2004年 9月21日

哀愁と祝祭が交差する【秋の洋楽10選】アース・ウインド&ファイアーからグリーン・デイまで

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連載【教養としてのポップミュージック】vol.23 / 哀愁と祝祭が交差する【秋の洋楽10選】アース・ウインド&ファイアーからグリーン・デイまで

憂鬱と哀愁をまとった秋のプレイリスト


さて、今回のテーマは《秋ソング》である。秋と言えば、日本では昔から●●の秋と呼ばれることが多い。例えば、食欲の秋、紅葉の秋、読書の秋、実りの秋、芸術の秋、スポーツの秋、睡眠の秋……といった具合で、春夏冬と比べても突出して多い印象だ。おそらく、秋は涼しく過ごしやすく、何事にも集中しやすいうえ、収穫や行楽にも適した季節だからなのだろう。いずれにしても、非常にポジティブな表現である。

一方で、秋には憂鬱や哀愁といった言葉が当てはまるような、どこか物悲しい、どちらかと言えばネガティブなイメージもある。秋は夏から冬へと移り変わる時季でもある。日照時間はどんどん短くなり、肌を刺すような暑さは肌寒さへと変わり、青々としていた木々も紅葉し、やがて葉を落としていく。そうした変化が、どこか物悲しい感覚を呼び起こすのかもしれない。

このように、秋という季節には、このように、秋という季節には、相反する感情が同居するような、どこか曖昧なイメージがあるのではないかと思う。今回はそんな感覚を意識しつつ、秋のプレイリストを作成してみたので、ぜひ、皆さんにも聴いていただきたい。

【第10位】ラーズ「ゼア・シー・ゴーズ」(1988年)
リバプールが生んだギターポップバンドの代表曲で1988年に発表。1990年に再発された最初で最後のアルバム『ラーズ』に収録された。大ヒットはしなかったが、映画『ハネムーンは命がけ』(So I Married An Axe Murderer)『ファミリー・ゲーム / 双子の天使』(The Parent Trap)や、ドラマ『ギルモア・ガールズ』など、多くの映像作品に起用されている。欧米では、9月に始まる新学期を思わせるような、どこか懐かしい季節感を感じる人もいるようだが、とにかく秋の気配を色濃く纏った一曲だ。



【第9位】マジー・スター「フェイド・イントゥ・ユー」(1993年)
カリフォルニアを拠点とした男女デュオの代表曲で、1993年リリースのアルバム『妖しき夜』(So Tonight That I Might See)に収録。フォーク風のオルタナティブロックとでも言えばよいだろうか。それほど大きなヒットにはならなかったものの、ドラマ『イエロージャケッツ』『ヴァージンリバー』で劇中歌として使用されるなど、今もなお愛され続けている。特定の季節を題材にした楽曲ではないが、ホープ・サンドヴァルの気だるく哀愁を帯びたボーカルが、どことなく秋を感じさせる。



【第8位】ニール・ダイアモンド「セプテンバー・モーン」(1979年)
米国の国民的シンガーソングライターが歌う名バラードで、フランス人歌手で作曲家のジルベール・ベコーとの共作。1979年リリースのアルバム『セプテンバー・モーン』に収録されている。オーケストラをバックに、ややハスキーな声でかつての男女のときめきを歌う様は、秋の情景に深く溶け込んでいる。それに、セプテンバー・モーンという名前には同名のバラやカクテルも存在するように、どこかロマンチックな響きがあるのかもしれない。



【第7位】ノラ・ジョーンズ「ドント・ノー・ホワイ」(2002年)
ニューヨーク生まれ、テキサス育ちのジャズシンガー兼ピアニスト。巨匠アリフ・マーディンがプロデュースしたデビューアルバム『ノラ・ジョーンズ』(Come Away With Me)からの第1弾シングル。このアルバムは全米・全英アルバムチャート(Billboard 200 / Official Albums Chart Top 100)でNo.1を獲得し、2003年のグラミー賞で彼女は主要4部門を含む全8部門を受賞した。そんなノラの入門曲とも言えるこの曲は、彼女のハスキーでスモーキーな歌声が、秋の温もりと哀愁を併せ持つムードを創り出している。



【第6位】ザ・キンクス「オータム・オルマナック」(1967年)
UKロック史上最も過小評価されたバンドと評されることもあるザ・キンクスの秋の歳時記。秋ソングにありがちな憂いを帯びた雰囲気があまり感じられない、比較的アップテンポな楽曲。美味しい食べ物、素敵な友人たち、そしてサッカー(英国ではフットボール)を楽しみにしている様子が歌われる一方、所々に自虐や皮肉が混じるのは、レイ・デイヴィスのロンドン出身者ならではのユーモアだろうか。個人的には、ロマンチックコメディの挿入歌にピッタリだと思う。



【第5位】ガンズ・アンド・ローゼズ「ノーヴェンバー・レイン」(1991年)
ロサンゼルスで結成された、米国を代表するロックバンドのひとつ。この8分57秒に及ぶ壮大なバラードは、1991年にリリースされて大ヒットしたアルバム『ユーズ・ユア・イリュージョンⅠ』に収録。2部構成のようになっていることから、バンド内で “レイラ・ソング” と呼ばれているらしい。愛の終わりとその痛みを描いた名曲だが、どの季節に聴いてもしっくりくるのではないだろうか。ミュージックビデオが、1990年代楽曲として初めてYouTubeで10億再生を突破した際にも大いに話題になった。



