2月12日

吉幾三「雪國」ラジオDJを凍り付かせた私の ”選曲家” 体験

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吉幾三のシングル「雪国」がザ・ベストテンで1位を記録した日
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初めての選曲家体験、FM局の「大学生が作るラジオ番組」


88年か、89年か。おそらく、私がハタチくらいのときだったと思う。地方の大学生だったころだ。音楽は好きだったけど、CDを買ったりライブに行ったりするお金もなかったので、FMラジオで音ネタを拾う日々。FM情報誌を買い込んでエアチェック三昧という、地味な暮らしをしていた。バブルな時代の女子大生だったのに。

そんなある日のこと、地元の FM局で「大学生が作るラジオ番組」的な企画をするという話を聞いた。そこで DJ と選曲をやってくれる大学生を募集するとのこと。

私は色めき立った。人前で作文を読むだけで震えて腰が抜けてしまうほどのあがり症だから、DJなんてもってのほかだけど、「選曲だったら… できる! 私の趣味の良さを、リスナーどもに伝えたい!(えっ)」

若いということは恐ろしい。怖いもの知らずだった私は、自分流のプレイリストを作ってFMラジオ局に応募した。それからしばらくたったある日、電話が鳴った。

放送は2月でテーマは「雪」選んだ曲は吉幾三「雪國」


「FM●●です。ぜひ当局の番組で選曲をしていただきたく…」

キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
これからは私の時代かもしんない!(ええっ)

根拠のない自信に満ちあふれていた私は、受話器を握りしめながらかなりニヤニヤしていたと思う。

「放送予定は2月なんですが、テーマは “雪” でお願いしますね」

はーい! といい返事をしたものの、「雪」がテーマの楽曲についていろいろ考えてみても、一向に浮かんでこない。というのは、雪がどうこういう曲っていうのは、9割くらいがクリスマスの歌だから。2月にクリスマスの曲なんて、ねえ…。

散々悩んだ末に選んだ曲は、洋楽と歌謡曲と演歌のチャンポンという結果となった。演歌って? そう、私は吉幾三の「雪國」を選んだのである。これはこの1、2年前に大ヒットしていて、私も実は好きだったのだ。

日本語ラップの始祖、幅広い音楽性を持った吉幾三


吉幾三といえば「俺はぜったい!プレスリー」だとか、「俺ら東京さ行ぐだ」だとか、コミックソングのイメージが強く、私にとっては “面白いおじさん” 枠だった。だから、“いかにも演歌!” という感じの「雪國」を聴いたときは驚いたのだけど、これまで私が抱いていた演歌のイメージとは少し違うように思えた。あまり湿っぽくないし「♪ そばにいて 少しでも 話を聞いて」というような歌詞や、少しポップス寄りのサウンドが、十代の私にも響いたのだ。

余談だが、「雪國」は温泉旅行の宴会で泥酔して即興で作った曲だと、近年のインタビューで吉幾三本人が語っている。出だしが「♪ 好きよ あなた~」ではなく「♪ だめよ そこは~」と下ネタ満載だったそうだ。それがミリオンセラーの大ヒットになるのだから、人生ってわからない。

彼の音楽性は実に幅広く、最近でも「TSUGARU」という津軽弁ラップの楽曲をリリースしている。さすが “日本語ラップの始祖” だ。

DJは苦笑… え? 何が悪かった? 演歌だから?


2月。放送日が決まり、FM情報誌の番組表にも私の本名が出てしまい、大学の友だちにも「きゃ~、すごいね~♡」と言われ、すっかりいい気になっていた。その番組は土曜の夜、午前2時からの放送だったので、がんばって起きてラジカセの前で鎮座して聴いていた。

確かラインナップは、自分の好きな曲ばかり。ケイト・ブッシュや、バングルス、リック・アストリー、アニメーション『スノーマン』の「ウォーキング・イン・ジ・エア」に加えて、山口百恵「白い約束」、菊池桃子「雪にかいた LOVE LETTER」、渡辺美奈代「雪の帰り道」(これは名曲!)、そして吉幾三。

DJ はよその大学の男性だったと記憶しているが、私の選曲について、彼がこう言って苦笑したのを今でも忘れない。

「イヤァ、なかなか個性的な選曲で…」

個性的…、100%の褒め言葉では… ない? 顔面紅潮。根拠のない自信が崩れた、その瞬間だった。

「え? 何が悪かった?「雪國」が演歌だから? いい曲なのに!」

洋楽と歌謡曲と演歌をごちゃまぜにしたプレイリストを作って「ジャンルレスな選曲ができる私ってセンスいい!」と酔っていたけれど、それでも調和が取れていないとどうしようもないということに気付いたのだ。ケイト・ブッシュと渡辺美奈代と吉幾三をいっぺんに突きつけられて、DJさんはさぞコメントに困ったことだろう。

最大の落とし穴は別にあった。これ、12月の歌だった…


苦笑したからってバカにされたわけでもディスられたわけでもないのに、とにかく私は恥ずかしくて恥ずかしくて、以来30年あまり、この選曲家体験をなかったことにして生きてきた。だけど、そんなん誰も覚えてないし、30年寝かせたらいいネタになったんで、ここで使わせていただく(ケロリ)。

いい経験になったし、今ならもっと音楽の知識もあるだろうから、機会があればまたやってみてもいいかな、なんて思ったりもして。待てよ? もしかして、DJさんがあのとき困ったふうだったのは…

そうそう、放送は2月だから、クリスマスに関係ない「雪」っぽい曲を丹念に選んだつもりだったのに、結構クリスマスソングが混じってて。それから、最大の落とし穴は「雪國」だった。クリスマスソングではなかったけれど…

 暦はもう少しで 今年も終わりですね

これ、12月の歌だった…

2020.02.12
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カタリベ
1968年生まれ
Polco/モコヲ
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