レコードではなかなかお目にかかれない珍しい作品が続々配信
クラウンレコードからリリースされた昭和のレアな歌謡曲を復刻するアーカイブ・プロジェクト『昭和歌謡復刻シリーズ』その第2弾として昨年12月に解禁されたラインナップは、青山ミチ、緑川アコ、曾我町子ら、全42作品に及ぶ。第1弾に続き、レコードではなかなかお目にかかれない珍しい作品を聴くことができる。ぜひ、日本クラウンのYouTubeチャンネル
『昭和レトロ 歌謡秘宝館』をチェックしながら楽しんで欲しい。
1963年(昭和38年)に創立された日本クラウンは、国内のメジャーレーベルでは7番目にあたるレコード会社。母体のコロムビアから独立した経緯があり、小林旭、守屋浩、北島三郎、五月みどりといった移籍組も多い。美空ひばりにも移籍話はあったものの結局残留することとなり、新会社の設立をお祝いして1枚だけクラウンからシングルリリースしたのは有名な話。それが第1回発売の1枚目「関東春雨傘」(CW-1)だった。クラウンレコードの歴史は初っ端から興味深い。
17歳の青山ミチが歌う「情熱の波止場」
さて、昭和40〜50年代の作品に焦点をあてた、この『昭和レトロ 歌謡秘宝館』。今回はまず青山ミチから。ポリドール時代は「ヴァケイション」などの洋楽カバーや軽快なオリジナル・ポップスが中心だったが、クラウン移籍後はブルース系の歌謡曲が多くなる。その第1弾となったのが1966年12月リリースの「情熱の波止場」。大人っぽい曲調だが、まだ17歳というから驚きである。かの「ミッチー音頭」を歌っていた頃はまだ14歳だったのだ。
「淋しさでいっぱい」のカップリング曲「太陽と遊ぼう」、「俺のブルース」のカップリング「恋の芽ばえ」は明朗路線だが、他はだいたい湿り気たっぷりな大人向けの歌謡曲である。1968年の「叱らないで」は星野哲郎と小杉仁三のコンビが手がけたスマッシュヒット。三木たかし作曲による「泣く女」の絞り出すようなボーカルにも実力派歌手の片鱗が窺える。当時流行っていた森進一や青江三奈のブルース歌謡の影響も大きかっただろう。「おもちゃの女」のやさぐれ感も最高。
徹底して夜のイメージを歌ったブルースの女王、緑川アコ
各社競作となった「夢は夜ひらく」をクラウンで歌ったのが緑川アコ。青山ミチと同様にハーフで、スペイン人の父と日本人の母との間に生まれ、モデルをしていたという。これがデビュー曲となり、キングのバーブ佐竹やポリドールの園まりらの強豪と競い合って善戦した。イメージが決定づけられたことで、「カスバの女」や「星の流れに」といった過去の流行歌をカバーすることになる。徹底して夜のイメージを歌い、クラウンにおけるブルースの女王の呼び名が相応しい。
今回最も注目すべき1曲は曾我町子「謎の女B」だろう。渚ようこやキノコホテルもカバーしており、マニアの間では有名な1曲。「爪」や「学生時代」で知られる平岡精二の作詞・作曲による異色作である。アニメ『オバケのQ太郎』(1965年 / TBS系)の声優として一世を風靡した曾我町子の個性的なボーカルで、不思議な曲の魅力が一層際立っている。サビにオバQの声が見え隠れする「しっぽ」も短いながらも強烈な印象を残す傑作だ。
姉妹デュオのチャーム・チャックスは珍品中の珍品で、巷で中古盤を探しても絶対に見つからないはず。星野哲郎作詞によるちょっとコミカルな「恋のアンプル」をはじめ、チャーミングな「お願い」「あなたのリンゴはまだ青い」など、未CD化を含む6曲が聴ける。
台湾出身、キャンディ・シューのソフトな歌声
八田富子や牧陽子はいずれもドメスティックな作品群ながら、牧陽子の4枚目「本牧ディスコティック」はいきなりのグルーヴ感。吉岡治の作詞、中川博之の作曲という、演歌とムード歌謡度満点の布陣に、あかのたちおが手がけたアレンジが映える。その後、芸名の牧陽子から本名の三浦弘子に戻して歌った彼女は、俳優・三浦友和の姉である。
キャンディ・シューは台湾出身。星野哲郎、なかにし礼、千家和也、三木たかし等から楽曲提供されたが惜しくもヒットには至らず。欧陽菲菲やテレサ・テンのようなアジアのスター歌手の仲間入りこそ果たせなかったが、クラウンで出された全5枚のシングル楽曲はソフトな歌声がどれも耳心地よい。これまで聴ける機会が極めて少なかった「おもいでのビクトリア・ピーク」や「嘘もうれしいよ」「BUS(バス)」が聴けるのが嬉しい。さらにもっとポップな路線も展開して欲しかったと思わざるえない。
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2026.02.11