2022年 12月21日

カルチャー・クラブは小泉今日子と同期だけどヴィジュアル系バンドのルーツじゃない!

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カルチャー・クラブのアルバム「ジャパニーズ・シングル・コレクション-グレイテイスト・ヒッツ-」がリリースされる日
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1984年の来日、ボーイ・ジョージの第一印象とは?


「うわ、でっけぇ〜!!」

…… これが、私がボーイ・ジョージを生で観た第一印象である。と言っても、来日公演を観に行ったわけではない。1984年6月、名古屋公演の前に、繁華街・栄の地下街を散策していた彼にたまたま出くわしたのだ。

「あ〜ッ! ボーイ・ジョージだがねッ!!(名古屋弁)」と誰かが叫び、たちまち周囲に人だかりができた。私はそれを遠巻きに眺めていたのだが、ジョージの見つけやすいこと(笑)。ファッションとメイクはMTVで観るのと同じで、男性か女性かわからない、まるでステージ衣装みたいな恰好だったこともあるが、実は彼、身長180センチ超でかなり大柄なのだ。もう目立つ目立つ。

そのとき思ったのは「このヒト、根っからの目立ちたがり屋なんだな」。お忍びで街に出たいなら、メイクを落とし、男性然とした地味な恰好で出かければ、たぶんボーイ・ジョージだと気づかれなかったはずだ。しかし、そのときのジョージは真逆。「みんな、ボクのこと観て!」と言ってるような、そんな雰囲気だった。

実際、ジョージはデビュー前から、その奇抜かつ斬新なファッションで、ロンドンのクラブシーンでは有名人だったという。LGBTQ+という概念が一般にも浸透している今では「女性風ファッション」は別に珍しくも何ともないが、当時は結構なインパクトがあった。

デビュー40周年!カルチャー・クラブのベスト盤が発売


そのボーイ・ジョージ率いるカルチャー・クラブが、今年(2022年)でデビュー40周年ということで、12月21日にベスト盤『ジャパニーズ・シングル・コレクション-グレイテイスト・ヒッツ-』がリリースされるとのこと。そうか、小泉今日子とボーイ・ジョージは「同期デビュー」だったのか。実に感慨深い。

しかも、日本独自編集のこのベスト盤、タイトルどおり日本で発売されたシングル+MVも収録。最新マスタリングを施し、さらに日本盤のシングルジャケットを縮小サイズで再現したカラーブックレットも付属。当時の担当者によるエピソードも掲載されるそうで、全盛時を知るファンにはたまらない内容になっている。ここで、カルチャー・クラブのデビュー時の状況と、その人気ぶりをちょっと振り返ってみよう。

1981年にロンドンで結成されたカルチャー・クラブは、翌1982年、英ヴァージン・レコードからメジャーデビュー。10月にリリースした「君は完璧さ」(ナイス邦題!)が全英1位となり、日本も含め世界中でヒット。さらに1983年には「カーマは気まぐれ」(これもナイス!)も全英・全米1位を獲得。ニューロマンティックの旗手として世界的人気を誇るバンドになった。






ちなみに、私がジョージに遭遇した1984年は2度目の来日で(1983年、『夜のヒットスタジオ』に生出演したときが初来日)、このときのツアーが初の日本公演だった。当時のパンフレットによると、6月20・21日が大阪城ホール、23日が名古屋市国際展示場、そして25〜27日が日本武道館…… って、いきなり武道館3Daysかよ! もちろん全公演完売だった。

しかし「♪カーマカマカマカマ カマカメーリォーン」はインパクトあったよなぁ。だって、普段洋楽なんか絶対に聴いていないであろう近所のオバちゃんが「あのカマカマ言っとる外人のおカマさんが今、こっちに来とるんでしょ?」(発言ママ)と言ったほどだ。日本のCMにも破格のギャラで出ていたし、当時のカルチャー・クラブはそのぐらい異常な人気があった。

ヴィジュアル系バンドに与えたカルチャー・クラブの影響は?


