィリアム・テル序曲に乗せた伊武雅刀のナレーションまで、今見るとちょっとしびれる。それほど志の高さや時代のうねりを感じる。また構成内容も、最初からひょうきんニュースだのひょうきんベストテンだの、最後のたけしの「さあ9時だ!帰ろう」まで、みっちりやっぱりおもしろいんだこれが!
笑いは垢抜けず、演技も稚拙で下手だけど、作り手全員の熱量が伝わる。伝説の裏番組を追い越し、俺たちの手で新しい笑いを創ろうというパワーに圧倒される。CM3秒前に至るまで手抜きなし。褒めすぎか。
第2回放送からは、エンディングテーマにEPOの「DOWN TOWN」が起用される。“あなたの「DOWN TOWN」はどこから? 私はひょうきん族から” という方は多いと思うのだけど、私ももちろん同じで、本番組で初めて聴いた。シュガー・ベイブは後追いだ。EPOは1980年3月にこのカヴァーシングルと同名アルバムでデビュー。ひょうきん族のスタッフが本曲指定で使用をオファーしたという話もあり、スタッフの英断に拍手を送りたい気持ちでいっぱいである。
土曜の夜の高揚感や多幸感を湿り気のないボーカルでリズミカルに綴る名曲。番組が盛り上がり人気が高まるにつれ、却って曲が引き立ち、祭りの後のやるせなさが胸に迫って後を引いた。時代を切り、時代と寝たともいわれた「オレたちひょうきん族」が、普遍を描くシティポップスでエンディングを飾る。なんてやっぱり洒落とメリハリが効いてると思う。
そういえば、2002年11月にオリジナルサントラ盤が発売されるという話があった。が、直前に突然発売中止となり、原因は謎のまま。幾つかのCD販売サイトにはまだ痕跡が残っている。収録曲まで決定していたらしいが権利問題のせいなのかしら。大瀧詠一作「うなずきマーチ」や桑田佳祐作「アミダばばあの歌」、坂本龍一&忌野清志郎のパロディー「いけないお化粧マジック」なんか絶対に収録されただろうと思うと残念すぎて泣ける。
あれから35年。私もいい年になった。“じずりびと” や “いーてふ” を見てはギャグを報告し合い、クラスで真似して笑い転げていたチオリちゃんは元気だろうか。ひょうきん族に教わったことはたくさんある。パロディー、皮肉、センス、ふてぶてしさ、王道とサブカルチャーの合間の妙味。ずっと心の奥に。嗚呼ひょうきんフォーエバー!
2016.11.12
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