振り返れば、その端緒となったアルバムは、1986年の通算3作目『コントロール』だろう。当時、気鋭のプロデューサーチームであったジャム&ルイスと組み、先鋭的なサウンドで一気に熱い注目を浴びた。このアルバムからのシングルカットは、初の全米ナンバーワンを獲得した「あなたを想うとき」(When I Think of You)や「恋するティーンエイジャー」(What Have You Done for Me Lately)がある。また、「ナスティ」のミュージックビデオに出演し、同時に振り付けを手がけたポーラ・アブドゥルは一躍注目を集め、トップ振付師として活躍することになり、88年にはアルバム『Forever Your Girl』でデビューも果たした。
小室哲哉が制作した95年のアルバム『SWEET 19 BLUES』は、すでにジャネットの楽曲面での影響が見られるが、それが如実になったのは、小室哲哉との蜜月を終え、独り立ちした安室の第1作として2003年にリリースされた『STYLE』だ。本作リリースの前には、ラッパーのVERBAL(m-flo)、今井了介らを中心に、安室をメインボーカルにした “SUITE CHIC” というクリエイタープロジェクトによるアルバム『WHEN POP HITS THE FAN』をリリース。
安室と並んで沖縄アクターズスクール出身のSPEEDもまた、ジャネットの影響下にあったと言われる。「Body&Soul」や「Go!Go!Heaven」といったハイテンションな楽曲や、ファンクを取り入れた「Wake Me Up!」といったナンバーでハードに歌い踊る姿は、そのダンススキルの高さも含め、安室奈美恵同様、ジャネットの存在がなければ生まれなかったものだろう。
宇多田ヒカルは99年に4枚目のシングル「Addicated To You」と、翌年の5枚目「Wait&See〜リスク〜」で、ジャネットのプロデューサーであるジャム&ルイスにプロデュースを依頼。それもジャネットのアルバム制作と同じく、ミネアポリスにある彼らのスタジオで、互いにアイデアを出しながら合宿生活のような形で楽曲を作り上げていったという。
同時期にはDREAMS COME TRUEが「APPROACH」(89年)で、ジャネットの「あなたを想うとき」(When I Think of You)を意識した楽曲を書いている。また、NOKKOが94年に発表した「人魚」は、作曲の筒美京平の曲想は、ジャネットの「アゲイン」からだと思われる。この「人魚」はのちに安室奈美恵もカバーしていることにも触れておきたい。