2000年 9月20日

aiko「ボーイフレンド」Y2K時代に感じた “生き抜いてやろう” という希望とパワー

12
0
 
 この日何の日? 
aikoのシングル「ボーイフレンド」の発売日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 2000年のコラム 
【グラマラス・ロック列伝】V系専門誌「Vicious」初代編集長が語る “音楽とメディア”

解散から24年!ブランキー・ジェット・シティの伝説ライブ「LAST DANCE」プレミア公開!

鬼束ちひろの不思議な浄化作用!Y2Kを象徴する曲「月光」救いでも励ましでも癒しでもない?

朝ドラ「オードリー」堺雅人でも蔵之介でもない!長嶋一茂が陰のある男を演じたのはなぜ?

「やまとなでしこ」と MISIA「Everything」閉塞感漂う今の時代こそ “Y2K” リバイバル

大滝、細野、清志郎 — 奇跡の楽曲「ハンド・クラッピング・ルンバ」

もっとみる≫




【Y2Kリバイバル】vol.5 〜 aiko「ボーイフレンド」

2026年になりました。今年もよろしくお願いいたします。さて、新年最初のコラムは【Y2Kリバイバル】というテーマに則り、2000年前後にリリースされた数々の名曲の中から、aiko「ボーイフレンド」について語っていきます。

そう、今年も継続すると思われるY2Kブーム。これは、若い世代が新しい価値観をもって、1990年代後半から2000年代初頭のカルチャーを “平成レトロ” として捉える現象。もちろん、筆者のように当時を知る世代にとっても、まだまだ懐かしさで語るものではない。

ーー 今から四半世紀前。ノストラダムスの大予言、コンピュータの2000年問題… 混沌とした世紀末だったけれど、新しい時代に向けて “生き抜いてやろう” という希望とパワーが漲っていた。世紀末の向こう側にある “ミレニアム” という言葉にキラキラした未来予想図を感じていた。あれから四半世紀、みんな生き抜いてきたのだ。その心意気を今も持ち続けていたい。

どこかアーシーな雰囲気すら感じるaiko6枚目のシングル「ボーイフレンド」


そんな混沌と希望が入り混じった1998年には、時代に寄り添いながら共感や癒しを与えるディーバたちが次々とデビューを飾った。宇多田ヒカル、椎名林檎、浜崎あゆみ、MISIA… そんな中、聴き手と等身大の気持ちで日常を歌にしながら、未来を見据えた力強さを持ち合わせていたのがaikoだった。

1998年にシングル「あした」でデビューしたaikoは、その1年後にリリースした3枚目のシングル「花火」のスマッシュヒットでその名が広く知れ渡る。この曲は16ビートのリズミカルなメロディが特徴的で、そこに「♪夏の星座にぶらさがって 上から花火を見下ろして」というイマジネーション溢れる歌詞が乗る。客観的に聴くとすごく革新性の高い楽曲だが、同時に浮遊感と哀愁が同居した歌声は非常に牧歌的にも感じられ、そっと聴き手に寄り添う感じがヒットの要因だったように感じる。

そんなaikoが、​​さらなるリアリティを持って聴き手に寄り添ってくれたのが、2000年9月にリリースした6枚目のシングル「ボーイフレンド」だ。こちらは「花火」の16ビートとは対照的に、aikoにしては珍しいアップテンポの8ビートを基調としている。イントロにはアメリカのポピュラーミュージックのルーツであるカントリーやブルーグラスで使われる弦楽器、バンジョーの音色が彩られ、どこかアーシーな雰囲気すら感じる。そんなサウンドに乗せて、誰もが持ち合わせる身近な愛のかたちを歌っていた。



Tシャツにジーンズで「紅白歌合戦」に登場


20世紀の終わり、未来への新しい時代の扉が開く直前に、aikoはダウン・トゥ・アースした心持ちをこの「ボーイフレンド」という楽曲に託している。そんなアティテュードはこの曲で初出場した『第51回NHK紅白歌合戦』​​での衣装にも表れていた。Tシャツにジーンズという普段着で、ジーンズのポケットには携帯電話をさしたままだった。これは “好きな服を着て歌番組に出演したい” という彼女の夢が実現した瞬間でもあったのだが、その姿こそが彼女のリアルだった。誰よりもファンに寄り添っていたし、飾らない姿で共に未来を駆け抜けましょうという、ブレない力強さを感じさせてくれた。

 Ah テトラポット登って
 てっぺん先睨んで宇宙に靴飛ばそう

多くの人が口ずさみたくなるサビの部分は、誰もが持ち合わせる身近な愛のかたちを、未来に託すかのように永遠のものとした。「♪宇宙に靴飛ばそう」というのは荒唐無稽かもしれないが、aikoは本気でそう思わせてくれるエネルギーを持ち合わせていた。あの時aikoが飛ばした靴は今も宇宙を彷徨っているのだろうか… そう感じるぐらいの説得力が今もこの曲には宿っている。

aikoは、あの頃に感じた “生き抜いてやろう” という希望とパワーを、この「ボーイフレンド」で体現させていた。それはこんな歌詞にも浮き彫りにされている。

 Ah まつ毛の先に刺さった陽射しの上
 大きな雲の中突き進もう

あれから四半世紀、飾らない姿で聴き手に寄り添ったaikoは、今も変わらず歌い続ける。自然体でサラリと時代の荒波をかき分け、真っ直ぐに力強く普遍的な愛を歌にする。社会の様々な分野で対立や亀裂が深まり、共通の基盤が見失われがちな現代において、その姿勢こそが最も大切だと思えてくる。


2026.01.05
12
  Songlink
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1968年生まれ
本田隆
コラムリスト≫
38
1
9
8
1
総立ちの女王、白井貴子の魅力とは? AORから女性ロックシンガーの頂点へ
カタリベ / ミチュルル©︎たかはしみさお
45
1
9
9
3
宮沢りえとブルーハーツの共演シングル「ボーイフレンド」を君は知っているか?
カタリベ / 宮木 宣嗣
47
1
9
8
3
オリーブ少女の憧れ。ニック・ヘイワードこそ理想のボーイフレンド!
カタリベ / 平マリアンヌ