洋楽におけるアルバムからのシングルカット曲の数はアルバムの売り上げを図る上でも興味深く、史上もっとも売れたアルバム、マイケル・ジャクソンの『スリラー』からは実に7曲のシングルが生まれた。さすがにこれには並べないだろうと思っていたら、1984年のブルース・スプリングスティーン『ボーン・イン・ザ・USA』が7枚のシングル曲をカット。これは大好きなアルバムだったから嬉しかった。
が、手放しでは喜べなかった。アルバムの核というべき「ノー・サレンダー」と「ボビー・ジーン」がシングルにならなかったのは、なんでだ!? スプリングスティーン節が炸裂するハードな前者も、友との別れを歌った泣きの後者も、近年のライブでしばしプレイされる名曲。耳にしてすぐに好きになったし、シングルカットされ、チャートを駆け上がるだろう... と夢想したものだ。
3枚目のシングルとしてタイトル曲がリリースされ、“次は...” と思っていたら4枚目は、よりよってアルバム中もっとも地味な「アイム・オン・ファイア」。デモ録音を収録したような2分36秒の小曲がシングルになるとは想像もしていなかったので、さすがにズッこけた。
“つまんねえ曲をカットしやがって” 的にスルーすれば良かったが、そうもいかないのは、当時のボスのシングルのB面には必ず未発表曲が収録されていたから。なにしろこっちはアルバムを聴き過ぎ、新曲に対してハングリーハートになっているので、イヤでも買わざるをえない。それがA面以上にデモっぽいチャック・ベリーのカバー曲であっても...。
以上、一枚のアルバムに惚れ込んで迷走した時期の思い出話。ボスには高校時代の少ない小遣いを搾り取られたなあと思う反面、シングルを買うこと、聴くことの熱量を教えてもらった。少なくとも、「アイム・オン・ファイア」もイイ曲じゃないか! と思える程度にはグローインアップしましたよ、ええ。
2016.01.13
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