4月25日

ブルー・マーダー嵐の船出、ジョン・サイクスから “デビカバ” へ怒りの結晶!

32
1
 
 この日何の日? 
ブルー・マーダーのデビューアルバム「ブルー・マーダー」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1989年のコラム 
奇想天外昇龍の如く、X JAPANの激しくも美しい音楽と破天荒な生き様

初恋の思い出に満ちたプリンセス プリンセス、無垢な気持ちで長く愛せる大切なバンド

ブラック・サバスの不遇ボーカリスト、トニー・マーティンは頑張り屋!

歌手人生の句読点、80年代の中森明菜を締めくくるシングル「ライアー」

ドラゴンボールZ、ノリノリすぎる主題歌は「たまのりしこ」の歌?

第1回:伊藤銀次のプロデュースイベント「BRITISH COVER NIGHT」汐留PITで開催!

もっとみる≫




日本でも大人気! “バンド再生請負人” ジョン・サイクス


長髪のブロンドヘアーに、貴公子の如き整った風貌。ゲイリー・ムーア直系の猛烈な速弾きを駆使した、類稀なるギターテクニック。ジョン・サイクスは、洋楽のHM/HR系アーティストとして、日本で人気を博す要素を、余すことなく兼ね備えたギタリストだ。実際、日本のHM/HRファンは、世界のどの国よりも、サイクスの活動を長きに渡り応援してきた。

そんな、サイクスの80年代を振り返る上で特筆すべきは、“バンド再生請負人” とでも形容すべき、八面六臂の活躍ぶりであろう。

手始めは1980年に加入した、ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル(以下、NWOBHM)のタイガース・オブ・パンタンだ。彼らのデビュー作と、サイクス加入後の1981年のセカンド作『スペルバウンド』を聴き比べると、一聴瞭然。バンドのクオリティが、見違えるように上がっている。もう1人のギタリストとの差も歴然で、サイクスの貢献ぶりが容易に伺えるだろう。

そんなサイクスとバンドの “格差婚” が、長く続くはずがない。次作『クレイジー・ナイト』後に、サイクスは自らに相応しい次なるステージを目指して、オジー・オズボーンのオーディションを受けるために、バンドを離れたのは必然の展開だった。

フィル・ライノットとの出会い、古豪シン・リジィの起爆剤!


オジーのオーディションで、サイクスは残念ながら良い結果を得られなかった。しかし、そこから転じて、シン・リジィのフィル・ライノットとコラボする機会を得て、日本で後にプリティ・メイズのカヴァーでヒットする「プリーズ・ドント・リーブ・ミー」を発表。結果的にフィルは、サイクスをシン・リジィに迎えることになった。

今でこそ “アイルランドの英雄” と呼ばれ、レジェンダリーな存在として語り継がれるシン・リジィだが、80年代初頭の頃は、バンド史上の暗黒期を迎えていた。看板ギタリストのゲイリー・ムーアが脱退後、スノーウィー・ホワイトを迎えて2作をリリースしたものの、セールス的にも内容的にも全盛期の勢いを失っていたのだ。

そんな中で、NWOBHM以降の流れに乗るべく、起爆剤として加入したのが、サイクスだった。1983年のサイクス初参加作にして、最後のスタジオ作『サンダー・アンド・ライトニング』は、これまでの彼らのイメージを一新。冒頭からアップテンポの雷鳴の如きヘヴィメタルが炸裂する、まさに会心作に仕上がった。

その立役者は、サイクスに他ならないだろう。ライノットのベースと同じく、ブラックボディにミラーのピックガードをつけたお馴染みのレスポールを、縦横無尽に弾きまくるギタープレイが、伝統的なシン・リジィのサウンドに化学反応を起こした。それは、メタル史上に語られる名作を生み出しただけでなく、彼らを再びシーンのセンターへと返り咲せ、有終の美を飾らせることになるのだった。

ホワイトスネイクと共に目指したアメリカ進出


シン・リジィを見事に再生させたサイクスだったが、バンドは惜しまれながら解散へと向かってしまう。脂の乗り切ったサイクスに目をつけたのが、アメリカ進出を目論んでいた、ホワイトスネイクのデイヴィッド・カヴァデールだった。

LAメタルブームに湧く全米マーケット攻略を考えると、ホワイトスネイクの地味なギタリスト陣と比べ、若くて才能のあるサイクスは、喉から手が出るほど魅力的に映ったに違いない。

カヴァデールの誘いに応じたサイクスを迎え、ホワイトスネイクは手始めに、既発の『スライド・イット・イン』のギターパート差し替えを行った。結果、2種類のヴァージョンを聴くことができるが、ここでもその差は歴然だ。好みの問題はあれど、サイクスのギタープレイにより、同じ楽曲が全米マーケット向けにアップデートされたことは、間違いなかった。

蜜月を深めたカヴァデールとサイクスは、勝負作となる音源の制作にイチから取り掛かった。そして完成したのが、HM/HR史上に残る不朽の名作『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス(Whitesnake)』(以下、サーペンス・アルバス)だった。

