日本サンライズの新感覚ロボットアニメ「銀河漂流バイファム」
1973年生まれの自分は、日本サンライズ(現サンライズ)が制作するロボットアニメの全盛期を体感している世代にほかならない。幼稚園から中学生までの間、ガンダムシリーズは『ファースト』に『Z(ゼータ)』や『ZZ(ダブルゼータ)』を一通り経験したし、その他にも『太陽の牙ダグラム』『戦闘メカ・ザブングル』『装甲騎兵ボトムズ』『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』など書ききれないほど様々な作品が放映されていた。そんな中でも自分が一番好きだった作品が『銀河漂流バイファム』だ。
『バイファム』は、1983年に放送が開始された日本サンライズが制作したロボットアニメで、小説『十五少年漂流記』をモチーフに、異星人との戦争に巻き込まれ、親と離れ離れになった15歳から4歳までの少年少女が、仲間たちとの共同生活の中で成長する物語である。
ゴールデンタイムの毎週金曜19時から放送されていたが、裏番組は『ドラえもん』であったため、視聴率が悪く、当初予定の半分で打ち切りになる話が持ち上がるも、当時の中・高校生を中心としたファンが署名運動を起こして地元テレビ局に提出し、一部の局で放送継続の決定に至ったというエピソードがあるぐらい、一部で熱狂的な人気を誇った知る人ぞ知る作品だ。
衝撃の主題歌「HELLO, VIFAM」は全編英語詞
この作品はその内容もさることながら、当時小学校4年だった自分にとって一番衝撃的だったのは、オープニング主題歌「HELLO, VIFAM」が全編英語詞だったことである。
ロボットアニメの主題歌といえば、主人公メカの名前を連呼し、勇気だ! 友情だ! 命だ! などを綴った歌詞の男臭い熱血ソング的なものが定番であった。そんな中で、いきなり少し大人な雰囲気のロックサウンドに乗せられて放たれる英語の歌詞は、驚き以上にすごくカッコよくてオシャレなものに感じられた。
WIPE AWAY ALL YOUR TEARS
TOGETHER WE WILL CONQUER FEAR
COME AND GIVE US A HAND
IN SEARCH OF A NEW LAND
I WONDER WHERE YOU ARE MY FRIEND
TELL US WHAT IS LEFT IN THE END
GIVE US YOUR COURAGE,VIFAM
YOU ARE OUR IMAGE,VIFAM
UNITED WE MUST FIGHT,VIFAM
UNCERTAIN OF OUR MIGHT,VIFAM
子供の頃はナンノコッチャわからない歌詞だったが、今になって改めてみると、処々で絶妙に韻が踏まれており、すごく練られたものであることがわかる。
主人公たちの置かれた環境を疑似体験
「HELLO, VIFAM」の魅力は歌詞だけではない。物語の1シーンのような楽曲構成と高い演奏技術もその魅力を支えている。
例えば前奏と間奏の間に挿入される「ラウンドバーニアン」のパイロットと母艦の管制官のやり取りも、リアル感があって、ミリタリー的なものを好む少年心をくすぐり、めちゃめちゃカッコイイのである。
C:EXAMINE DATA LINK
A:MAIN TRANS ENGINE
NO 1........2 ON
NO 3........4 OFF
NO 5.6.7.8. ON
C:CONFIRMED,ROUND VERNIEN
Com:HELLO,I AM VIFAM
C:O.K.VIFAM:,YOUR NUMBER IS 7
INSTRUMENT RECORDER ON
Com:PERMISSION TO SORTIE
C:PERMISSION GRANTED
GOOD LUCK,VIFAM 7
『銀河漂流バイファム』に登場する少年少女たちは、何気ない日常生活から急に戦いに巻き込まれてしまい、突然に軍とともに行動をともにしなくてはならなくなってしまう。この管制とのやり取りの部分は、そんな主人公たちの置かれた環境を疑似体験させてくれるのだ。
演奏はTAO。ロボットアニメの主題歌としてはオーバースペック?
この「HELLO, VIFAM」を演奏していたのがTAOというグループだ。当時は知らなかったが、アメリカへ渡り自らの実力を試すような本格派のロックバンドである。彼らの演奏は、正直子供向けのロボットアニメの主題歌としては少々オーバースペックなぐらいだった。
力強いピアノの旋律で始まるイントロ、そしてピアノの伴奏だけでシンプルに歌い上げると、サビ前には転調してラテン調のリズムに変わり、エンディングはストリングスが感動的にインサートされる――
そのドラマティックな演奏と曲構成は、幼き少年に“本物”の魅力を伝えてくれたんじゃないかと思う。約40年前にロボットアニメの主題歌の常識を覆す衝撃を与えたこの曲は、自分と同世代の少年たちに、洋楽への扉を開けたり、ジャパニーズAOR的なものへの興味を引き出してくれたことは間違いないだろう。
2022年10月26日に掲載された記事をアップデート
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2023.09.22