9月25日

トミーとマツのエンディング、松崎しげる「ワンダフル・モーメント」の心地よさ

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松崎しげるのシングル「WONDERFUL MOMENT」がリリースされた日
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「なんだ、なんだ、なんだー! お前みたいなのは男じゃねえ! 女の腐ったのって言うんだ! このおとこおんなー! とみこー!!」


平成も終わり令和の時代に突入しようとする現在、こんなドラマを放送した日には視聴者からテレビ局への苦情が殺到するだろう … 。ただ、エイティーズな僕らはこのドラマが大好きだったはずだ。

そう、この台詞は1979年~1982年まで放送された TBS系列のドラマ『噂の刑事トミーとマツ』の一コマである。

物語が佳境に入り、トミー(国広富之)とマツ(松崎しげる)は、ついに犯人を追い詰める。ところが肝心なときに弱々しくなってしまうトミー … 。 そんなトミーの姿に業を煮やしたマツが罵倒すると、突如トミーの人格が変わって無敵になるというお約束の展開。

バカバカしくも変身のテーマ曲が流れ、いきり立ったトミーが耳をぴくぴくさせるという過剰な演出を含めて、毎回飽きもせず楽しみにしていたのは皆も同じだっただろう。それもそのはず、第1シリーズ、第2シリーズを含め、なんと106回も放送が続いた人気ドラマだったのだから。

当時、松崎しげる30歳、国広富之27歳。トミーの姉役であるサッチ(志穂美悦子)はまだ25歳で、国広より2歳若いけれど、確かにアネゴ肌だし、アクション女優の風格もあって、僕の目には全く違和感がなかった。

さらに、第21話からレギュラー出演するマリッペ(石井めぐみ)の婦警姿がとにかくかわいくて、テレビの前の僕はトミーとマツとの三角関係に毎回ヤキモキした。そんな彼女が、ドラマが終了した同年に雑誌『GORO(小学館)』の “激写” コーナーに一糸まとわぬ姿で登場したのだ。僕はそのときの衝撃をどう説明したらよいかわからない。ただ、その雑誌を迷わず購入したことでこの胸の内を理解して欲しい。

それはともかく、『噂の刑事トミーとマツ』は、アメリカの人気番組『刑事スタスキー&ハッチ』というポリスマンストーリーを下敷きに作られた日本初のバディ作品(刑事がコンビを組んで捜査する)だというのは有名な話だ。

また、軽妙な掛け合いで進行してゆく展開も、もはや伝説である『あぶない刑事』や、現在でも絶大な人気を誇る『相棒』などの流れを作ったドラマとして高く評価されている。ちなみに変身して相手をなぎ倒してゆく派手なアクションシーンの演出は『超人ハルク』をモチーフにしているそうだ(松崎談)。

松崎は、「当初、石立鉄男さんには『ルールを守れよ』って怒られていたけれど、そのうち『お前は本当にやりたい放題だな』って飽きられながらも好きにやらせてもらえた」とコメントしていて、連続ドラマ初主演にして当たり役にハマるという運を引き寄せた。それは、売れるまでの苦労がようやく報われた瞬間でもあるだろう。

さて、前置きが長かったけれど、今回は松崎しげるが歌った『噂の刑事トミーとマツ』のエンディング曲「WONDERFUL MOMENT」について、彼の魅力である声質や歌い方に焦点を当てながら掘り下げてみたいと思う。


■世界を魅了した松崎しげるの歌

松崎しげる通算21枚目のシングル「WONDERFUL MOMENT(1979年)」は、作詞を三浦徳子、作曲を佐瀬寿一が担当した。

佐瀬寿一は、かの有名な「およげ!たいやきくん」の作曲者であり、キャンディーズの「暑中お見舞い申し上げます」も作っている。

編曲は小笠原寛。この三浦~小笠原のコンビは、僕が大好きな多岐川裕美の「酸っぱい経験」も作っていて、浮遊感を伴った心地よいサウンドはどちらの楽曲にも共通するところ。ちょっとアダルトなアレンジが恰好いい。

ドラマではこの曲をバックに、雨の中で1本の傘を奪い合う微笑ましい(?)やり取りのエンディング映像が流れてゆく。最後、雨が上がったことに気づいた二人が明け方の野原でジャンプするというシーンで終わるのだけれど、ソフトバラードな曲の印象と同じくほんのりとした温かさと切ない余韻に心奪われてしまう。松崎の大ヒット曲である「愛のメモリー」も素晴らしい曲だけれど、僕はこの曲も印象的で大好きな曲のひとつなのだ。

なお、この曲で松崎は『第9回東京音楽祭(1980年)』に出場、世界を相手に見事銀賞を獲得している。ハスキーでありながら高く強く伸びてゆく歌唱力が堂々と世界に通用することを見せつけてくれた。彼の歌声は世界基準だったのである


■2種類の声の秘密とは

松崎の声の特徴として、ハスキーでパワフルな歌声が挙げられる。圧倒的声量とそこに含まれる倍音、音圧など様々な魅力に溢れているわけだが、その歌い方、発声の仕方がよく聴くと2種類あることに気づかされる。

少々擦れた地声は低中音域で使われていて、これは大きく口を開けて口の中に広く空間を取ることで太い声を作り出している。倍音を多く含み温かさを感じる声質は、しっとりとしたバラードによく似合うと思う。

中高音域はミックスボイスと呼ばれる声帯を強く鳴らした発声で、これは地声と比べて声帯閉鎖を強くして、その上で声帯をしっかりと鳴らす発声法だけれど、喉の空間を広く取ることでかなり高音部分まで太く強い声を作り出しているのが松崎の特徴であり強みでもある。

この「WONDERFUL MOMENT」を例に挙げると、サビの部分、


 ふたり Wonderful Wonderful
 Wonderful Wonderful Moment


この「ワンダフル」と繰り返すところがミックスボイスである。

この曲はしっとりした雰囲気なので、そこまででもないけれど、ベルティング系の発声(強い地声のように聴こえる高音域発声法)が得意である松崎が歌う「愛のメモリー」のサビである高音部分を思い出してもらうともっとわかりやすいと思う。

強い鳴りでパワフルな高音域を発声することができるベルティング系の歌手は、ASKA、B’z 稲葉浩志、女性ならMISIA などが挙げられるけれど、どの方もスカッとして突き抜ける爽快感がたまらなく気持ちいい。

ところで、“松崎こげる” として CM に出演したり、番組の企画で “まつざきしげるいろ”(サクラクレパス社)など作られたりして、肌の色の黒さをウリに表面上の年齢を感じさせない松崎だけれど、御年69歳である。来年の9月にはデビュー50周年を迎える。僕は、45周年のときに行った本人主催の音楽フェス『黒フェス』をまた元気に開催して欲しいなと期待している。

それと同時に、国広富之と共に “トミーとマツ” を、またどこかで見せてくれないかとも期待している。何故なら、期待させる人柄こそが、松崎しげるの良さだからだ。

2019.04.27
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