7月6日

変化は恐るるに足らず、ウィルソン姉妹が示した音楽への尊敬と愛

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photo:FANART.TV  

2012年、ケネディ・センター名誉賞の授賞式。受賞者はレッド・ツェッペリン。そのステージで名曲「天国への階段(Stairway to Heaven)」を演奏したのが、ハートのアンとナンシーのウィルソン姉妹だった。

1985年、ハートの「ホワット・アバウト・ラヴ」は、僕にとってちょっとした驚きだった。曲の後半でアン・ウィルソンが高まった感情を解放するかのように叫び出すと、背骨を何かが這い上がっていくような震えを感じた。

アンのヴォーカルは、中音域を自在に飛び回った。その歌声は高音域を駆使するアーティストとは明らかに一線を画していた。もっと深みがあり、そして本物だった。

80年代前半に人気が低迷していたハートは、ここから一気に巻き返しをはかる。「ホワット・アバウト・ラヴ」(全米10位)、「ネヴァー」(全米4位)、「ジーズ・ドリームス」(全米1位)、「ナッシン・アット・オール」(全米10位)と立て続けにヒットを飛ばし、その勢いに乗ってアルバム『ハート』も全米ナンバーワンを獲得する。

このアルバムでハートの音楽性は大きく変化した。元々はレッド・ツェッペリンに大きな影響を受けたハードロックバンドだったが、本作ではキャッチーなメロディーと厚みのあるシンセが特徴の中庸的なサウンドに舵を切っている。それは間違いなく売れることを意識しての決断だった。

後年、メンバーはこの変化に複雑な思いがあったことを吐露している。しかし、結果としてハートは変化することを選び、大きな成功を収めることができた。僕はそれでよかったと思う。アン・ウィルソンのヴォーカルを中心に据えている限り、ハートの音楽が退屈になることはないのだから。

80年代後半、ハートは高い人気を持続させた。『バッド・アニマルズ』(全米2位)、『ブリゲイド』(全米3位)とつづく2枚のアルバムも大ヒットを記録。シングル「アローン」は1987年のビルボード年間チャート第2位に輝いている。

時は流れ2012年、ケネディ・センター名誉賞の授賞式。レッド・ツェッペリンのメンバーが見つめる中、ステージにはアンとナンシーのウィルソン姉妹が立っていた。演奏するのは「天国への階段」。この夜のハイライトとなるべき名曲だ。

なんという情感だろうか。それは曲の本質を深く理解した堂々たるパフォーマンスだった。ドラムにはジェイソン・ボーナム、ストリングスとホーンセクション、大勢のコーラスを従え、この名曲がもつスケール感、無常感、慈しみと悲しみを、アンとナンシーは持ちうるすべての手札を使って表現してみせた。それがどれほど素晴らしいものだったかは、ツェッペリンのメンバー達の満足そうな表情が物語っていたように思う。

ロックが大衆音楽である以上、サウンドの変化を恐れるべきではない。同時に、サウンドからだけではわからないものがあることも、忘れないでいようと思う。

レッド・ツェッペリンの偉業を讃えた夜にウィルソン姉妹が示したのは、彼女たちの何も変わらない音楽への尊敬と愛だったのだ。

2017.09.06
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  YouTube / HeartVEVO


  YouTube / The Kennedy Center
 

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