2023年 12月20日

桑田佳祐と松任谷由実のクリスマスコラボ!メリクリショーから紅白歌合戦を経てついに実現

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桑田佳祐&松任谷由実のシングル「Kissin' Christmas(クリスマスだからじゃない)2023」
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詞はユーミン、曲は桑田が担当! “クリスマスだからじゃない 2023”


「エ、あの曲をリメイクするの? 桑田佳祐が?」と驚いてしまった。そう、12月20日にCDがリリースされる桑田佳祐&松任谷由実「Kissin’ Christmas(クリスマスだからじゃない)2023」のことである。先行で11月27日に配信が始まっているので、すでにお聴きになった方も多いだろう。収益の一部が「セーブ・ザ・チルドレン」に寄付されるチャリティーソングでもある。

もともとこの曲は、桑田自身が企画し、1986年、87年に日本テレビ系で放送された音楽特番『Merry X'mas Show』のために作られた。詞はユーミン、曲は桑田が担当。番組内のラストに出演者全員で歌ったこの曲は貴重な2人のコラボ曲だが、番組内で「レコードにはしない」と宣言した桑田の意向どおり、当時リリースはされなかった。出せば確実にヒットしただろうが、「あの曲は、あの場限りのもの」ということ。実に桑田らしい。

しかし番組終了後、ラジオや有線放送へのリクエストが相次いだため、放送用に、桑田が1人で歌ったプロモ盤が各局へ配布された。こちらのヴァージョンはのちに、桑田のベスト盤『I LOVE YOU -now & forever-』(2012年)に収録されている。なので “初CD化” ではないのだが、桑田とユーミンが2人だけで歌ったヴァージョンはこれまで存在せず、今回が “初デュエット” になる。2人の共作曲が正式にシングルとしてリリースされるのもこれが初めてだ。



セルフリメイクを一切やってこなかった桑田が今回のリリースに至る経緯とは?


ところで、この曲がリメイクされると聞いて、私が「エ?」と驚いたのはなぜか? 桑田佳祐は、かねてから「世に出した作品で、再録したい曲は1つもない」と公言しているミュージシャンだからだ。どの曲も、その時点で全霊を振り絞り、ベストのものを創ってきたという自負があるからで、ゆえにセルフリメイクの類いは一切やってこなかった。その桑田が、今回に限って自分の主義を曲げた理由はなんだろうか?

遡ること5年前、「平成最後の紅白」となった2018年の紅白歌合戦で桑田とユーミンは共演。この年はサザンオールスターズが大トリを務め、「希望の轍」と「勝手にシンドバッド」の2曲を演奏した。桑田が「勝手に…」を歌っている途中で、特別出演の北島三郎に「サブちゃん!」と声を掛け、それをきっかけに出演者が全員ステージへ。

このとき、ユーミンが踊りながら桑田に近付くと、桑田はユーミンを抱き寄せ「♪ラララララ〜 ユーミンさ〜ん」。ユーミンも「♪ラララララ〜 桑田く〜ん」。もう完全にカラオケ宴会のノリだ(笑)。ヴォルテージは最高潮に達し、ユーミンが桑田の頬にキスしたシーンは、紅白の歴史に残る名場面だった。あのキスは「あなたたちが第一線でずっと頑張ってきたから、私も頑張れた。お互い、ここまでよくやってきたよね!」……そんな意味だったと思う。トップを行く者の苦悩は、トップランナーにしか理解できないものだから。

ⓒ NHK


ユーミン50周年は、まさに絶好のタイミング


そして2023年。サザンはデビュー45周年を迎え、ユーミンは昨年(2022年)がデビュー50周年。今年も記念のツアーを行っていた。ユーミンはかねてから桑田に「何かコラボをしませんか?」とオファーしていたそうだ。紅白からの流れもあり、その思いにいつか応えたいと考えていた桑田。ユーミン50周年は、まさに絶好のタイミングだった。ただしどちらも周年で多忙を極めているので、新曲を書くことはできない。「じゃあ、あの曲をリメイクしたら?」ということで、37年前のコラボ曲「Kissin’ Christmas」が再び陽の目を見たわけだ。

さっそく、先行で配信された2023年版「Kissin’ Christmas」を聴いてみた。正直なところ、「37年前の2人にこの曲をデュエットしてほしかったなぁ」という気持ちも湧いたけれど、今の2人だからこそ、桑田が「恋人がサンタクロース」「ルージュの伝言」、ユーミンが「波乗りジョニー」の一節を口ずさむなんてことができたのだ。この “遊びの精神” こそ、今回のコラボのキモである。だって「♪もういくつ寝るとお正月〜」なんて歌ってるんだよ、桑田佳祐と松任谷由実が! まるで『ナイアガラ・カレンダー』の大瀧詠一ではないか。

そもそも、この曲を生んだ『Merry X'mas Show』自体が、遊びの精神に溢れまくった番組だった。桑田の発案で始まった1986年の第1弾は、明石家さんまが司会。サザンは当時活動休止中で、桑田は「KUWATA BAND」の一員として出演。ユーミン、泉谷しげる、アン・ルイス、中村雅俊、吉川晃司、ARB、鮎川誠、トミー・スナイダー(ゴダイゴ)、小林克也……言っとくがこれ、「生放送」である。すごくね?

