2022年 5月17日

ももいろクローバーZと昭和歌謡、ももクロはなぜ世代を越えたファンを獲得できるのか?

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photo:KING RECORD  

ももいろクローバーZに感じられる “昭和の匂い”


2008年5月17日、ももいろクローバーZ (以下ももクロ)結成。2022年で結成14周年を迎える彼女たちは、今や日本の女性アイドルシーンのレジェンド的存在だ。そして、ここまでの14年間に彼女達が重ねてきた独自のアプローチによって生み出した魅力は、いわゆるアイドルイメージの枠を越えて日本のポップスシーンにおいても重要なものになっていると思えるのだ。

女性アイドルグループのファンは10代、20代の男子という先入観があるが、実際には女性に支持されているグループも少なくない。しかしももクロのファン層の広さは圧倒的で、ライブになると夫婦や親子連れも普通で、まさに老若男女が集まってくる。2017年10月に日本武道館で行われた40歳以上のファンクラブ会員限定ライブ『over.40祭り』ではチケット争奪戦となり、年齢が高い順に席が前になるシステムを採ったことにより、60歳以上でなければアリーナに入れない状態が生まれたほど、年代の高いファンも多いのだ。

こうしたエピソードにも見られるように、大人のももクロのファンが多い理由のひとつとして、彼女達にはどこか “昭和の匂い” が感じられるという部分があるんじゃないかと思う。僕自身もそうだった、

2012年4月21~22日、横浜アリーナで『ももクロ春の一大事2012 〜横浜アリーナ まさかの2DAYS〜』というライブが行われた。このライブは、初日と二日目でまったく異なるスタイルのステージが披露されたことでも話題となったが、僕がオヤっと思ったのは「ももクロ☆オールスターズ」と題された初日のステージのゲストが、ザ・ワイルドワンズ。デューク・エイセス、横森良造、松崎しげる、青空球児・好児という、まさに昭和芸能史を飾る顔ぶれだったことだ。中でも “ミスターのど自慢” ことアコーディオン奏者の横森良造を招いたセンスに「このアイドルは只者ではない!」と感じたのが、僕がももクロに強く惹かれるようになるきっかけだった。ちなみに横森良造はこの年の8月に逝去したため、このももクロライブが最後のステージとなった。

ももクロの意志表明! 果たすべき役割は“歌謡文化の継承”




『ももクロ☆オールスターズ』のあまりに大胆なゲスト人選はさすがに当時のファンに賛否両論を巻き起こした。けれど、僕にはそれが “日本の芸能史を彩った先人が築いた財産を受け継いでいく” という意志表明だと感じられた。

もちろん、当時15~18歳でもともと音楽志向があったわけでもないメンバーがその意図を十分に理解していたわけではないだろう。しかし、少なくとも “チームももクロ” として、長いスパンで将来を考える中、自分たちが果たすべき役割のひとつとして “歌謡文化の継承” を挙げていたというのはかなりすごいことだと思う。

それは、過去への回帰やレトロ指向をグループのカラーとするということではなく、自分たちはコンテンポラリーなグループとして活動しながらも、先人が紡いできた日本の芸能・歌謡史の流れを受け継ぎ、未来につないでいくために、自分達の立ち位置をしっかり意識するということだ。

2012年のももクロは「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」、「Z女戦争」「サラバ、愛しき悲しみたちよ」を次々とヒットさせるとともに、初のドームコンサート『ももクロ夏のバカ騒ぎ SUMMER DIVE 2012 西武ドーム大会 〜星を継ぐもも Peach for the Stars〜』を成功させるなど、活動のスケールを加速させていた。

その一方でメンバーに “先人の足跡” を体感させる活動も持続的に行われた。そのきっかけとなったのが『坂崎幸之助のお台場フォーク村デラックス2012』(8月14日)だった。フォークの造詣が深いTHE ALFEEの坂崎幸之助が続けてきた「フォーク村」のイベントで、メンバーそれぞれがソロでフォーク系楽曲をカバーした。しかし、慣れない生演奏に対応できないなど、その出来はお世辞にも褒められたものではなかった。とくにさだまさしの「秋桜」を歌った佐々木彩夏は大きく音程を外してしまい、事後のブログで謝罪している。

ゲストも多彩、ももクロにフォークを伝授する坂崎幸之助


しかしこの結果を受けて、ももクロは本気でフォークに取り組んでいくことになる。「フォーク村」から3か月後の11月に生演奏によるアコースティックライブ『白秋』を開催し、佐々木彩夏の「秋桜」をはじめ、メンバーが「フォーク村」でカバーした曲に再挑戦した。さらにゲストに南こうせつを招きフォークについてのレクチャーも受けた。

この佐々木彩夏の「秋桜」再挑戦の話がさだまさし本人の耳に入り、2013年7月に日本武道館で行われた『さだまさし ソロ通算4000回コンサート』で、佐々木彩夏は「秋桜」をさだまさしとデュエット。これをきっかけに、さだまさしとももクロの交流も深まっていった。

ももクロのアコースティックライブは2014年2月にも『玄冬』のタイトルで、辛島美登里をゲストに招いて開催されている。

さらに注目すべきなのが、この年の9月からCSのフジテレビNEXTで『坂崎幸之助のももいろフォーク村NEXT』がスタートしたことだ。これは坂崎幸之助とももクロによる月一回の2時間生放送音楽番組で、いわば坂崎幸之助がももクロに “フォークを中心にした昭和の音楽” を、実践を通じて伝授するという内容だった。演奏はすべて生演奏でフォークや昭和のアイドルソング、ポップ歌謡などをカバーする。ゲストには泉谷しげる、なぎらけんいち、北山修、小室等、森山良子といったフォークのレジェンドから、和田アキ子、研ナオコ、CHAGE、杉真理、森高千里、松本隆、斉藤由貴、小泉今日子など、ジャンルを越えた多彩な顔触れが登場し、ももクロとセッションも行った。

この、いわばスパルタ音楽教育番組によって、ももクロは昭和から現在につながる先人の音楽に直接触れるとともに、自分たちの表現力、歌唱力、そして音楽の理解度も飛躍的にアップさせていく。初期にはお世辞にも上手とは言えなかった歌の表現力が、回を重ねるごとに向上していくのが、見ていてもはっきりとわかった。

この番組は2019年7月に『しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村NEXT』となり、ももクロのメンバー全員が揃うのは3か月に一回となったが、現在も続いている。

フォーク、演歌、ポップス… ももクロが昭和歌謡にこだわった理由とは?




