1月25日

桑江知子「私のハートはストップモーション」シティポップの次なるキラーチューン?

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桑江知子のデビューシングル「私のハートはストップモーション」がリリースされた日
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レイニッチのカバーでさらに拍車? 脚光を浴びるシティポップ


2017年、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」が、ヨーロッパやアメリカ西海岸などで脚光を浴びた。それを皮切りに70年代~80年代にかけて生みだされた日本のシティポップが次々と注目を集め、クラブDJから音楽ファンの間へじわじわと広がる現象が起こった。

そして2020年10月、世界的な人気を誇るインドネシアの女性ユーチューバーレイニッチが、松原みき「真夜中のドア~Stay With Me」のカヴァー映像をアップすると、ヒジャブ(ムスリムの女性が頭から身体を覆う布)を纏った姿と流暢な日本語歌詞、その愛らしさが話題となり瞬く間に世界中へと拡散されたのだ。

レイニッチの人気もさることながら、楽曲の良さに気づかされた音楽ファンたちは「真夜中のドア~Stay With Me」のオリジナルを見つけ出そうとネット検索が盛んに行われダウンロードが繰り返された。話題が話題を呼ぶ…… その結果、リリースから40年も経った楽曲にも関わらず、世界に広がるApple MusicのJ-POP部門で上位にランキングされ、Spotifyのグローバルバイラルチャートでは、なんと15日連続世界1位の記録を打ち立てたのだ。

どれもがキラーチューン、シティポップが世界に認知された理由とは?


この驚くべき現象は、スマホの普及と非公式音源ながらYouTubeの影響力であろう。また、近年広がりを見せるTikTokなどの映像系SNS、Apple MusicやSpotifyなどサブスクリプション方式を使った音楽配信…… いわゆるサブスクが市民権を得たことも大きな要因に違いない。

このCD売上枚数のチャートではなく、ストリーミング再生回数やシェア数などから叩き出されるバイラルチャートという新しい価値観が、僅か数年の間に世界中で認知されたのだ。これにより、埋もれていた過去の楽曲であっても、ものすごいスピードで世界へ拡散される時代になった。

これに乗じて日本のシティポップにスポットを当てるクラブDJが、欧米諸国はもちろん、ソウルやシンガポール、マレーシアなどアジア圏でも現れはじめている。ダンスナンバーとして新たにカヴァーされた日本のシティポップはどの曲も “キラーチューン” として絶大な人気を誇るのだそう。

ということで、今回は日本のシティポップ全盛期に作られた意欲作であり、もっと認められていいはずの楽曲だと前々から感じていた桑江知子「私のハートはストップモーション」について語ってみたい。

歌手を目指した桑江知子、きっかけは尾崎亜美の歌


シンガーソングライター桑江知子の生い立ちを、サラッと振り返ってみる。

沖縄の人らしいクリっとした大きな瞳の顔立ちが魅力的で、つい吸い込まれそうになってしまう…… そう、見た目は完全に沖縄の人だ。ただ、5歳の時に父親の仕事の都合で転居してからは高校卒業まで福岡で暮らしていたため、彼女自身に「地元はどこ?」と問えば福岡のイメージが強いのではなかろうか。

幼少のころから歌が大好きで、中学生時代に尾崎亜美の歌声に触れたことで歌手になりたい夢を本格化させたという。そして彼女は叔母の紹介もあって、渡辺プロダクションが設立した東京音楽学院福岡校に通い始めた。

高校三年生のとき、同学院で開催された全国の生徒が集まるオーディションに参加。このとき優勝はできなかったが、渡辺プロダクションのプロデューサーの目に留まり上京を促された。このとき彼女は固く決心をしたのだろう…… まだ肌寒い春の陽射しをいっぱいに浴びた彼女は、高校の卒業式からわずか3日後、一路東京へと向かっていたのだ。

デビュー曲にしてCMソング「私のハートはストップモーション」


1979年1月にリリースされたデビューシングル「私のハートはストップモーション」は、春に突然舞い込んできた恋をテーマに描かれた楽曲で、同年春のポーラ化粧品CMソングとして流れ始めると、その人気はじわじわと全国に広がりをみせる。

彼女が生まれ持った類稀なる歌唱力とCM効果もあり驚異的なロングヒットを記録した同曲は、その年の12月31日に行われた第21回日本レコード大賞で、竹内まりや「SEPTEMBER」、倉田まり子「HOW! ワンダフル」、井上望「好きだから」、松原のぶえ「おんなの出船」を抑え、最優秀新人賞を受賞した。