さらにVTRで、当時人気絶頂のチェッカーズや、忌野清志郎、THE ALFEE、鈴木雅之、BO∅WY、SUE CREAM SUE(米米CLUBの女性ダンサー陣)、山下洋輔(!)、DEKAPANこと依田稔(アン・ルイスバンド / PINXのギタリスト)、スーパーエキセントリックシアター(三宅裕司、小倉久寛ほか)も登場。総合演出は『タモリ倶楽部』でおなじみ、フルハウス(現:ハウフルス)の菅原正豊が担当。フルハウスはこの番組の制作費がかさんだため、倒産寸前の状況に追い込まれたという逸話がある。それも肯ける豪華メンバーだが、本当に集まってしまったのがすごい。それもこれも、桑田が音頭を取ったからである。



最後に出演者全員で歌うのが「Kissin’ Christmas」


忘れもしない、イヴの夜に放送されたこの番組を、私は下宿先の部屋で1人で観ていた(第2弾も)。当時ビデオデッキなんて高価なモノは持っていなかったので、リアルタイムで観るしかなかったのだ。そしたら、いきなりビートルズの「カム・トゥゲザー」を出演者全員でリレー熱唱! それが出演者紹介になっていて、もうノッケからグイグイ引き込まれてしまった。

本編もすごい。T・レックスの「テレグラム・サム」を18人編成のバンド(ヴォーカル4人、ギタリスト5人!)で演ってみたり、山下洋輔が弾くスタインウェイのピアノに桑田と清志郎がバケツで水をぶっかけ合ったり、もうやりたい放題。このへんの遊びっぷりは、クレージーキャッツが出演していた『シャボン玉ホリデー』を彷彿とさせる演出だ。

中でも傑作だったのは、「BEACH FIVE」なるユニットが歌う「長崎は今日も雨だった」である。そう、内山田洋とクール・ファイブ+ビーチ・ボーイズのマッシュアップだ(笑)。ボーカルは桑田で、前川清ふうに熱唱。バックコーラスは吉川晃司・中村雅俊・泉谷しげる・高見沢俊彦(←ギターも担当)。死ぬほど笑ったけど、今思えばそれは歌とコーラスがガチで上手かったからだ。「BEACH FIVE」、マジで再結成してほしい。

その他にも、ロス・インディオス&シルヴィアの「別れても好きな人」とサンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」をマッシュアップしてみたり、アン・ルイス+ユーミン+原由子が、キャンディーズ「年下の男の子」をザ・コーデッツ風にカバーしてみたり……「ロール・オーバー・ベートーヴェン」と題して、清志郎がオーケストラをバックに「第九」を歌うのとか、シャレ効いてるよなぁ。こういうのが本来の「音楽バラエティ」じゃないの?

で、そんな流れの中で、最後に出演者全員で歌うのが「Kissin’ Christmas」である。もちろんこれも “生” だ。全員、暮れは多忙を極めるこのメンバーで事前にリハ—サルなんかできるわけもなく、生出演のメンバーたちはVTR中にリハを重ねていたそうだ。どうよ、この情熱? 日本経済がバブルに向かって一直線だった頃とはいえ、本当によくこんな番組が実現したと思う。私はこの年のクリスマス、この番組のおかげで「ぼっち」でも全然寂しくなかった。そして、桑田が先頭に立ってこの番組をプロデュースした理由は、そのまま「Kissin’ Christmas」をリメイクした理由と重なるのだ。



ウクライナやパレスチナで起こっていることに対して、ミュージシャンである自分たちはどうアクションすべきなのか


今回、2023年版「Kissin’ Christmas」をリリースするにあたって、桑田はこんなメッセージを寄せている。(以下引用、原文ママ)

ユーミンさんが書かれたこの楽曲の歌詞は、オリジナル制作当時のものと基本的には変わりませんが、今改めて聴くと、現代を生きる我々の心にも響く言葉が詰まっています。多くの言葉を尽くすよりも、我々 "音楽人" に出来ることはただ、歌を作り届けることに限られます。世の中全体に「仲良くしようよ!!」というメッセージを届けるべく、まずは私とユーミンさんが心を一つに、三十数年の時を超えてこの曲を歌わせていただきました。



桑田によると、ユーミンと久しぶりにゆっくり会話する中で、世界のさまざまな出来事に対する憂いや、次の世代に向けて、今の自分たちに何ができるのか? といった話になったという。現在、ウクライナやパレスチナで起こっていることに対して、ミュージシャンである自分たちはどうアクションすべきなのか?

5年前の紅白で、桑田がサブちゃんをステージに引っ張り出し、ユーミンを抱き寄せたのは、シンプルに「みんなで仲良く、楽しく歌って年を越そうぜ!」……これに尽きる。人と人との間にある高い垣根を、歌は一瞬で取り払うことができるからだ。

実際に戦争をしている当事者たちに「仲良くしようよ!!」と言ったところで聞き入れてはもらえないだろうが、世の中のあらゆる所で断絶と諍いが起こっている今、影響力のあるミュージシャンが「まずは仲良くしようよ!!」というメッセージを発することって、とっても大事なことだと思う。2人がお互いの持ち歌を交換して口ずさんだ意味は、まさにそこにある。

最後に、ユーミンが寄せたメッセージを紹介しておこう(原文ママ)。

Kissin' Christmas、大好きな曲。そう言える幸せ。~今年の出来事にすべてきみがいる~ 今までの自分の詞の中でも大好きなこのフレーズは、あの素晴らしいメロディーとリズムが運んで来てくれました。


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  YouTube / 桑田佳祐


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カタリベ
1967年生まれ
チャッピー加藤
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