LEDの電飾が並木に巻かれ始めると、いよいよクリスマスなんだなとちょっとばかりナーバスになった。正直、この時期一人で家にいるのはちょっと寂しい。幾分、気は重いが仕方なく外の空気を吸いに行こうと決心して行きつけの店で一杯やるのだが、街の空気が浮ついていてどうにも落ち着かない。
そしてクリスマス本番になり、寒空の中、並木道を覆い尽くすイルミーネーションを眺めている幸せそうな男女の姿を見かけるようになる。そういう暖かな風景を幾つも通り過ぎるうちに(ああ、オレは一体何をやっているんだろう…と)心の中で呟いている。そう、クリスマスに幸せな時間を過ごした過去があれば余計に滅入ってしまう。そんな夜もある。今回はクリスマスだからこその “ぼっちソング” をピックアップ!
まず一曲目は、ハイ・ファイ・セットの「ひとりぼっちのクリスマス」。この曲が発表された1978年は、キャンディーズ、フォーリーブスが解散し、南沙織が引退。そして、サザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でデビューしている。これは一つの時代が終わり、80年代への新しい息吹が生まれたそんな時代の失恋ソング。
♪この冬、初めて降る白い雪がきれいね。
ラジオからは静かなクリスマスソング。
そんな歌い出しから、彼女は過去に愛した恋人への想いを心に浮かべていきます。そして、窓辺にもたれてさよならとつぶやく。涙も嘆きも白い雪に全てうずめてしまおう…。心の中で硬くなったわだかまりを優しく溶かして、悲しさも思い出に変えてしまえれば、過去への執着を捨てて新しい一歩を踏み出せる。
語りかけるような山本潤子さんのアダルトな歌声には、大人の女性だからこその説得力を感じます。この曲を聴いていると、恋人との別れを心穏やかに語れるような大人に自分もなれるのではないかと思えてきます。真っ白なボタン雪が手の平の上で消えていくように、心の中のわだかまりを優しく溶かしてくれるような気がしませんか?
さて、もう一曲。今度は男性の想いを綴った曲、浜田省吾さんの「ひとりぼっちのクリスマス・イブ」です。バブル前夜の1985年にリリース。不器用な男に有りがちな失恋を歌った青春ソング。ストーリー仕立ての歌詞についつい感情移入してしまう。
♪行くなと引き止めれば、今頃二人高速を都心へと走っていたはず。
~ひとりぼっちのクリスマスイブ。凍えそうなサイレントナイト。
心のド真ん中に突き刺さるストレートなワード。シカゴの「素直になれなくて」(1982年)の浜省バージョンって感じです。こういう時の男って、どうして素直になれないんだろうなぁ~ っていつも思います。言わなければならない、そのたった一言が言えないために大切なものを簡単に失ってしまう。
そのくせ、彼女への想いは断ち切れないまま、心に小さな傷をいつまでも抱えてしまう。それなら、いっそのことピーター・セテラのように上手に謝ってしまおうよ。さあ、クリスマスにひとりの “ぼっち男” は集合~!今から浜省を聴きながらオレと一緒に反省会だ!!!
ひとりぼっちのクリスマス / ハイ・ファイ・セット
作詞:竜真知子
作曲:木戸やすひろ
編曲:新川 博
発売日:1978年(昭和53年)11月20日
アルバム『Coming Up』に収録
MIDNIGHT FLIGHT -ひとりぼっちのクリスマス・イブ- / 浜田省吾
作詞・作曲:浜田省吾
編曲:板倉雅一
発売日:1985年(昭和60年)11月15日
ミニアルバム『CLUB SNOWBOUND』に収録
2016.12.25
YouTube / 小林信吾
Dailymotion / Erland Orvel
YouTube / MrMoonligtt
Information