1月21日

山下達郎「FOR YOU」40周年!時代を感じさせないポップスの大名盤

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山下達郎「FOR YOU」収録「SPARKLE」が放つインパクト


針を落として最初に飛び込んでくる音がこれほどインパクトに残るアルバムは、決して多くはない。そんな1枚を選ぶとしたら、山下達郎さんの『FOR YOU』という人も多いのではないだろうか。

1曲目の「SPARKLE」。山下達郎さんが1980年にステージ用に購入したフェンダー・テレキャスターで奏でるギターの音だけで、爽快な世界観がスコーンと目の前に開ける。その後すぐ洪水のように押し寄せるドラム・ベースとホーンズで一気に感情が高揚し、このしあわせな音たちにずっと身を任せていたいと思う。

初めてこの曲を聴いた高1の終わりからもう40年が経とうとしているが、幾度となくそう思ったものだ。ここだけ何回も録音したテープを作った人もいるだろう。

「SPARKLE」は1985年にハワイの日系バンドにより英語でカヴァーされたこともあったという。また、「SPARKLE」を元ネタとして、2002年には、DJ MUROがソウルシンガーのBOOをフィーチャリングして「smile in your face」としたCDシングルもリリースされた。

「SPARKLE」についてもう少し続けよう。全編に流れるカッティングギターは、後進のギタリストや音楽家たちにも影響を与えている。ギター・マガジン2019年4月号で、「シティ・ポップのカッティング名演」というセレクトで2010年代の新鋭ギタリスト14人が3曲ずつ選曲する企画があった。のべ43曲、全部で38曲の名演が挙げられたが、2曲以上重複したのは4曲のみ。14人のうち3人が「SPARKLE」を挙げている。3人から選ばれたのはこの曲だけだ。

山下達郎のテーマは“都市生活者の疎外”


山下達郎さんがデビューしてからずっと追い続けているテーマは、都市生活者の疎外だという。東京の空気感を共有できるひとたちとやっていきたいということで、70年代は同世代の同世代のミュージシャンをツアーメンバーとしていた20代の山下達郎さんは、東京出身者でバンドを固めようとした。ギターの椎名和夫さん、キーボードの難波弘之さん、そして達郎さんに加えるドラマーとベーシストを探した。そこに、佐藤博さんや吉田美奈子さんのサポートを務めていたベースの伊藤広規さんとドラムの青山純さんが加わることになる。

1979年に六本木PIT INNで開催されたドラマーの村上 “ポンタ” 秀一さん主役のステージが、ベースの伊藤さん、ドラムの青山さんの公開オーディションとなった。この時の共演のミュージシャンは、ギターが松木恒秀さん、キーボード坂本龍一さん、サックス土岐英史さんに山下達郎さん、吉田美奈子さんという超一流どころ。達郎さんが伊藤広規さん、青山純さんのパフォーマンスに手応えを感じて、ふたりを達郎さんの専属バンドに引き入れた。

そして1980年のシングル「RIDE ON TIME」から、ベースの伊藤広規さん、ドラムの青山純さんがバンドのメンバーに加わった。伊藤さん、青山さんのふたりを学生時代から知る作編曲家・キーボーディストの新川博さんは「それまでの達郎サウンドとは全然違って感慨深かった」と語っている(雑誌『ベース・マガジン』2019年8月号)。確かに、アルバムを聴き比べるとはっきり音の違いが素人のわたしでもわかるほどだ。

山下達郎さんは『FOR YOU』でのレコーディングメンバーとなる専属バンドと、1980年は年間59本のライブを、1981年は47本のライブを行った。1981年12月26日の中野サンプラザでのコンサートでは、すでに「SPARKLE」をはじめとした『FOR YOU』の収録楽曲が演奏されていた、と2012年にぴあから刊行されたMOOK『山下達郎 “超” 大特集!』に当時コンサートに参加した方のエピソードが掲載されている。

「MUSIC BOOK」以外はほぼこのバンドメンバーでの演奏で、「ステージとレコードで同じ音が出せる幸福」と達郎さん自身MOOKのインタビューで語っている。『FOR YOU』の2002年版のCDライナーノーツでは「バンド時代から長い時間がかかりましたが、この1980年代初頭、ようやく私山下達郎は自分自身の音を獲得することを出来たといえるでしょう」と記している。

竹内まりやのアルバム用に書き下ろした「MORNING GLORY」も必聴


アルバムを通して聴いていると、16ビートのロックからファンクもブラックミュージックもハチロクのバラードも全部山下達郎さんの気持ちいい音楽の要素になっているのがよくわかる。

その「自分自身の音」のなかからもう1曲、「MORNING GLORY」を取り上げよう。

もともとは竹内まりやさんの1980年のアルバム『Miss M』に書き下ろした作品。明るめのシャッフルナンバーを依頼されたものだった。リズムアレンジはジェイ・グレイドン&ディヴィッド・フォスター、ホーン&ストリングスアレンジはグレッグ・マティソン。1980年のAORアレンジに合う形で、まりやさんは、達郎さんの了解を取ってメロディを一部変えて歌ったが、達郎さんの好みではなかったということで達郎さん自らアレンジして『FOR YOU』に入れたという。メロディだけではなく、細かいコードの違いなど、聴き比べると面白い。

まりやさんヴァージョンが、L.A.の陽光がさんさんと降り注ぐ鮮やかな光だとすると、こちらの達郎さんヴァージョンはもう少し柔らかい光という印象を受ける。アレンジとコーラスワークの緻密さはこちらに軍配を上げたい。

ジャケットアートは鈴木英人、山下達郎が直接依頼


ジャケットは鈴木英人さんのイラスト。当時の山下達郎さんの愛読書『年鑑日本のイラストレーション』で一番好きだった鈴木英人さんに達郎さんが直接依頼したもの。

鈴木英人さんは、自動車雑誌『CAR AND DRIVER』や『POPEYE』、前年の1981年7月創刊の雑誌『FM STATION』の表紙で当時人気上昇中のイラストレーター。いかにもアメリカンなデザインだ。アルバムジャケットのオファーは達郎さんの『FOR YOU』がはじめてだった。達郎さんもお気に入りのようで、前述のぴあMOOKでの100Qにおいて、自身のアルバム&シングルジャケットの中でお気に入りのアートワークの3点に含めている。

『FOR YOU』はわたし自身、高校時代最もよく聴いたアルバムのひとつで、いまでもウォーキングのお供など、なにかと愛聴している一枚だ。海外から日本にレコードを探しに来る人々からも人気だという。シティポップという枠におさまらない、時代性を感じずにいつまでも聴き続けることができるポップスの名盤だと思っている。

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2022.01.21
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カタリベ
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