【第4位】アース・ウインド&ファイアー「セプテンバー」(1978年)
1969年にモーリス・ホワイトを中心にシカゴで結成されたR&B / ファンクバンド。有名な「9月21日の夜のことを覚えているかい?」という一節で始まるこの曲は1978年リリースのヒット曲で、まるで9月の公式テーマソングと呼べるような作品だ。愛に満ちた9月の記憶が、多幸感いっぱいに描かれていて、今回の10曲の中で間違いなく最もハッピーな曲だろう。誰もが笑顔になり、どんな集まりでも思わず踊り出したくなってしまうはずだ。



【第3位】テイラー・スウィフト「カーディガン」(2020年)
ペンシルベニア出身のシンガーソングライター。名前自体が世界最強のブランドであり、まさに時代のアイコンである。この曲は2020年にサプライズでリリースされたアルバム『フォークロア』に収録。気温が下がってきた時に、お気に入りのカーディガンに袖を通すような、柔らかくてどこか懐かしい心地良さを感じさせてくれる。パンデミックの最中に制作されたミュージックビデオは、医療検査官の指導の下で全員マスク着用、ソーシャルディスタンスを守り、彼女自身も自分でヘアメイク、スタイリングを行って撮影したのだそうだ。



【第2位】ニール・ヤング「ハーヴェスト・ムーン」(1992年)
トロント生まれのシンガーソングライター、ニール・ヤングの19枚目のスタジオアルバム『ハーヴェスト・ムーン』からのファーストシングル。妻へのラブソングとして書かれたこの曲は、聴く人が心地よく眠りに落ちてしまうかのように、メロディがゆったりと流れている。収穫月(ハーヴェスト・ムーン)の光の下で踊る姿を描いた歌詞のせいだろうか、映画『食べて、祈って、恋をして』(Eat, Pray, Love)や『クワイエット・プレイス』では、劇中歌としてカップルがダンスを踊る場面で使われている。リンダ・ロンシュタットがバックボーカルとして参加。



【第1位】 グリーン・デイ「ウェイク・ミー・アップ・ホウェン・セプテンバー・エンズ」(2004年)
カリフォルニア出身のパンクロックバンドの大ヒットバラード。“9月が終わったら起こしてくれ” というタイトルから、毎年9月になるとソーシャルメディアでネタにされることが多い。2004年に全米・全英アルバムチャートで首位を獲得し、パンクオペラとして名高い『アメリカン・イディオット』に収録。リードボーカルのビリー・ジョー・アームストロングの父親が亡くなった後に書かれたこの曲は、9月が早く過ぎ去ってほしいと願うような悲しい内容だが、秋のプレイリストの定番である。涙なしには観られないミュージックビデオも秀逸だ。



秋には華やかで賑やかなイベントが世界中で行われている


こうやって10作品を並べてみると、欧米のアーティストたちが描く秋のイメージが、人生の大半を日本で過ごした僕のような人間にも通じるところがあることに気づく。これも、ひとつの発見かもしれない。楽しそうでもあり、物悲しくもあり……。

一方で、世界に目を向けると、秋には華やかで賑やかなイベントも数多く行われている。例えば、ミュンヘン(ドイツ)発祥のビール祭り『オクトーバーフェスト』、欧米を中心に世界各地で10月31日に行われる『ハロウィン』、メキシコで11月1~2日に行われる『死者の日(Día de Muertos)』、米国では11月の第4木曜日、カナダでは10月の第2月曜日に行われる『感謝祭(Thanksgiving)』などである。

つまり、秋というのは、ひとりでいるとしみじみしてしまいがちだが、みんなで集まった時には大いに盛り上がる……。そんな二面性を持った季節なんじゃないかと思う。だから、これからの1〜2ヵ月は、そういった季節の機微みたいなものをじっくり味わいたいものである。

短くなっていく秋は、ポップミュージックをどう変えるのか


ところで、2023年7月27日、国連事務総長のアントニオ・グテーレスは、ニューヨークの国連本部で行われた記者会見で “地球温暖化(Global Warming)の時代は終わり、地球沸騰化(Global Boiling)の時代が到来した” と発言した。

もちろん、地球沸騰化は科学用語ではなく、気候危機の深刻さを強く訴えるための表現だろう。要は各国に対し、再生可能エネルギーへの移行など、気候変動対策の加速を求めたということだ。いずれにせよ、日本では夏の暑さが長期化し、春や秋を短く感じる年が増えている。そして、こうした季節感の変化は、ポピュラー音楽の世界にも大きな影響を及ぼしかねない。

なぜかと言うと、北米、西欧、東アジアをはじめとするポピュラー音楽の主要市場では、春夏秋冬それぞれの季節感を表現した作品が数多く生み出されてきたからだ。もし、その季節の境目が今より曖昧になっていけば、音楽の中で描かれる季節感も少しずつ変わっていくのかもしれない。だからこそ、今ある秋という季節の機微を、心ゆくまで味わっておきたいと思うのだ。

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