デイヴィッド・カヴァデールから突然の解雇通告


けれども、いざ全米マーケット制覇に動く段階で、すでにサイクスはバンドを解雇されていたのだ。この騒動には、サイクス、カヴァデールそれぞれに言い分があり、真相は当人達のみが知ることだ。わかっていることは、制作の最終段階でサイクスがカヴァデールに解雇された事実と、残りの制作作業をカヴァデールらが行い完成させた事実だ。

公開された「スティル・オブ・ザ・ナイト」のMVでは、すでに後任ギタリストであるエイドリアン・ヴァンデンバーグとヴィヴィアン・キャンベルが出演しており、サイクスの奏でるソロに、似合わない当て振りをする場面を見せられることになった。

『サーペンス・アルバス』は、カヴァデールの目論み通り、全米チャート2位と空前の大成功を納めた。1988年に観たホワイトスネイク全盛期の来日公演では、全く別のバンドと言えるほど、ゴージャスなバンドイメージに変貌を遂げており、本当に驚かされた。

一方のサイクスは、自分が携わった作品の成功を尻目に、カヴァデールへの怒りが頂点へと達していったのは、想像に難くない。結果としてサイクスは、“バンド再生請負人” を封印し、自らを全面に押し出したバンド、ブルー・マーダーを結成を決意するのだ。

デビューアルバム「ブルー・マーダー」は “デビカバ” に売った喧嘩?


メンバー集めにこだわり、紆余曲折を経て固まったラインナップは、トリオ編成だった。フレットレスベースの名手トニー・フランクリン、ハードロックドラマーの第一人者カーマイン・アピスという実力派を従え、サイクス自身がセンターに躍り出て、ヴォーカルも担当した。

渾身のデビューアルバム『ブルー・マーダー』は、80sのHM/HR史に残る、圧倒的な内容の素晴らしさに加え、『サーペンス・アルバス』を聴きこんだHM/HRファンにとって、あらゆる意味で衝撃的な一枚となった。

1曲目の「ライオット」のギターリフが始まって、僕は早速驚かされた。ギターパートの印象が『サーペンス・アルバス』と全く同じではないか。弾いてる人間が同じだから当然だけど、あの作品を構成する要素の大半はサイクスのギターだった、という事実を、改めて認識させられた人が大勢いたに違いない。

サイクスのヴォーカルも、兼務とは思えぬ本格派の香りを漂わせていた。ここまで完璧に“歌える”のは想定外の驚きであり、どこかカヴァデールを意識しているようにも、聴こえてならなかった。

2曲目の「セックス・チャイルド」で、その驚きは倍加した。何せ、中間部のアレンジが、まんま「スティル・オブ・ザ・ナイト」なのだから! 他にも『サーペンス・アルバス』収録の「イズ・ディス・ラヴ」に対するアンサーソング的なバラード「アウト・オブ・ラヴ」や、同じく「バッド・ボーイズ」にリフが酷似した「ブラック・ハーテッド・ウーマン」など、完全にカヴァデールに喧嘩を売っているようにさえ思えた。

それは、ジョン・サイクスの意地とプライドの結晶


でも冷静に考えると、サイクスは自らが創り出せる能力を、今度は自分のバンドのために注ぎ込んだだけなのだろう。そこには並々ならぬプライドを感じたし、名作『サーペンス・アルバス』に最も貢献したのがサイクスであることを、ようやく白日の元に晒すことになったのだ。そうした意味でも、サイクスの意地とプライドの結晶である『ブルー・マーダー』を、こうした作風で仕上げた意味は、決して小さくなかったと思う。

1989年に観たブルー・マーダーの来日公演では、禁断の「スティル・オブ・ザ・ナイト」が演奏されたが、このギターソロはオレのものだ! と言わんばかりのパフォーマンスに、他の曲以上の怨念がこもっていたような気がした。

サイクスは近年のインタビューで、30年以上も前の解雇劇を今も苦々しく思い、カヴァデールと再び話す気は全くないと断言している。四半世紀を超える積年の恨みを募らせる理由と、ブルー・マーダーで示した、サイクスの貢献度を証明する物的証拠からして、カヴァデールの方が少々分が悪い気もするが… さて、真実やいかに。

2020.09.22
32
  YouTube / BlueMurderVEVO
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
コラムリスト≫
74
1
9
8
3
中森明菜に見いだしたハードロック魂!攻めのロックナンバー「1/2の神話」
カタリベ / 中塚 一晶
34
2
0
2
0
アイドルとヘヴィメタルの関係、80年代メタルファンを虜にするBABYMETALの共感力!
カタリベ / 中塚 一晶
85
1
9
8
6
ボン・ジョヴィが勝負を賭けた名盤「ワイルド・イン・ザ・ストリーツ」
カタリベ / 藤澤 一雅
37
1
9
7
8
エディ・ヴァン・ヘイレン、青春の1ページに君臨するギターヒーロー!
カタリベ / 本田 隆
70
1
9
8
8
5月2日は hide の命日 − 今の時代を生きていたらどんなロックを奏でたのだろう
カタリベ / 中塚 一晶
60
1
9
8
5
KYON²「ハートブレイカー」小泉今日子 × 高見沢俊彦が放つ異彩のハードロック!
カタリベ / 中塚 一晶