ユーミンデビュー50周年、「真夏の夜の夢」で始まった花火大会
♪右に見える 競馬場 左はビール工場
―― のフレーズで有名な「中央フリーウェイ」は、1976年11月20日に発売された荒井由実4枚目のアルバム『14番目の月』に収録された。この曲は同年3月にTBSで放送されたスタジオ・ライブ番組『セブンスターショー』(荒井由実&かまやつひろし)の中で、かまやつひろしのためにユーミンが作った曲でした。番組内の企画として制作されたこの曲が、その後、数十年にわたり多くの人々に愛されることになるとは誰も思っていなかったでしょうね。
そんな「右に見える競馬場」の舞台である府中の東京競馬場で、ユーミンのデビュー50周年を記念した一夜限りの花火イベント『東京SUGOI花火2023 Yuming 50th Anniversary 〜真夏の夜の夢〜』が開催されました。開催日の7月5日は、ユーミンのデビュー51周年目に突入した日、つまり記念すべきユーミンのデビュー日だったのです。約28,000人の観客で埋め尽くされた競馬場に着物姿のユーミンがサプライズで登場し、多くのユーミンファンを喜ばせてくれました(ユーミンは冒頭のトークのみで登場)。「真夏の夜の夢」で始まった花火大会は、ユーミンの代表曲12曲に合わせ、約14,000発の花火が競馬場の空を美しく彩ったのでした。
今からちょうど30年前にリリースされた「真夏の夜の夢」
そんな記念すべき花火大会のサブタイトルにもなった「真夏の夜の夢」ですが、皆さまご存じユーミンの代表曲です。この曲が発売されたのは1993年7月26日ですから、今からちょうど30年前の楽曲ということになります。ユーミンが最初に1位を獲得したシングルは、1975年に発売された荒井由実時代の「あの日にかえりたい」なのですが、その後は残念ながらナンバーワンヒットには恵まれませんでした。
1981年の大ヒット曲「守ってあげたい」でさえ残念ながら最高位2位だったのです。80年代ジョーク交じりに「シングル盤はわたしのアキレス腱(弱点という意味)」とコメントしていたユーミンです。「卒業写真」「中央フリーウェイ」「埠頭を渡る風」「DESTINY」「リフレインが叫んでいる」など、皆さんご存じの人気曲は、実はすべてアルバムに収録されている曲なのです。
ドラマ「誰にも言えない」の主題歌に起用
90年代に入り世の中は「J-POP」ブームに突入。1992年にはサザンオールスターズや中島みゆきの楽曲がドラマの主題歌に起用され、ミリオンヒットを記録していました。そんなJ-POP全盛期にユーミンもヒットを狙ったシングルをリリースすることになるわけですが、その勝負曲がまさに「真夏の夜の夢」だったのです。
約4年ぶりのシングルとして発売されたこの曲は、ドラマ『誰にも言えない』の主題歌に起用されましたが、前年に大ヒットしたドラマ『ずっとあなたが好きだった』の脚本家・君塚良一とプロデューサー・貴島誠一郎が再びコンビを組んだ話題作でした。『ずっとあなたが好きだった』では、佐野史郎演じる “冬彦” が社会現象になりましたが、『誰にも言えない』でも佐野史郎演じる “麻利夫” のキャラクターが話題に。ドラマの最終回の視聴率は33.7%を記録し、主題歌も当然大ヒットになったわけです。
コンサートではたびたび歌われる定番曲に
お得意のラテンのリズムが特徴のこの曲ですが、当時ユーミンが “イタリアン・ツイスト” と命名していた記憶があるので、サビの情熱的な “アモーレ アモーレ” のフレーズはノリノリでレコーディングしたのではないでしょうか。シングルの発売日はちょうど逗子マリーナのコンサートの開催中で、アンコールで大きな花のつぼみを模した装置が開き、登場したユーミンが歌った曲がこの「真夏の夜の夢」でした。シングルの発売日に逗子マリーナでこの曲を聴けたことは、自分にとってのまさに “真夏の夜の夢” だったかもしれません。
この「真夏の夜の夢」は「あの日にかえりたい」以来、約18年ぶりの1位を獲得し、140万枚以上売り上げるユーミン最大のヒット曲になりました。その後もユーミンのコンサートではたびたび歌われる定番曲になったわけですが、時には火が吹き、時には噴水の水が交差するというド派手な演出の中歌われるので、イントロを聴くだけで脳内からドーパミンが出てくるような気がします(笑)。
そんなユーミンは現在デビュー50周年を記念した全国アリーナツアー『The Journey』を開催中。6月に行われた東京公演に足を運びましたが、ユーミンの50年間の軌跡を観客と共に航海できる素晴らしいコンサートでした。このツアーは12月末まで全国で開催されますので、みなさまも機会があれば是非足をお運びください。「真夏の夜の夢」が歌われるかどうかは、コンサートに行かれた方だけのお楽しみということで!
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2023.08.10