その主軸となっていたのが、有頂天のケラが主催するナゴムレコードやラフィンノーズのAAレコードでした。そして彼らを模倣して様々なレーベルが乱立した80年代後半。このシーンの中で、忘れられない一枚というのが、86年5月に Jeepster Records よりリリースされた『JUST A BEAT SHOW』というオムニバスアルバムでした。
閑話休題。この『JUST A BEAT SHOW』をなぜ手に入れたかというと、当時夢中になっていたザ・ブルーハーツの音源がここに収録されていたからに他なりません。それまで唯一制作された無料配布のソノシート『1985』を手に入れるチャンスを逃してしまった僕は、彼らの音をレコードで聴けると喜び勇んで入手しました。
ちなみに、ザ・ロンドンタイムスは、この後、雑誌『宝島』が主催していたキャプテンレコードからミニアルバムを発表。豊島公会堂でのワンマンライブを満杯にしていました。ヴォーカル、片岡健一氏は同バンド解散後にフレデリックというバンドでメジャーデビュー。現在もハニーオニオンズを率いて精力的にライブを行っています。また、この『JUST A BEAT SHOW』を主宰したザ・ジャンプスのヴォーカル、島掬次郎氏は、バンド解散後、新司法試験に合格。現在では東京弁護士会に所属する弁護士として活躍しています。
80年代後半、物凄く曖昧な定義で、ビート・バンドなる言葉が常套句として多用されましたが、これも、この『JUST A BEAT SHOW』以降の気がしてならないのです。これは僕の個人的な意見なのですが、ビート・バンドとは、しっかりとした音楽的背景を持ってシンプルなロックンロールを体現するバンドの呼称だと思っています。例えば、このアルバムに収録されている四つのバンドのように―― そして、この源流には、日本のリヴァプール、英国経由の音楽を感度のよいアンテナで吸収し、多くのバンドが巣立った奇跡の街、博多、北九州出身のザ・モッズ、ザ・ルースターズ、ザ・ロッカーズというバンドがいるのではないでしょうか。