1995年 12月6日

伊藤銀次とウルフルズ ⑰「ガッツだぜ‼」と「勝手にシンドバッド」の破天荒なポップ感覚

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「勝手にシンドバッド」みたいな曲を書いてよ


ウルフルズのプロデュースをはじめた頃、J-ROCKシーンでは、メロディックなスピッツやMr.Childrenが人気だった。洋楽のオアシスも人気があったせいなのか、ほとんどのロックバンドが、ビートの強くない、それっぽい曲でこの2つのバンドの席にすわろうと群がってるように見えていた。だから僕はウルフルズをその群れに入れたくなかった。その代わりに、エンタメバンドのサザンオールスターズやRCサクセションが座っていて、その後空きっぱなしになってた1990年代の新人席に彼らをすわらせたいと思っていた。

誰もがこの席には座れない。この席に座るためには、「勝手にシンドバッド」のような意表を突くおもしろい言葉使い、聴く者の心を激しく揺さぶる歌が歌えることが必須条件。さらに、ロックバンドなのになんちゃってな感じでサンバをやってしまうサザンオールスターズのような乱暴なくらいに破天荒なポップ感覚がないとできない。 

ウルフルズのプロデュースをはじめてまもなく、トータス松本の才能を実感しはじめたとき、彼こそこの資格を持ったアーティストだと直感した。だから折を見てはトータスに「勝手にシンドバッド」みたいな曲を書いてよと言ってきたものだった。



トータス松本は集中してキラーチューンにトライ


やっとウルフルズに追い風が吹いてきて、いよいよここで勝負のキラーチューンが必要だとなったときに、トータスが書いてきたスピッツのような曲は、その頃のJ-POPシーンを鑑みればわからないでもないが、僕はどうしてもそれにOKを出せなかった。どんなに曲として良くても歌い手の持つ声質や歌い方と曲との相性=化学反応が起こらないと音楽のマジックは起きない。そのときに彼が書いてきた曲はどれもいい曲だったけれど、彼の歌唱スタイルとのマジックは起きず、僕には刺さってこなかったのだ。

もうレコーディングの日が迫っていたが、トータスは彼なりに集中してキラーチューンにトライして消耗していたので、即座に気分を変えて新たなインパクトの曲が出てくる雰囲気ではなかった。困った。でもそこであきらめず、じたばたすることに。ひょっとして、昔まだプレッシャーのなかった頃に伸び伸び作ってた曲の中に、フレーズのかけらでもいいから僕が求めるインパクトのあるおもしろいものがないかと、彼らの事務所にオクラになってた未発表のデモテープを持ってきてもらうことにしたのだ。

遊びで録音していた「ザッツ・ザ・ウェイ」 の替え歌「ガッツだぜ‼」


持ってきてもらったカセットテープ、これがけっこう何本も!! それをかたっぱしから大急ぎで聴いていく作業は大変だったが、この先にお宝なものが眠っているんじゃないかという、まったく根拠はないけど、あってくれという強い思いが僕を駆り立ててくれた。その中には確か「またの下」というタイトルの曲もあって、結構面白い曲だったけれどインディーズっぽくて、もはやメジャーの風格のついてきたウルフルズが必要とする曲ではなかった。

聴けども聴けども求める曲に出会えず、だんだんとカセットテープが残り少なくなってきた時、おっと思う曲に遭遇したのだ。カセットに書かれていたタイトルは「ガッツだぜ‼」。このタイトルにビビッときた。さっそくカセットデッキに入れて聴いてみると、なんとそれはトータスが遊びで録音していた、KC&ザ・サンシャイン・バンドの「ザッツ・ザ・ウェイ」 の替え歌だった。

サム・クックの「ワンダフル・ワールド」の「♪don't know much...」を「♪どの町…」と歌う類稀なる空耳的言語感覚を持つトータスが、「♪That's the way, auh-huh, uh-huh I like it, uh-huh, uh-huh」のフレーズを、 “♪ガッツだぜ、鼻息荒いぜ アハアハ” と歌っていたのに思わず笑ったが、そのおもしろさよりも、僕は“ガッツだぜ”というワードに釘付けになったのだ。

おお、これこそ僕がずっと求めてたウルフルズにとっての「勝手にシンドバッド」に匹敵するインパクトのあるキーワード。取り憑かれたように、この“ガッツだぜ”という言葉から曲に仕上げることをメンバーとレコード会社に直訴して、急遽リハーサルスタジオを押さえてもらうことに。もう時間がなかったから、トータスの曲作りとメンバーとのアレンジを同時進行させるという緊急突貫工事に突入することになったのだ。


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2026.01.24
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カタリベ
1950年生まれ
伊藤銀次
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