では、カルチャー・クラブがその後のバンドに与えた「音楽的影響」はどうなのか? この点について、かねてから個人的に疑問に思っていることがあり、いい機会なのでちょっと問題提起をしてみたい。

ロック史関連のサイトを見ていると「カルチャー・クラブは日本のヴィジュアル系バンドにも影響を与えた」という記述をよく目にする。たとえばSHAZNAは、IZAMが「ボーイ・ジョージから影響を受けた」と公言しているし、それは別に言われなくてもわかる。



だが、他のヴィジュアル系バンドで「(直接的に)カルチャー・クラブの影響を受けた」バンドって、果たしてそんなにいるんだろうか? ほとんど聞いたことがないし、そう言い切るのはちょっと雑すぎるように思う。というのは、日本の主要なヴィジュアル系バンドは、それぞれ音楽的に様々なルーツを持っていて、ニューロマンティックとは全然畑違いだったりするからだ。

「V系の元祖」と言われるX-JAPANの場合、YOSHIKIは「自分のベースはパンクス、ハードコア」と語っているし、他のメンバーはアメリカンロック、メタルが好きだったりする。いろんな音楽をゴッタ煮にして昇華させたのが彼らの音楽なのだ。ゆえに海外で音楽的な面から再評価され、解散から10年後に活動を再開することにもなった。

あと、黒夢やLaputa、ROUAGEなどいわゆる「名古屋系」バンドはポストパンクの流れを汲むもので、ポジティヴパンクとか、ゴシックロックとか、むしろそっち方面の影響が強い。だから、カルチャー・クラブに限らず「ニューロマンティック勢が日本のヴィジュアル系に影響を与えた」という説は、外見から見た短絡的な発想であって、音楽的背景をあまりにも無視しているように感じる。

カルチャー・クラブと日本のヴィジュアル系バンドの共通点をあえて探すとすれば「自分らにしかできない、オリジナリティのある音楽を生み出そう」という熱意がまずあって、それを外見上でも強烈に示したことだ。

あくまで音楽が先で、ガワは後。カルチャー・クラブがV系に与えた影響を挙げるのなら、むしろそういうバンドとしての姿勢の面、音楽に対する向き合い方を挙げるべきじゃないか。

カルチャー・クラブの音楽的背景は?


今回リリースされるベスト盤や、日本でもオリコン1位に輝いたセカンドアルバム『カラー・バイ・ナンバーズ』を聴いてもらえばよくわかるが、カルチャー・クラブの音楽的な背景は黒人音楽であり、ソウルミュージックである。

ボーイ・ジョージは当時、影響を受けた音楽を聞かれ「グラディス・ナイトとか、モータウンあたり」と答えている。事実、ジョージの歌い方はとってもソウルフルだし、そして彼は黒人音楽をポップでキャッチーなヒット曲に昇華させる天才だった。つまり、カルチャー・クラブのヒット曲を通じて、われわれは間接的にブラックミュージックに触れていたことになる。

もうひとつ、カルチャー・クラブというと、どうしてもボーイ・ジョージのことばかり語られがちだが、楽曲については、メンバー4人がそれぞれ意見を出し合って、全員で曲創りを進めていたことも忘れてはいけない。

重要なのはこのバンド、メンバーのルーツがみんな異なる「多国籍軍」だったことだ。ボーイ・ジョージはアイルランド系だし、他の3人はユダヤ系、ジャマイカ、イングランド…… と出自がてんでバラバラなのだ。そもそも、カルチャー・クラブというグループ名自体「様々な文化の融合」という意味合いで付けられたもの。そんなバックグラウンドがあったからこそ、あれだけ多彩な音楽を消化できたのだと思う。私にレゲエを教えてくれたのは「君は完璧さ」だった。

そして彼らは、先述のアルバム『カラー・バイ・ナンバーズ』のジャケットでも、ボーイ・ジョージの顔の横に「ボーイ」とカタカナをあしらうなど、日本文化も大好きだった。この「ボーイ」はタテ書きで記されているが、間の「ー」がタテ棒ではなくヨコ棒になっているのはご愛嬌。



極めつけは、曲の最後の最後で、サビを「♪セ〜ンソウ、ハンタ〜イ!」と日本語で歌う「戦争のうた」(The War Song)だ。なぜそこだけ日本語にしたのか? たぶん、憲法9条のこともあるんじゃないかと思う。この曲の全編日本語ヴァージョンが今回のベスト盤に特別に収録されているのも聴きモノだ。

彼らが愛してやまない日本が「♪セ〜ンソウ、サンセ〜イ!」になっていきそうな昨今だが、そんなご時世だからこそ、40年前から多様性を認め合い、4人で素晴らしい楽曲を創ったカルチャー・クラブの作品をぜひ聴いてほしい。

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2022.12.14
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1967年生まれ
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