「玉置浩二の音楽世界」第4弾がリリース
またまたまた、である。現在、ドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)の主題歌になった新曲「ファンファーレ」が話題の玉置浩二。その玉置が “作曲家” として他のアーティストへ提供した曲のみで構成する2枚組シリーズの第4弾『玉置浩二の音楽世界Ⅳ』(以下:Ⅳ)が12月10日に発売された。
昨年(2024年)暮れに第1弾『玉置浩二の音楽世界』が出て、今年(2025年)4月に同タイトルの『Ⅱ』、8月に『Ⅲ』がリリース。『Ⅲ』が出たとき “まだまだ他にも名曲があるよな” とは思ったが、こうして本当に『Ⅳ』が出てみると “すげぇな、玉置浩二” と思わずにはいられない。
この『玉置浩二の音楽世界』シリーズは、玉置が他者へ提供した曲を集めており、そんな2枚組のアルバムが短いスパンで4作も出たという事実。おそらく当初からシリーズ化は予定されていたのだろうが、反響がなければ続編は出ない。“玉置浩二が書いた曲なら間違いがないから、とにかく聴きたい” という層が一定数いるということだ。
そして、1曲も駄曲がないことと、アイドルから演歌歌手まで、提供したアーティストの幅の広さにまた驚く。ジャンルを問わず “玉置さんに曲を書いてもらいたい” という歌い手がそれだけいる証拠だ。そして提供された歌手は、その曲を全霊を込めて、大切に歌う。そりゃ聴き応えがありますよ。来年『Ⅴ』『Ⅵ』『Ⅶ』が出ても私はまったく驚かない。エエ。
原田芳雄の歌声が強烈に心に沁みた「Bright Light, in the Sea」
今回も、世代もジャンルも幅広い全24曲を収録。ジャケットに玉置自身が描いた絵画が使用されているのも過去3作と同様で、天は同じ人物に二物も三物も与えるのだなぁ、と改めて思う。玉置とゆかりのある人物が執筆するライナーノーツは今回、糸井重里が執筆している。収録各曲についてまた細かく解説していくと超長文になってしまうので、今回はDISC1、DISC2から1曲ずつ、ぜひ聴いてもらいたい2曲に絞って紹介してみたい。
まずはDISC1から1曲。個人的には “元祖ヴィジュアル系ロッカー” 本田恭章の「ONE NIGHT HEAVEN」(1983年 / 作詞:松井五郎)や、田原俊彦「色男SEXY NIGHT」(1985年 / 作詞:森雪之丞)に触れたいのをグッと堪えて、5曲目に収録されている原田芳雄「Bright Light, in the Sea」(1983年 / 作詞:東海林良)をとにかく聴いてほしい。
個性派俳優として独特の味を醸し出していた原田は、シンガーとしても唯一無二の歌い手だった。この曲はシングル「ニューヨーク漂流」(作詞:阿木燿子、作曲:井上大輔)のB面曲で、相米慎二監督の名作『魚影の群れ』(1983年公開)のエンディングテーマである。大間のマグロ漁師を緒形拳、愛娘を夏目雅子、その恋人の若き漁師を佐藤浩市が演じ、海上での巨大マグロとの死闘や、3人の愛憎劇にはグイグイ引き込まれた。夏目雅子、美しかったなぁ…。
原田はこの映画に、役者としては出演していない。純粋に歌手としての参加で、エンドで流れる原田の歌声が強烈に心に沁みた。もう、この声だけで映画に “出演” しているといってもいい。そしてこの曲、男女デュエット曲である。女声はジャズボーカリストのアンリ菅野。この原田 × 菅野の掛け合いがまた絶品なのだ。特に後半のこの部分ーー
(女) 日の出を 静かに待つ海鳥
(男) おまえもいつか 恋に啼くのか
(女) そして 嘆きながら
(男女)今日に溺れる
Bright Light , in the Sea
人は誰も幻を追いかける…
