2000年 11月13日

【Y2Kリバイバル】ダフトパンク「ワン・モア・タイム」AI 登場以前に鳴っていた未来

22
0
 
 この日何の日? 
ダフト・パンクのシングル「ワン・モア・タイム」発売日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 2000年のコラム 
鬼束ちひろの不思議な浄化作用!Y2Kを象徴する曲「月光」救いでも励ましでも癒しでもない?

aiko「ボーイフレンド」Y2K時代に感じた “生き抜いてやろう” という希望とパワー

朝ドラ「オードリー」堺雅人でも蔵之介でもない!長嶋一茂が陰のある男を演じたのはなぜ?

「やまとなでしこ」と MISIA「Everything」閉塞感漂う今の時代こそ “Y2K” リバイバル

大滝、細野、清志郎 — 奇跡の楽曲「ハンド・クラッピング・ルンバ」

モーニング娘。「恋愛レボリューション21」現在のアイドル百花繚乱は “Y2K” から始まった

もっとみる≫




【Y2Kリバイバル】ダフト・パンク / ワン・モア・タイム

不思議と祝福の匂いがしたダフト・パンク「ワン・モア・タイム」


ダフト・パンクの「ワン・モア・タイム」を初めて聴いたときのことを、私は今でもはっきり覚えている。それは2000年。世紀が変わるというだけで、未来はどこか明るく、少しだけお祭りじみていた。コンピューターが暴走するかもといわれながら、それでも未来を楽観する気分にあふれ、世界は前へ進むと信じていた時代だった。

ダフト・パンクの「ワン・モア・タイム」は、そんな空気のなかで鳴っていた。反復するビート、機械的に加工された声。感情は削ぎ落とされているはずなのに、不思議と祝福の匂いがした。 機械の声で、人間が踊る。いまの耳で聴くと、「ワン・モア・タイム」は驚くほど単純だ。言葉は少なく、展開も限定的。だが、その単純さこそが、身体を解放した。

ダフト・パンクがやっていたのは、人間の感情をそのまま音にすることではなかった。むしろ逆で、人間が作ったものを、あたかも機械が自動生成したかのように聴かせること。その結果として、感情があとから立ち上がってくる構造だった。機械の仮面を被った音楽が、人間の身体を動かす。そこにあったのは、テクノロジーへの皮肉ではなく、どこか誠実な信頼だったように思う。



AI時代のポップミュージックが抱える課題


あれから四半世紀が経った。いま、ポップミュージックはAIと共に作られている。作曲も、編曲も、歌声も、機械が担うことが珍しくなくなった。そこで問われているのは、いかに人間らしく聴かせるかだ。揺らぎ、感情、物語。機械が生み出した音楽に、あとから人間性を与える作業が求められている。この状況を見ていると、ダフト・パンクがやっていたことがいかに逆向きだったかがよくわかる。彼らは、人間が作った音楽からあえて人間性を剥ぎ取ろうとした。その果てに、かえって人間的な歓喜が立ち現れた。

そう、ダフト・パンクの手法は正反対だ。AI時代は、機械から人間へ。ダフト・パンクは、人間から機械へ。だが、不思議なことに、両者の着地点は驚くほど近い。どこまでが機械で、どこからが人間なのか。その境界線が曖昧になる瞬間に、ポップミュージックのダイナミズムは発揮される。「ワン・モア・タイム」は、その境界を、まだ誰も本気で意識していなかった時代に、軽やかに越えることに成功した。

松本零士の宇宙とY2Kの夢


松本零士によるアニメーションがビジュアルとして選ばれ、「ワン・モア・タイム」収録のアルバム『ディスカバリー』(2001年)の全曲に映像作品が作られたことは象徴的だ。描かれているのは、異星のミュージシャンたちが地球に連れ去られ、メディアと資本に消費されていく物語である。しかしその語り口は、陰鬱なディストピアとは距離を置く。鮮やかな色彩、ロマンチックな造形、宇宙船や都市の玩具的な質感。1970年代SFの系譜と、Y2K特有のポップで人工的な未来像が重なり合っている。



ダフト・パンクは、AIという言葉が一般化する以前に、機械と人間が共存する音楽を、ごく自然なポップとして提示した。20世紀末に発表された「ワン・モア・タイム」は、世紀をまたいで2026年を静かに指差していたのだ。Y2K時代に彼らが作ったキラーチューンは、いまだにフロアを盛り上げている。

彼らが取り組んだテクノロジーと人間性の共存と言う視点は、Y2K以降のポップミュージックの大きなテーマであり続けている。そう考えると、ダフト・パンクはY2Kリバイバルというよりも、Y2K以降そのものなのかもしれない。

▶ ダフト・パンクのコラム一覧はこちら!



2026.02.10
22
  Songlink
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1972年生まれ
岡田ヒロシ
コラムリスト≫
22
1
9
9
6
山崎まさよし 主演映画「月とキャベツ」と 主題歌「One more time, One more chance」
カタリベ / ミチュルル©︎たかはしみさお