8年ぶりの新作を発表するメタリカ。結成から35年、リアルタイムでデビュー時から応援してきたバンドが、今や “超大物” として新作を発表するということは非常に喜ばしい限りです。
メタリカがデビューアルバムを出した83年当時、私はメタルにいちばんのめり込んでいた時期で、メタルのジャンルを片っ端から聴きあさり、国内盤の発売されてないアーティストまで手を出し始めていた頃でした。Amazonなどのない当時、輸入盤を手に入れるのはなかなか大変で、扱っている店もホントに僅少。メタリカのデビュー時も評判にはなっていたものの肝心の盤が輸入盤で手に入らない。メジャー流通ではないため国内盤もなかなか発売されない。それでもようやく翌年ネクサス(キングレコード)盤で国内発売が叶い、デビューアルバム「キル・エム・オール(当時の邦題は「血染めの鉄槌(ハンマー)」)を手に入れることが出来ました。
スラッシュメタルを世に広めた彼らですが、まだスラッシュメタルという存在も知らない私がそのアルバムを最初に聴いた印象は正直「???」でした。「モーターヘッドっぽい」とか「メイデンより速い」といった評論しかなかったので、聴いてみた時でさえどう表現していいかわかりませんでした。
確かにスピード感はある。ヴォーカルに勢いはある。しかしながらメタルらしいサウンドのどっしり感はあまりなく、ギターリフばかりが目立っている印象。メタル特有の様式美やドラマチックな要素もあまりありません。「これは新しい!」というより「C級感」といった感じの第一印象でした。バンド名もメタルだから「メタリカ」だし、発売直前まで便器の中からナイフというジャケだったし、頭の良さそうな感じじゃないなあと思っていたので、この「C級感」という印象はまぬがれません。ちなみに、アルバム収録曲の当時の邦題は「電撃の騎士」「炎のジャンプ」「鞭」「懺悔無用」「見つけて壊せ」「メタル軍団」などでした。
しかしです。他の愛聴メタルアルバムの合間にこのメタリカをチョイスしていた頻度が少しずつ増えていき、しまいにはかなりのへヴィーローテーション。ウエストコーストロックとはまた違うんですが、アメリカ西海岸のカラッとしてザクザクと刻むメタルギターリフが心地よく染みついていたのです。曲も妙にスルメ感があって、聴き飽きない上に味が出てくるメロディー。1年くらいかけて私の中の名盤になりました。
このあと、次作「ライド・ザ・ライトニング」、その次の「メタル・マスター」の世界的なヒットを経て、90年代にはメタル界にとどまらないロック界のスーパースターと化していく彼らを見ているのは非常に痛快でした。名盤を数多く世に出した彼らですが、私は最後にはこのアルバムに戻ってきます。気に入るまでに少々時間を要すると愛着度も違ってくるもんです。
今では大物感溢れるヴォーカルのジェイムスの歌い方も「カントリーおじさん」化してますが、相変わらずアホアホなメタルらしいニューアルバムのジャケットを見るとすべてを許せてしまえます。このデビューからブレない姿勢。大事です。
2016.11.18
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