2026年 3月15日

GAROのボーカル大野真澄【ライブレポート】THE ALFEE 坂崎幸之助と紡ぐ故郷への歌

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大野真澄のコンサート「大野真澄 presents ミュージックカンファレンス OKAZAKI Vol.9」開催日(岡崎市民会館あおいホール)
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いくつになっても声が衰えないアーティスト、大野真澄


音楽と街、音楽と故郷の関係は、深くてなんと尊いのだろう――。改めてそれを感じさせてくれたアーティストがいる。大野真澄。言わずもがな、1970年代、大人気を博した伝説のバンド、GAROの元メンバーで、ボーカルの愛称で親しまれている、その人である。1971年にデビューし、1972年にリリースした3枚目のシングル「学生街の喫茶店」がメガヒット。その卓越した演奏と美しいハーモニーによりバンドは人気を博したが、1975年末に解散している。

その後は、プロデュース業などを経て、1996年に歌手として復帰。現在も精力的に活動しているが、私自身は、大野真澄の歌を生で聴くのは初めて。それが2026年3月15日に開催された『大野真澄 presents ミュージックカンファレンス OKAZAKI Vol.9』だった。いくつになっても声が衰えないアーティストとして定評のある大野。そして実際イベントで響いてきたのは、哀愁とやさしさに満ちた歌声。会場を包み込むような豊かな響きだった--。大野真澄の声は、「衰えていない」どころではない。熟成していた。

あの日の会場は愛知県岡崎市民会館あおいホール。毎年開かれるこの『ミュージックカンファレンス』は今年で9回目だ。毎年、大野が同郷の仲間とともに歌を届けている。イベントを立ち上げたきっかけは、2016年に岡崎市制100周年記念式典にて岡崎市民栄誉賞を授与されたことだったという。

合唱団のコーラスで「学生街の喫茶店」を歌唱


音楽で故郷に恩返しを ――。その思いがストレートに、しかも濃厚に伝わってくるライブ構成。故郷を愛し、故郷に愛された人にしか開催できないエモーショナルさが、最初から終わりまで、パンパンに満ちていた。オープニングは、名古屋を中心に活躍する栄ミナミ男声合唱団、略してサカダンによるビートルズ・ナンバー「ミッシェル」、「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」だった。その後、大野真澄が登場。「学生街の喫茶店」をサカダンのコーラスで歌唱する。

“歌っていて気持ちがいいんですよ。背中からサカダンの声が聴こえてすごい圧がかかる!”

歌声と大野さんの弾むMCに、私は最初から圧倒された。この迫力と包容力、今まで感じたことのない一体感。あえて言い換えるなら “街感”
。ステージにいる大野は、サングラスとボルサリーノが似合い、最高にダンディ!長髪に髭、大きな帽子という、GARO時代よりも何倍もかっこいい。しかし、大野真澄の魅力のすさまじさを知るのはここからであった。

オリジナル曲「悲しみを口ずさむ時」「クールになりたい」を歌う彼の、低く深みのある声にびっくりしてしまったのだ。なんと芳醇に響き渡る声なのか。声なのに、嗅覚まで刺激する。ほろ苦い香りを感じるのである。挽きたてのコーヒーのよう。そして、どんな人生でも 乾杯しようと歌われる「ワンパイントのラム酒に乾杯」が、会場を温かく包み込む。ひとつひとつの言葉がやさしくおおらかに響いて、胸にじんわり溶けていく。なるほど、この声、確かに凄い威力だ……。



「ミュージックカンファレンス」最多出演を誇る坂崎幸之助


大野真澄といえば、THE ALFEEに偉大なる影響を与えた人物ということでも知られている。そしてこの日のゲストはTHE ALFEEの坂崎幸之助。坂崎は『ミュージックカンファレンス』の最多出演を誇り、今回で6回目の出演となる。MCでは、すっかり気心知れた2人の師弟関係が伝わってくるような、ほのぼのとしたやり取りが続く。なんともあたたかなコンビネーションだ。

デビュー前からGAROに憧れ、GAROが出演した日比谷野音では高見沢俊彦と共に警備員のバイトをしたことがあるというエピソードを語っていた。その後、彼らはGAROと同じ事務所に入り、50年以上経った今も交流が続いている。なんだか運命を感じる絆だ。大野と坂崎は「メリーアン」「恋人になりたい」を歌唱。2人の歌う「メリーアン」は、THE ALFEEバージョンよりもふんわりとやわらかく、とても新鮮だった。



さらに大野と同じく愛知県出身、春日井市で育った「令和の流し」の異名を持つ田内洵也が登場。田内は2025年11月、サザンオールスターズの桑田佳祐プロデュース「深川のアッコちゃん」をリリースしたばかり。そのかわいくて切ない世界観に、胸がきゅん!大野は、自身の宝物のようなヒット曲も、愛しい後輩とのセッションも、同郷から飛び出した新たな世代の息吹も、丸ごと楽しんでいる。観ているこちらもそれが伝わってくるので、大野を通じて岡崎という街がどんどん好きになっていく――。不思議な多幸感に圧倒されっぱなしであった。

ラストは出演者全員で歌われた「愛こそはすべて」


後半は、大野真澄の原点、ザ・ビートルズの楽曲で彩られた。ビートルズを初めて知ったのはラジオ番組『森永キャンディー・ベスト・ヒット・パレード』(ニッポン放送)がきっかけだったそうだが、なんと、この番組で発表されたランキングを毎回ノートにガッツリ書き記していたという。 歌はあんなにダンディなのに、MCはすっかり音楽小僧に戻っているのが微笑ましい。

坂崎、田内とキャッキャ楽しそうにビートルズ談義をしている姿と「ツイスト・アンド・シャウト」を歌うパワーと声量のすごさのギャップが! 観ているこちらはハートを撃ち抜かれっぱなしである。周りを見ると、やはり私と同じく、手を胸の前で抑えて乙女になっている人多し。わかる、わかるぞ。こりゃ恋に落ちる! そしてラストに演奏されたのが「愛こそはすべて」(All You Need Is Love)。出演者全員による、パレードのように弾けた歌声は、大団円と呼ぶにふさわしい盛り上がり。会場はスタンディング・オベーション、拍手の波に包まれた。



なんという一体感……。私はイベントが終わり、ホールを出ても、しばらく頭の中は大野の歌声でいっぱいだった。帰りのバス停まで歩く途中、「♪人生は 人が言うほど つらくはないさ」と、覚えたての「ワンパイントのラム酒に乾杯」が思わず口から出る。すごかったなあ、大野真澄とその仲間たちが、大好きな故郷で、歌で愛を包み、観客にブワッと放出してくれるような空間。また、その声を聴きに行きたい。

後日、あの日を思い出しながら、私は繰り返し、彼のYouTube公式チャンネル『VOCAL BOOTH』に行き、ほっと一息ついている。なんだか、彼自身が故郷みたいだ。大野真澄はこれからも、静かに力強く歌いながら、どの街のステージも、愛しさで包み込んで行くのだろう。景色に溶け込んでいく、その低く豊かな声で。

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2026.06.07
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カタリベ
1969年生まれ
田中稲
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