4月29日
二人のバッドガイ — フレディ・マーキュリーとマイケル・ジャクソンの孤独
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photo:SonyMusic  
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「実際、僕の抱えている孤独は一番がまんできない類のものだ。孤独は、自分で部屋に閉じ籠もるっていうものだけじゃない。人でいっぱいの場所にいてもなお、一人ぼっちの男になることもあるのさ。なぜって、その理由は、誰とも本当に馴染むことができないからさ。」 (『クロスビート』1992年1月号に掲載された「フレディ・マーキュリー、死の10日ほど前に行われたと思われる最後のインタビュー」より)

ここで語られているのは癒しがたく痛切なフレディ・マーキュリーの孤独である。2億枚以上のレコードを売り世界中のファンから愛されたバンド、クイーンのフロントマン。ステージでは茶目っ気たっぷりに振る舞い、観客を魅了したカリスマ。

世界を手に入れた男の孤独の深さは、一般人の感じる孤独とは違うものなのだろう。

クイーンの歴史はスキャンダルとの戦いでもあった。特にフレディは特異な出で立ちもあって、タブロイド紙に追いかけ回され人格攻撃的な記事さえ書かれ続けた。僕は趣味でクイーンについて書かれた雑誌を集めているのだが、本国での扱いには酷いものがある。

もともと繊細なフレディは常にそれと戦ってきたのだが、どこかで吹っ切れてしまったような気がする。クイーンが解散の危機に直面していた80年代初頭から、彼の生活は乱れに乱れ始める。

フレディ最後の恋人と言われたジム・ハットンによる『フレディ・マーキュリーと私』やジャーナリスト、レスリー・アン・ジョーンズの『フレディ・マーキュリー〜孤独な道化〜』に描かれたナイトライフからは、癒しがたい孤独を抱える一人の男の悲しみが伝わってくる。読んでいて苦しくなるほどだ。

その時期に彼が発表した事実上唯一のソロアルバムが『MR.バッド・ガイ』である。身もふたもない題名とジャケットに当時中学生の僕は思わず怯んでしまったが、聴いてみるとクイーンのオリジナルアルバムよりもキャッチーで愛聴していた思い出がある。フレディの没後に制作されたクイーンのラストアルバム『メイド・イン・ヘヴン』のタイトル曲や、日本でも大ヒットした「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー(I Was Born to Love You)」のオリジナルバージョンも収録されている。

中でも好きな一曲が「リヴィング・オン・マイ・オウン」。リミックスされ93年に全英1位を獲得するアッパーなディスコチューンで、しばしばクイーンのライブでも披露していたフレディのスキャットが特徴的な一曲だ。

しかし曲調とは反対に、歌詞は孤独に怯える男の率直すぎる告白である。孤独から逃げるために愛を求めても、その愛は自分を癒してはくれない。孤独の自家撞着がとぐろを巻き苦しめる。

特筆すべきは MV に映るフレディと仲間たちである。ドラッグクイーン、ストリッパー、訝しげな「夜の人たち」で溢れたパーティーの様子はもはや露悪的だが、かえってフレディの悲しみが余計に伝わる。彼が HIV によって命を落とすという結末を知っていれば、このヴィデオはなおのこと胸に響く。

一方で愛を求め、愛に生きた男は誰よりも美しい曲をこのアルバムに残してくれた。それが「生命の証(There Must Be More To Life Than This)」である。驚くことにこの曲には、アルバムには収録されていないマイケル・ジャクソンとのデュエットテイクが存在するのだ。

83年4月にフレディがマイケルの住むロスアンゼルスを訪ねた際、録音されたのだが未完成のまま放置されていた。そして遂に2014年、『クイーン・フォーエヴァー~ベスト・オブ・ラヴソングス』に正式な完成版が収録された。

マイケルも、スターダムの孤独の中で愛を欲して生きたカリスマである。「人生にとってより大切なものがあるんだ 僕たちは愛のない世界の中でどうして生きられよう?」と二人がデュエットする時、スターであることの苦悩に悩まされ続けたフレディとマイケルが、僕たちの心の中に、美しい愛に似た感情をもたらしてくれる。

マイケル・ジャクソンにも『BAD』というアルバムがあった。二人の「バッド・ガイ」は、命の炎を燃やして愛の伝道者となった。その愛は、世代を超えて伝わってくる。


※2018年4月29日 に掲載された記事をアップデート

2018.09.05
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カタリベ
1991年生まれ
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