【Y2Kリバイバル】vol.5 〜 aiko「ボーイフレンド」
2026年になりました。今年もよろしくお願いいたします。さて、新年最初のコラムは【Y2Kリバイバル】というテーマに則り、2000年前後にリリースされた数々の名曲の中から、aiko「ボーイフレンド」について語っていきます。
そう、今年も継続すると思われるY2Kブーム。これは、若い世代が新しい価値観をもって、1990年代後半から2000年代初頭のカルチャーを “平成レトロ” として捉える現象。もちろん、筆者のように当時を知る世代にとっても、まだまだ懐かしさで語るものではない。
ーー 今から四半世紀前。ノストラダムスの大予言、コンピュータの2000年問題… 混沌とした世紀末だったけれど、新しい時代に向けて “生き抜いてやろう” という希望とパワーが漲っていた。世紀末の向こう側にある “ミレニアム” という言葉にキラキラした未来予想図を感じていた。あれから四半世紀、みんな生き抜いてきたのだ。その心意気を今も持ち続けていたい。
どこかアーシーな雰囲気すら感じるaiko6枚目のシングル「ボーイフレンド」
そんな混沌と希望が入り混じった1998年には、時代に寄り添いながら共感や癒しを与えるディーバたちが次々とデビューを飾った。宇多田ヒカル、椎名林檎、浜崎あゆみ、MISIA… そんな中、聴き手と等身大の気持ちで日常を歌にしながら、未来を見据えた力強さを持ち合わせていたのがaikoだった。
1998年にシングル「あした」でデビューしたaikoは、その1年後にリリースした3枚目のシングル「花火」のスマッシュヒットでその名が広く知れ渡る。この曲は16ビートのリズミカルなメロディが特徴的で、そこに「♪夏の星座にぶらさがって 上から花火を見下ろして」というイマジネーション溢れる歌詞が乗る。客観的に聴くとすごく革新性の高い楽曲だが、同時に浮遊感と哀愁が同居した歌声は非常に牧歌的にも感じられ、そっと聴き手に寄り添う感じがヒットの要因だったように感じる。
そんなaikoが、さらなるリアリティを持って聴き手に寄り添ってくれたのが、2000年9月にリリースした6枚目のシングル「ボーイフレンド」だ。こちらは「花火」の16ビートとは対照的に、aikoにしては珍しいアップテンポの8ビートを基調としている。イントロにはアメリカのポピュラーミュージックのルーツであるカントリーやブルーグラスで使われる弦楽器、バンジョーの音色が彩られ、どこかアーシーな雰囲気すら感じる。そんなサウンドに乗せて、誰もが持ち合わせる身近な愛のかたちを歌っていた。
Tシャツにジーンズで「紅白歌合戦」に登場
20世紀の終わり、未来への新しい時代の扉が開く直前に、aikoはダウン・トゥ・アースした心持ちをこの「ボーイフレンド」という楽曲に託している。そんなアティテュードはこの曲で初出場した『第51回NHK紅白歌合戦』での衣装にも表れていた。Tシャツにジーンズという普段着で、ジーンズのポケットには携帯電話をさしたままだった。これは “好きな服を着て歌番組に出演したい” という彼女の夢が実現した瞬間でもあったのだが、その姿こそが彼女のリアルだった。誰よりもファンに寄り添っていたし、飾らない姿で共に未来を駆け抜けましょうという、ブレない力強さを感じさせてくれた。
Ah テトラポット登って
てっぺん先睨んで宇宙に靴飛ばそう
多くの人が口ずさみたくなるサビの部分は、誰もが持ち合わせる身近な愛のかたちを、未来に託すかのように永遠のものとした。「♪宇宙に靴飛ばそう」というのは荒唐無稽かもしれないが、aikoは本気でそう思わせてくれるエネルギーを持ち合わせていた。あの時aikoが飛ばした靴は今も宇宙を彷徨っているのだろうか… そう感じるぐらいの説得力が今もこの曲には宿っている。
aikoは、あの頃に感じた “生き抜いてやろう” という希望とパワーを、この「ボーイフレンド」で体現させていた。それはこんな歌詞にも浮き彫りにされている。
Ah まつ毛の先に刺さった陽射しの上
大きな雲の中突き進もう
あれから四半世紀、飾らない姿で聴き手に寄り添ったaikoは、今も変わらず歌い続ける。自然体でサラリと時代の荒波をかき分け、真っ直ぐに力強く普遍的な愛を歌にする。社会の様々な分野で対立や亀裂が深まり、共通の基盤が見失われがちな現代において、その姿勢こそが最も大切だと思えてくる。
2026.01.05