とにかくイントロからいきなりサビの鮮烈なメロディに、みんな心を掴まれたはずだ。サビから入る曲構成は、“一回で口ずさめる親しみやすさ” というキャッチーなメロディライン必然の手法だ。それはもう、山口百恵、フィンガー5、そして、阿久悠とのコンビでピンク・レディーのヒット曲を連発した稀代のメロディメーカー都倉俊一の真骨頂に他ならない。

 ああ 私のハートはストップモーション
 あなたに出逢ったまぶしさに

僕の注目ポイントは、「ハートは」と「モーション」の部分でメロディを跳ねさせるところだ。ぴょんと跳ねさせることで、後半にかかる歌詞の「ノックもなしに飛びこんできた恋」という驚きとドキドキ感を演出している。もうこのメロディラインだけでご飯3杯はいける!

さらにこのフレーズに神アレンジが加わるのだからたまらない。この曲のノリはミディアムテンポの16ビートだが、「♪ ああ、私のハートは」のあと16分休符を挟んで入るフルートが絶妙で、跳ねたメロディとフルートの愛らしいフレーズが「私のハートはストップモーション」の肝だと僕は断言したい。アレンジを担当したのは日本を代表する編曲家の萩田光雄である。

アーティストの実力を底上げする萩田光雄のアレンジ


萩田光雄。言わずもがなその活躍を知らない人などいないだろう…… 太田裕美「木綿のハンカチーフ」、あみん「待つわ」、久保田早紀「異邦人-シルクロードのテーマ-」、山口百恵「横須賀ストーリー」、中森明菜「少女A」などなど、70年代から80年代にリリースされた数多のアイドルソング、ニューミュージックを次々とヒットさせた立役者として歌謡界に君臨するレジェンドだ。

好みの問題もあるだろうけど、僕がリマインダーで取りあげてきたコラムも萩田アレンジの楽曲が多い。洋楽の知識をどん欲に取り入れアレンジに活かす抜群のセンスが、アーティストたちの実力を底上げしていたのは言うまでもないだろう。

彼は、ある雑誌のインタビューで「私のアレンジした曲が素晴らしいリズムとサウンドとなって演奏されたのです。そのおかげで、プロとしてやっていく自信がつきました」と、駆け出しのころの思い出を語っていた。演奏家をリスペクトすることは良い音楽の源だというのだ。そして、新人を育てるのは育てる側の大人次第だとも言い切っている。もちろん桑江知子のデビューに関しても全力でアレンジを施したことだろう。

歌詞を担当した竜真知子、作曲した都倉俊一、それをアレンジしてまとめた萩田光雄、サウンドとして完成させたスタジオミュージシャンや技術者たち…… 今ならばボーカロイドを駆使してクオリティの高い楽曲をたった一人でも製作することは可能なはずだ。そういうアーティストだって沢山いる。ただ、お互いを認め合ったプロが試行錯誤して作ってきた手の込んだ日本のシティポップに、人は時代を飛び越え本能的にその良さを感じとってしまうのだ。

ラテン音楽や琉球音楽に目覚め、今も第一線で音楽活動継続中


桑江知子は結局この曲の後が続かずに “一発屋” のイメージが拭えない。それでも、ラジオDJとして活躍する傍ら、ラテン音楽や生まれ故郷である琉球音楽に目覚め、今なお第一線で音楽活動を行っている。もちろん「私のハートはストップモーション」も歌い続けてくれている。

それにしても、レイニッチに「私のハートはストップモーション」をカヴァーして欲しいなと思う。彼女なら、きっと新しい感覚で歌いこなしてくれるはずだ。

日本のシティポップはようやく海外で認められ、輝き始めたばかりである。季節に例えればまだ “春”…… そう、突然舞い込んできた恋のドキドキくらいの段階だろう。春に出逢った恋は、やがて開花するのが常。

きっとこれからもどんどん “バズる” 日本のシティポップが出てくるだろう。当時流行った日本の楽曲は、それだけの魅力に満ち溢れているのだ。70年代~80年代は古くて新しい…… そう、懐かしむより超えていけ! なのである。



2021.03.30
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  Apple Music
 

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カタリベ
1967年生まれ
ミチュルル©︎たかはしみさお
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