2022年 9月9日

【最新ライブレポ】加山雄三ラストショー!若大将と音楽の絆はまだまだ続いてゆく

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加山雄三のコンサート「加山雄三ラストショー~永遠の若大将~」が東京国際フォーラム・ホールAで開催された日
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加山雄三ラストショー。「海 その愛」で幕開け


「皆さん、今日はよろしくお願いします! 皆さんに会いたくて、今日のこの日を本当に楽しみにしていました!」

年内でコンサート活動終了を発表した加山雄三の最後のホールコンサート『加山雄三ラストショー~永遠の若大将~』は、そんな優しいメッセージで幕を開けた。約5,000人の観客で満席の東京国際フォーラム・ホールA。1階はもちろん、2階席の最後列まで完全に埋めつくされた光景を見るのは初めてだ。さらにライヴビューイングで全国47都道府県62カ所の映画館へ訪れた約13,000人の観客に見守られてのステージ。

オープニングのヒストリー映像がスクリーンに映し出された後、最初に歌われたのは代表作のひとつ「海 その愛」だった。黒の上下に白いジャケット姿でステージ中央に置かれた椅子に腰掛け、ピンスポットを浴びるダンディな姿に割れんばかりの拍手が巻き起こる。病気を乗り越え、伸びやかで張りのある太い声が健在なのが嬉しい。

「人は自由に感じる時間が多いと幸せなんだ。僕は海っぺりで自由奔放に育った。海には自由がある。だから僕は海が好きなんだ。1部では海の歌をたくさん歌います」

―― そう宣言した後、「ある日渚に」と「夜空を仰いで」を続けて歌唱。いずれも加山自身が作詞も手がけた珍しいナンバーである。弾厚作のペンネームで自ら作曲してきた加山だが、作詞も共に手がけた作品は意外と少ない。それはもちろん、岩谷時子という最高のパートナーがいたからであろう。



茅ヶ崎で過ごした少年時代。加山雄三といえば “海”


「最近、リハビリを兼ねて散歩をしていると子供たちが遊んでいるのを見かけて自分の子どものころを思い出す。あの頃は周りに何もなくて、生きている貝をたくさん拾って歩いた。イシハマグリっていう貝。鍋にしょうゆとみりんを入れて佃煮にしたら、おふくろもおやじも、こりゃうまいな、と言って食べてくれたのが嬉しかった。そういう時代を生きてきた。海は俺に幸せを与えてくれたんだ」

―― 茅ヶ崎で過ごした少年時代の想い出を語りつつ、「俺は海の子」「湘南ひき潮」「まだ見ぬ恋人」「君のために」と海を歌ったお馴染みのレパートリーを披露する。共演したオーケストラの指揮者にメロディを誉められたという「ひとり渚で」は、苦難の時代から復活を遂げた1976年に久々に出されたアルバム『海 その愛』の収録曲だった。

続いて、松本隆作詞による1978年のナンバー「光進丸」では客席から自然と手拍子が沸き起こり、加山も曲の最後で椅子から立ち上がって熱い歓声に応えた。そこまでで第1部が終了となる。

新しいもの大好き! AIのバーチャル若大将登場で始まった第2部


30分間の休憩の後、第2部はAIのバーチャル若大将による初披露曲「そして陽は昇りつづける」から始まった。未発表曲が甦った最も新しいエレキナンバーになる。

「俺、要らないんじゃないの?」と言いながら再登場した加山は衣装換えをして、紺のストライプのシャツに白いパンツ、ブルーのブレザーという、最も若大将らしい出で立ち。バーチャル若大将とのデュエットによる「旅人よ」を歌った。「昔から新しいこと、誰もやっていないことをやるのが好きだった。バーチャル若大将は面白いね」

そして家の戸棚から見つかったという古いオープンリールの話になる。半世紀以上前の作りかけの曲が多数テープに録音されていたそうで、「いい曲がたくさんあるので、詞を付けてレコーディングをしたい、楽しみにしてほしい」と、コンサートが終了しても音楽活動を続けていくことを明言してくれた。

レパートリーには “山” の歌だってある!


