1995年 7月19日

伊藤銀次とウルフルズ ⑯ おもしろシングルでブレイクの予感!音楽のマジックは起こるのか?

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サザンオールスターズのメンバーからも注目!


僕がプロデュースしたウルフルズの第1弾シングル「借金大王」のリリースからほぼ1年が経とうとしていた頃、「​​大阪ストラット・パートⅡ」、そして「SUN SUN SUN '95」という超おもしろマキシシングルの立て続けのリリースのおかげなのか、メンバーと僕との必死の二輪三脚がようやく功を奏してきて、彼らを取り囲む状況が急に好転を見せてきはじめた。

現在は平河町に移ってしまった、当時は虎ノ門にあったFMサウンズ。そこで、あれはなんの収録かもう忘れてしまったが、なにかの番組のゲストに呼ばれて行った時、ロビーでばったりサザンオールスターズのパーカッショニストの “毛ガニ” の愛称でおなじみの野沢秀行君に会うことがあった。すると挨拶もそこそこに彼から “ウルフルズって銀次さんがやってんだよね? と声をかけてきてくれて、なんと “ウルフルズ、いいバンドだよね!” のうれしい一言‼

おお、1年前にプロデュースを始めた頃は、いまウルフルズってバンドをプロデュースしてるんだと音楽仲間や知り合いに言っても誰も存在を知らなかったのが、なんと毛ガニ君のような大メジャーバンドのミュージシャンにも注目されるところまできたのは感慨深かった。



ウルフルズに感じたオーラのような輝き


そして僕の目にもあきらかに1年前の彼らと今の雰囲気の大きな変化を感じた瞬間があった。それは、「SUN SUN SUN '95」のプロモーションビデオにもマドンナ役で出演してくれた渡辺満里奈さんの番組に彼らがゲスト出演した時。この番組は広い会場での公開収録で、いつものように客席で観客の中に混じって彼らの出番を待っていた時のこと。

“それではウルフルズのみなさんです” という満里奈さんの呼びこみでステージに登場してきた彼らにこれまで一度も感じたことない、メジャー感とでもいうのか、どこかオーラのような輝き、かっこよさを感じてしまったのだ。これは僕が、あくまでなんの根拠もなく感じたことだが、このビビビッという感じは、まちがいなく強烈で、きっと彼らの目覚めてきた意識がそうさせたのではと嬉しくなったものだった。

そして、それらのことがもっと具体的に僕の目の前に現れてきて、ウルフルズの風が吹き始めてるのをさらにもっと顕著に感じたのは、なんと新聞の記事に取り上げられているのを目にしたときだった。あれは朝日だか毎日だか、どの新聞だったか忘れてしまったが、ある日の夕刊に《来年イキそうなもの》という特集が組まれていて、なんとウルフルズもその来年イキそうなものに選ばれていたのだ。

これはほんとに嬉しかった。嬉しかったことは嬉しかったが、同時に、これは大変だ、彼らへの期待がこんなに盛り上がってきて風が吹いてきたということは、この風が吹き止む前にこの風に乗ってバーンと飛び立っていくキラーチューンが必要になってきたということに他ならない。



歌い手と曲との間に化学反応が起こらない曲には音楽のマジックは起きない


そこで、そのキラーチューンを次のアルバムよりも前に先行して制作を始めることになった。そしてトータスが書いてきた楽曲はなんとどの曲もスピッツのようなタイプの曲ばかり。これには愕然とせざるを得なかったね。“どうしてこういう曲なの?” と尋ねてみれば、“僕らのような曲よりもこういう曲の方が売れるような気がして” という答えが返ってきた。

う~ん、気持ちはわからないでもないが、この1年間で追求し、僕が目指してきたのはサザンオールスターズやRCサクセションのようなタイプのエンタメ・ロックバンド。天才的な詩の面白さと日本人離れしたソウルフルな歌のトータスにはこれしかないと確信して駒を進めてきた僕はここでそれらの曲に簡単にOKを出すわけには行かなかった。

よくテレビで、ヒット曲はこうして作られてこういう形や秘密があるというような番組があるが、もちろんヒットする曲の形というものはあれども、ヒットの要素の中でそれよりも大切な要素は “誰がどんなふうに歌うか” なんだと僕は思っている。どんなにヒットの形に作ってあっても、歌い手と曲との間に化学反応が起こらない曲には音楽のマジックは起きないと僕は信じているのだ。この時点で僕たちに必要だったのは、トータスの歌と激しく化学反応を起こしてくれるミラクルな曲だったのだ。なんとしてでもそんな曲がほしい‼ そこで僕は彼らの事務所にオクラになってる未発表のトータスのデモテープとかないのかを聞いてみたら…… 。

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2025.12.26
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カタリベ
1950年生まれ
伊藤銀次
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