TM NETWORKのかたわら小室哲哉ソロデビュー
1989年のも終わりが見えてきた12月、「Get Wild」のスマッシュヒットなどによってTM NETWORKの人気を確固たるものとした小室哲哉さんは当時多忙であったTM NETWORKの活動に一瞬の隙間を見出したタイミングでソロデビューアルバムの制作を進められるというきっかけから生まれたアルバムがこちら『Digitalian is eating breakfast』であります。
この作品での小室さんは、新しいアプローチを目指してシンクラヴィアという当時最先端のデジタルシンセサイザー… というよりはシーケンサー、レコーダーの機能を包含した今でいうところのDAW的な機材を導入し、ギター、サックス以外の楽器はすべていわゆる “打ち込み” で、という手法で制作されました。
最先端の手法で作られた「Digitalian is eating breakfast」
ボーカルもシンクラヴィアに取り込み微調整等を行っているなど、現在では当たり前ではあるものの当時としては最先端の手法を取り入れたのです。TM NETWORKの作品もエレクトリックな要素が従前からあったものの、本作は “この先のTM NETWORKの音” や小室さん自身の新たな活動に対する方向性を広げるための実験的な要素が大きかったように思います。
今回は、そんな『Digitalian is eating breakfast』で私のお気に入りの曲を紐解きながらこのアルバムの魅力に迫ってみたいと思います。
1. M3:OPERA NIGHT
この曲は、ミュージカル「オペラ座の怪人」を意識して作られたとのコメントが残されていますが、歌詞に登場する価値観は非常にゴージャスであります。また、サウンドは正統派の80年代ユーロビートテイストのフロア映えするディスコサウンドを強烈に意識したものであり、ダンスビートへの意識を強く感じられる曲であります。
シンクラヴィアらしさは煌びやかなシーケンスフレーズと艶やかなベースのサウンド、間奏に取り入れられた女声のサンプリングフレーズやサウンドエフェクトなどに感じられると思います。
2. M4:GRAVITY OF LOVE
世界観としては、まるでオフコースを彷彿させる… といったらFANKSの皆様には怒られてしまいそうですが、正統派ラブソングをエレクトリックな世界に持ち込むとどうなるのであろうか… という疑問に答えてくれたような曲です。
ややアップテンポなのに歌詞の世界観もサウンドも落ち着いた雰囲気を醸している名曲だと思います。ちなみに、なんとこの曲が松田聖子さんの25曲シングル1位を止めたというのは驚きではあります。
3. M9:RUNNING TO HORIZON
やはりこの曲無しにはこのアルバムは語れません。言わずと知れた『シティーハンター』のテーマソングとして名を馳せ、今でも歌い継がれる名曲であるので改めて語るというのもおこがましくはあるのですが、やはりこの時代の小室さんの “強さ” のようなものを湛えているように思うのです。
疾走感にあふれたビートやソウルフルなコーラスアレンジは秀逸でありますし、何よりもこの曲の小室さんのボーカルが一番冴えていると思うのは私だけでありましょか。
2021年、豪華パッケージでリイシュー!
発売から32年を経過した2021年2月24日に『Digitalian is eating breakfast Special Edition』としてCD、Blu-ray、そしてアナログEPの豪華パッケージでリイシューされたということで再び注目を集めることになりそうです。ライブ映像なども含めて楽しめることは大変素晴らしいことです。皆さんも機会がございましたら是非お楽しみいただければと思います。そして引退などとおっしゃらずに今後ともご活躍を期待したいと思うのです。小室さん。
2021.02.24