高校の近く、大きな通り沿いのレンタルレコード屋で、シンディ・ローパーの『She's So Unusual(当時の邦題:N.Y.ダンステリア)』を借りたのは高1の終わり頃だったか。宝箱のようにカラフルなヒットチューンをテープに落として、電車通学時にウォークマンで繰り返し聴いていた。
「タイム・アフター・タイム」の美しいメロディーとコーラスにぐっときた。新しさと懐かしさを感じさせるアレンジメントも素晴らしい。「マネー・チェンジズ・エヴリシング」でフィーチャーされているピアニカのような音色は何だろう。楽器のことなど何もわからないのに、サウンド面がやたら気になって仕方がなかった。そうして雑誌で知ったのが、メロディカという楽器と、ザ・フーターズというバンドである。
シンディのプロデューサー、リック・チャートフが、昔馴染みのロブ・ハイマンとエリック・バジリアン(フーターズ)を主要レコーディングメンバーとして起用したのが始まり。ロブは「タイム・アフター・タイム」の作曲者としても知られる。バンド名はメロディカの呼称 “Hooter” が由来であり、地元フィラデルフィアでは一時ホール&オーツよりも人気があったとか。もちろん、アメリカの人気巨乳居酒屋とは関係なし(笑)。
彼らが1985年に発表したメジャーデビュー作「ナーヴァス・ナイト(邦題:眠れぬ夜)」は、私にとって最愛最高のアメリカンロックアルバムとなった。イントロのメロディカに導かれるPVもゴキゲンな「アンド・ウィ・ダンスト(邦題:朝までダンス)」に始まり、マンドリンが軽やかに弾む「デイ・バイ・デイ」、オルガンを駆使したサイケレゲエ風「オール・ユー・ゾンビーズ」など全10曲、捨て曲なし。オールシングルカットOKなくらいの完成度。多様な楽器を操ってトラディショナル感覚のアメリカンロックを美しいメロディーで紡いでいる。
泥臭くならないのはシンセの多用によるのかと思うけど、これが80年代っぽさも醸し出していて何ともいえない。本作は全米で200万枚を売り上げ、ローリングストーン誌で最優秀新人ロックバンドにも選ばれた。かのライブ・エイドではアメリカのトップバッターとして登場。映像から伝わる実直な演奏っぷりが、今も微笑ましい。
あれは1987年11月。私は初来日コンサートを五反田ゆうぽうとで観ている。2階席の最前列からは、皆で横一列に並んでの熱演がよく見えた。「上を向いて歩こう」を日本語で歌っていたのが印象的だったな。そういえばその後日本語で歌ったシングルも発売していたっけ。
数年前に再始動、という記事以来バンドの噂は聞かなかった。今回久々に検索したら、公式サイトのトップページには、ステージ上のロブとエリックの素敵な笑顔があった。しかも2016年5月〜11月まで半年もツアーしてるじゃないの! 現役だ! 嬉しいなあ。確かカラオケには4曲入っていたはず。今もイントロだけで胸が高鳴る「朝までダンス」、次回は歌ってみようと思う。
2016.12.12
YouTube / TheHootersVEVO
YouTube / CyndiLauperVEVO
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