映画のラストシーンが浮かんでくるけれど、メロディラインが実に美しく、また歌い手の感情が “映える” 構成になっている。玉置の作曲法が、楽器を弾きながら気の赴くままに作るスタイルなので、自ずと感情が乗っかったのかもしれないが、原田 × 菅野 × 玉置の座組はとってもエモい。
なお、映画の公開は1983年10月で、安全地帯がブレイクした4枚目のシングル「ワインレッドの心」をリリースしたのが同年11月。曲を書いた時点で玉置はまだ世間的には無名だった。映画を締めるエンディングテーマを玉置に任せた相米監督の慧眼には感服するほかない。

演歌界の大御所、五木ひろしに書き下ろした「求婚」
続いてDISC2からも1曲。こちらは冒頭から荻野目洋子「想い出には早すぎる」(1989年)、西田ひかる「幸せはきっと」(1992年)とアイドルに提供した秀曲が並ぶ。いずれも作詞は盟友・松井五郎。和久井映見「離れても」(1992年)は、和久井自身が作詞した貴重な1曲だ。
そんな中、ぜひ聴いていただきたいのが、五木ひろし「求婚」(1992年、作詞:松本隆)である。西田ひかるや和久井映見に曲を提供する一方で、同じ年に演歌界の大御所にも書き下ろす。この(いい意味での)節操のなさ、懐の広さは何なんだろう?
「求婚」は、五木が松本隆に全曲の作詞を依頼した意欲的なアルバム『五木』(1992年)に収録された曲。このアルバムの作曲家陣は、平井夏美、金子隆博、関口誠人、吉田拓郎、五木ひろし自身、そして玉置浩二というバラエティに富んだ顔ぶれになった。玉置は「街灯」「終着駅」「求婚」の3曲を提供。これがまたどれも凄まじい歌詞なのだ。
「街灯」は自分を捨てた不倫相手の家の前で女が自ら命を絶つ歌で、「終着駅」は浪費家の女に惚れて、株に手を出し破滅する男の歌。松本がこういうヘビーすぎる設定の詞を書いたのは、作曲が玉置だったから、というところも大きかったのではないか。この救いようのない歌詞も稀代のメロディメーカー・玉置の手にかかればきっと、五木が歌うにふさわしい “聴かせる曲” になるはず、という読みがあったはず。で、実際にそうなった。
「求婚」は、裏町の酒場で酔客相手に踊っている女性ダンサーに、口下手で不器用な男がプロポーズする歌だ。この男はおそらくその店で演奏しているトランペッターで、なんと商売道具のトランペットを売り払い「♪一緒に暮らそうよ どこか遠くの山に丸太小舎を建てて 二人きり暮らすのがいい」と強引に求婚。さらに「♪俺の子を産んでくれ」とド直球で迫る。「♪酔いどれを相手の踊り子などやめて 真面目に生きてみないか 汚れきった生命を 緑が綺麗にしてくれる」って、これ絶対嫌われるヤツじゃん(笑)。
松本隆が書いたとは思えない昭和でマッチョな歌詞だが、これはもちろんわかってやっている “お遊び”。松本はこの詞に玉置の曲が乗るとどうなるかを、作家的興味として試してみたかったのではないか。実際に聴いてみると、純粋すぎる男が精いっぱい、想いを振り絞って自分なりに愛を伝えている… マッチョどころか爽やかなラブソングに聴こえるから不思議だ。「♪汚れきった生命を 緑が綺麗にしてくれる」がスッと耳に入って来るのは、玉置が北海道出身というのもあるのかも。
DISC2の締めはKing & Prince「We Are Young」(2023年、作詞:いしわたり淳治)。五木ひろしからキンプリまで幅広く手掛け、かつ誰に書こうと自分の色を醸し出せる作曲家って、いったい何人いるだろうか? 今回も玉置の底知れぬ才能に触れることができるアルバムであり、心洗われる作品集だ。そして聴き終えると、今度は玉置の歌が聴きたくなる。
Information
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2025.12.13