ももクロが学んだのはフォークだけではない。2013年4月に西武球場で行われた『ももいろクローバーZ 春の一大事2013 西武ドーム大会』は「星を継ぐもも」とタイトルが付けられ、ゲストには南こうせつ、坂本冬美、広瀬香美、松崎しげる、mihimaru GTが登場、ももクロがフォーク、演歌、ポップスとジャンルを超えた継承を志していることを感じさせた。

ちなみに、この「星を継ぐもも」というタイトルは、人類の生い立ちをテーマにしたジェイムス・P・ホーガンのSF小説『星を継ぐもの』からヒントを得ているのではないかと思う。

先に触れたように、ももクロのメンバーはもともと音楽的素養を持っていたわけではない。しかし彼女たちは、与えられた課題(ハードル)に積極的にチャレンジし、楽しみながら消化して自分のものとしていこうとした。フォークや昭和歌謡に対しても、一時的な企画として接するのではなく、楽曲へのリスペクトをもって自分の糧とすべく取り組んでいった。

そんなももクロのひたむきさに触れた先人たちが、彼女たちに目をかけるようになるのは自然の流れだった。今やメンバーに結婚相手が出来た時の関門となる “公式お父さん” だけでも、加山雄三、五木ひろし、さだまさし、坂崎幸之助、笑福亭鶴瓶… と、そうそうたる顔ぶれが控える状況が生まれているほどだ。

ももクロがフォークや昭和歌謡にこだわってきたのは、あくまでも自分たちの現在位置を知り未来に向かうためだ。しかし、学ぶ以上は本物に接したいという姿勢が先人たちとの深い交流につながっていった。そして、こうした交流が2017年にスタートした大晦日の年越しイベント『ももいろ歌合戦』の、五木ひろし、加山雄三、水前寺清子などの大御所を筆頭とする世代を越えた豪華な出演メンバーを実現させているのだ。

ももクロの楽曲は懐メロにならない!




本物にこだわる姿勢はオリジナル楽曲にも見てとることができる。たとえば、彼女たちのレパートリーには「サラバ、愛しき悲しみたちよ」(作曲:布袋寅泰)、「泣いてもいいんだよ」(作詞・作曲:中島みゆき)、「仏桑花」(作詞・作曲さだまさし)、「鋼の意志」(作詞・作曲:高見沢俊彦)など、大物シンガーソングライターに提供された楽曲がある。

しかし、それはけっして話題作りのための “大物起用” ではなく、それぞれがももクロの次のステップの糧となる楽曲として位置付けられるものだった。これらの曲に限らず、ももクロに提供される楽曲は、彼女たちのリアリティを念頭に書かれているものがほとんどだ。そして、彼女たちはそれらの曲をライブで歌い続けることによって、その表現力の成長に見合った新たな魅力を開花させていく。だから、どれほど古い曲でも “今” を感じさせる。だから、ももクロの楽曲は懐メロにならない。これも彼女たちのライブを視てきた実感だ。

そんなももクロのアーティストとしての存在感を強く感じさせたのが、2019年12月に行われた『ももいろクリスマス2019 〜冬空のミラーボール〜』だ。これは、テレビがお茶の間のスターだった1960年代の『ザ・ヒット・パレード』『シャボン玉ホリデー』などの音楽バラエティのエッセンスを、現代のクリスマスショーとして昇華させようとするライブで、当時の楽曲昭和の匂いを知るエンターテイナーとして進行役に中山秀征が起用された。

しかし、ステージでは当時の楽曲のカバーなどは一切無く、演奏されたのはクリスマスソングを除いてすべてももクロのオリジナル曲。それでいて、確かにあの時代のテレビショーから伝わった “華やかな幸福感” がステージからも伝わってきた。

ちなみに、この『ももいろクリスマス2019 〜冬空のミラーボール〜』では歌われなかったが、メンバーの百田夏菜子と玉井詩織は、2016年に発表されたアルバム『ザ・ピーナッツ トリビュート・ソングス』で「恋のフーガ」を歌っている。すでに『冬空のミラーボール』以前に。ももクロは『ザ・ヒットパレード』『シャボン玉ホリデー』のヒロインだったザ・ピーナッツと出逢っていたのだ。

ももクロの歌に “昭和の匂い” が感じられるのは、彼女たちが昭和に寄せているのではなく、昭和の時代から受け継がれてきた “歌の系譜” の中に自分たちが居ることを自覚しているからなのだろう。

聴く人を楽しませるという “先人の想い” を継承し、それを自分たちの “表現” として今に伝える―― そんな姿勢が貫かれているからこそ、初期の曲を歌っても古く聴こえない。同じように、彼女たちが「フォーク村」などでカバーする昭和の歌も、けっしてナツメロとは感じられず、リアリティある今の歌として聴こえてくる。

この歌に向き合う姿勢があるからこそ、ももクロは世代を越えたファン層を獲得できているのだ。改めてそう思う。

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2022.05.14
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のりたま
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