3月6日

青春映画の傑作「ラ・ブーム」ソフィー・マルソーのかけがえのない瑞々しさ!

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1982年に一大ブームを巻き起こした「ラ・ブーム」


青春というジャンルは時として作品の域を飛び越え、演者自身の成長や刹那的な輝きを生々しく捉えることがある。本国フランスでのヒットに続き、日本でも今からちょうど40年前の1982年に公開されて一大ブームを巻き起こした『ラ・ブーム』もその代表的な1本だと言えるだろう。

ソフィー・マルソー演じる主人公のヴィックは、恋に恋する13歳の中学生。数百人という候補の中から選ばれたソフィもまた、役柄と同じ13歳だった。ストーリーは単純明快だ。初めて参加したブーム(パーティのようなもの)で惹かれ合ったマチューとの淡い恋模様を中心としながら、14歳の誕生日を迎えるまでのヴィックの葛藤が瑞々しく描かれる。

なぜマチューに恋したのか? なぜマチューだけが特別だったのか? この作品では、そうした細かい心の機微に触れることはほとんどない。まるで説明するのは野暮だと言わんばかりの大胆な省略だ。

同級生たちが「アメリカン」と称するオールディーズでノリよく踊る中、マチューは背後からヴィックの耳にそっとヘッドホンをあてる。流れるのはリチャード・サンダーソンの「愛のファンタジー(Reality)」。振り向いたヴィックの恍惚とした表情が全てを物語る。劇的に幕を開けるふたりだけのチークタイム。伏線も脈絡もないが、十代の恋愛ってこういうものだ。衝動的で、盲目的。

この日からヴィックの頭の中はマチューとの恋でいっぱいになる。学業が疎かになり、両親から嗜められても聞く耳など持つはずもなく。作中、ヴィックの恋を手助けする曾祖母が口にする「恋する少女の心はバラ色ね」という台詞がヴィックの心情を端的に表している。いい言葉だ。



ソフィー・マルソーの眩いばかりの存在感、青春映画の傑作


本作を記録的なヒットに導き、青春映画の傑作たらしめた要因は、なんといってもソフィー・マルソーの眩いばかりの存在感にある。公開当時は世界中の男子たちがこのブロンズの瞳の愛くるしい少女に心奪われ、特に日本では爆発的な支持を集めたそうだ。どこか東洋人的な顔立ちが琴線に触れたのだろうか。

スター然とした圧倒的な存在感というのではなく、むしろどこにでもいそうな素朴な女の子なのだが、ちょっとした仕草が可愛らしく、ついついその姿を追いかけずにはいられない。昔も今も「クラスメイトにいそう」というコンセプトに男は弱いのだ。

物語の中心にソフィーを配置し、ソフィーの表情や動作を余すところなく捉えた作風は、さながらアイドル映画的なニュアンスも漂う。「セーラー服と機関銃」が薬師丸ひろ子のための映画であるように、「時をかける少女」が原田知世のための映画であるように、『ラ・ブーム』もまたソフィー・マルソーのための映画であると言い切って差し支えないだろう。

ストーリーの中で念願のブームに参加することが決まり、喜びはしゃいだのも束の間、「着ていく服がない!」と青ざめるシーンなどは、古今東西いつの時代にも共通する女子たちの悩みをコミカルに描いた名シーンだ。これを等身大13歳のソフィーが演じるから、ウソっぽさがなく、微笑ましい。

もちろん13歳なら誰でもいいわけではなく、ソフィーが「ボーイッシュ」と「乙女」という、相反する要素を併せ持った稀有な逸材だからこそ魅力的に映るのだ。そして本作は、そのアイドル映画的な作風によって、ソフィーのかけがえのない瑞々しさをフィルムに収めることに成功している。

15歳で撮った続編『ラ・ブーム2』では早くもソフィーには大人びた雰囲気が漂っているから、本作を役柄と同じ13歳という、背伸びしつつも子供っぽさの抜けない年齢で撮れたことは奇跡的なタイミングだったといえよう。



ティーンエイジャーたちの成長譚、「ラ・ブーム」鮮やかなエンディング


本作の特徴でもある説明描写の省略は、ラストシーンでも存分に発揮される。40年も前の映画なのでネタバレ全開で書かせてもらうが、あのシーンには戸惑った人も多かったに違いない。

マチューとよりを戻してハッピーエンドに向かうと思った矢先、唐突に現れた美少年をハッとしたような表情で見つめるヴィック。観客は「誰…?」「どこかで出てきたっけ?」と必死で記憶を遡るも、どう考えたって初めて見る顔だ。しかしながら、疑問はすぐに解けることになる。マチューから離れ、まるで引き寄せられるかのように少年の元に歩み寄るヴィック。その目は完全にハートマークになっており、チークを踊る表情は恍惚そのもの。―― こうしてヴィックは新しい恋に目覚め、大人の階段をひとつ登ったのでした―― という、鮮やかなエンディングである。

ここで観客は理解するのだ。本作はヴィックとマチューの甘じょっぱいラブストーリーなんかではなく、恋に恋する乙女・ヴィックを軸に据えたティーンエイジャーたちの成長譚であることを。そしてヴィックが新しい “彼” の元に歩み寄るとき、マチューもまた別の女の子の誘いに平気な顔して付いていく様子が映し出されている。

あれほど愛し合った二人の、あまりにもあっけない終焉。だが、この刹那的な別れと新しい恋の芽生えこそが青春の輝きそのものであり、こうして恋を積み重ねながら彼ら、彼女らは大人になっていくのである。そう、十代の恋には伏線も脈絡もいらないのだ。

それにしても、フランスの十代の早熟さには恐れ入った。生意気にもチークダンスを踊り、タバコをふかし、身体を寄せ合いながらキスに戯れる子供たち。しかも驚くなかれ、作中でも描かれたようにブームは決して不良たちの溜まり場ではなく、親公認の社交場なのだ。日本との文化の違いに戦慄しつつ、自分が13歳のときはプロ野球チップスの選手カードを集めて喜んでいたなぁと、あまりのレベル差に絶望しながら、「愛のファンタジー」が流れるエンドロールを眺めていたのだった。

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2022.12.22
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カタリベ
1985年生まれ
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