そして待望のエレキナンバーへ。「さぁ、盛り上がる準備はいいかな」と呼びかけた後に「蒼い星くず」「白い砂の少女」などを披露。インストの代表作「ブラック・サンド・ビーチ」では加山バンドのツインギターによる演奏を、リズムに乗りながら温かく見守った。

「歌っていると想い出すけど、いろんなことをやってきたね。アルプスの麓まで行って作った歌を歌います」

―― と紹介して、映画『アルプスの若大将』の挿入歌「ブライト・ホーン」と「夕陽は赤く」を続けて歌唱。海の歌が多い加山だが、山の歌にも傑作がある。さらに定評ある外国曲のスタンダードカバーから、音楽を心の糧にして生きていこうという希望を込めて「明日に架ける橋」が歌われた。英語の発音が相変わらず素晴らしい。

歌に込められた感謝の気持ち


この日も客席から見守っていた妻の松本めぐみさんへの深い感謝を述べて歌ったのは、結婚記念日がタイトルに掲げられた「September 4th」。結婚式を挙げた際、チャペルのオルガンで作られたワルツのラブソングである。

続いてやはり家族への愛が歌われた「ぼくの妹に」を歌唱。苦難の時代を乗り越えて訪れた新たな加山ブームの先陣を切った大ヒットであった。あふれる感謝の言葉はさらに曲づくりの最高のパートナー、岩谷時子にも向けられた。

「この曲があったから、今のぼくがあるという曲がある。岩谷時子さんが作詞してくれた曲。聞いてください」

―― と紹介して、岩谷時子・弾厚作コンビによる初めてのヒット曲「恋は紅いバラ」を歌唱。そしてお馴染みの「夜空の星」が歌われて一旦幕となる。

「お嫁においで」「サライ」「君といつまでも」アンコールで披露されたお馴染みのナンバー


大拍手で迎えられたアンコールでは、手拍子に乗って「お嫁においで」を軽やかに歌い、先日の『24時間テレビ』で最後の歌唱を披露した「サライ」で感動のフィナーレを迎えた。

「今日はありがとうございました。本当に皆さんからたくさんの幸せをいただきました。心から感謝しています!」

しかしラストショーはまだ終わらない。再び幕が上がってのダブルアンコールとなり、万感の想いが込められた「君といつまでも」に、長い間若大将のコンサートを見続けてきたファンたちも胸を熱くする。



ショーを締めくくったのは「愛する時は今」


「皆さんの応援があったから歌いきることができた。幸せいっぱいです。本当にありがとう。最後に歌いたかった歌があります」

―― そう語って、最後の最後に歌われたのは、1980年のナンバー「愛する時は今」であった。加山には4人の子供たちをテーマにして作られた曲がそれぞれあるが、これは次男・徹大さんに書かれた「テツのテーマ」である。現在では加山徹の名で俳優業に勤しむ彼へ託された思いも感じとれる。作詞は保富康午。生きることの大切さ、歓びが織り込まれた、ラストショーの最後を飾るに相応しい名歌である。遂に降りてしまった幕にコンサートに携わった全ての人々を紹介するエンドロール。バックには、岩谷時子が最後に書き遺した新曲「海が男にしてくれた」が流された。

それが終わると、今度は加山版「マイ・ウェイ」ともいえる壮大なバラード「時を超えて」をバックに、これまで加山の音楽活動を支えてきた歴代のスタッフと関係者の名前が映し出された。最後は「今まで出逢ったすべての方々が僕の人生におけるクルーです」… のメッセージ。曲が終わり、静かな余韻を残す中で、もう一度幕が上がると、ステージには加山がひとりいた。マイクを使わずに生声で「今日はありがとうございました!」と叫んで深く頭を下げる。幕が降りた後も鳴りやまぬ拍手。約2時間半のステージは穏やかに締め括られた。

「音楽を愛してきて良かった。音楽を親友にしてきて良かった」

噛み締めるように語られた加山の言葉がすべてを物語っている。12月に名誉船長を務める豪華客船「飛鳥Ⅱ」で行われる船上ライブをもってコンサート活動は完全に終了となる。

たくさんの幸せをくれた若大将にぼくらも感謝! だが、これで加山雄三の音楽活動が終わるわけではない。加山雄三と音楽の絆はこれからもまだまだ続いてゆくのだ。

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2022.09.12
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カタリベ
1965年生まれ
鈴木啓之
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