出会ったときが新曲!世代を超えてつなぎたい50年前の名曲 vol.6 ▶ タイトル:トーキョーレギー
▶ アーティスト:高中正義
▶ 収録アルバム:SEYCHELLES
▶ アルバム発売日:1976年7月1日
世界の若者を熱狂させる70代の高中正義 近年、高中正義は海外で爆発的な人気を集めている。個人的な体感では、何年か前に初期のベスト盤『All of Me』(1979年)のアナログ盤が中古レコード店で突然凄まじい値上がりをして “何が起きてるんだ?” と思っていたら、どうやら海外での高中人気が凄いらしいという声が聞こえてきた。
ソロ活動初期にリリースされたキティレコード時代のオリジナルアルバムが軒並み高値になり、かつては100円レコードの常連だった作品まで値上がり。『虹伝説 THE RAINBOW GOBLINS』(1981年)に至っては5ケタをつけることも珍しくなくなった。2024年には、キティレコード時代のアルバムがアナログ盤としてリイシューされ、インターネットには、海外で発売日に行列ができ、すぐに売り切れてしまう様子の動画がアップされていた。
また、高中自身も海外でのライブ活動を始め、ロサンゼルスやロンドンでの熱狂も国内に伝えられている。現地で熱狂しているファンには若者が多いというのだ。僕はここ数年で高中のライヴを3〜4回観ているが、70歳を超えているとは思えない現役感とホールを満員にする人気。そして、活き活きとギターで “語る” プレイも健在だ。ついでに言うと、しょーもない(が愛すべき)ダジャレも健在。海外ライブはダジャレなしでどうこなしたんだろう?(笑)
サディスティック・ミカ・バンドのメンバーとして一躍有名に 古希を超えて世界でブレイク中の高中のキャリアは長い。1971年、日本のロック黎明期に活躍した柳田ヒログループでプロキャリアをスタート。高中の名を一躍有名にしたのは、加藤和彦率いるサディスティック・ミカ・バンドのメンバーとなったことだ。ミカ・バンドでは、ロキシー・ミュージックのサポートとして英国でもライブを行なっている。
ミカ・バンドは1975年に解散。その楽器隊のメンバーでサディスティックスを結成し、同時期に高中はソロのキャリアもスタートさせた。その最初の作品が1976年にリリースされた『SEYCHELLES』。高中は今年でソロデビューから50年を迎えたことになる。
早すぎたリゾートミュージック「SEYCHELLES」 高中初のソロアルバム『SEYCHELLES』は、早すぎたリゾートミュージックと言っていい。発売当時の評価は厳しかったとも聞く。それもそのはず、当時アメリカを中心に流行っていたクロスオーバーは、ざっくりいえばロックとジャズが融合した音楽。1980年代にブームとなった日本独自のフュージョンも、まだ誕生していない。そんな中で、当時の日本人からすればまだ見ぬ楽園だったセイシェルをテーマに、軽やかなインストゥルメンタル・ミュージックを作ったのだから、理解されるはずがない。
ちなみに、1976年当時のセイシェルは、ちょうどこの年に英国から独立を果たしたばかり。すでに世界的なリゾート地になり始めてはいたが、日本からはまだまだ遠い存在だった。1970年代の日本人にとっての憧れは、頑張れば手が届くハワイとグアムだった。高中もセイシェルに行ったことなどなく、空想でこのアルバムを作ったのだった。そう考えると、高中がセイシェルを題材に選んだことは重要だ。ハワイやグアムでは現実的過ぎて、ここまで自由なイメージは広がらなかったかもしれない。ちなみに、『SEYCHELLES』がリリースされたのは、セイシェルが独立を果たした2日後だった。なんとタイムリーな。
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いま最も聴かれている高中正義のボーカル曲「トーキョーレギー」 しかし、こうした歴史的なエピソードと、現在の高中人気は必ずしもリンクしない。例えば、Spotifyの再生回数を見てみると、最も人気の高い高中正義の曲は、一般的な代表曲の「BLUE LAGOON」でも、今でもライブのハイライトである「READY TO FLY」でもない。なんと、この『SEYCHELLES』に収録された「トーキョーレギー」なのだ。
「トーキョーレギー」は、インストゥルメンタルの印象が強い高中にしては意外にも、ボーカル曲である。しかも、高中自身が歌っているという非常に珍しいものだ。録音メンバーはアルバム全体のクレジットしかないため正確ではないが、ギターとボーカルは高中。サディスティックスの後藤次利(b)と今井裕(key)も参加し、高橋幸宏は演奏には参加していないものの、作詞を手がけている。ドラムスは林立夫。パーカッションは浜口茂外也か斉藤ノヴと思われる。コーラスはサディスティックスの録音にも参加しているTan Tan(森野多恵子)。
高橋幸宏が描いた抽象的な歌詞 変拍子を使ったイントロから入り、少し速めのテンポでバックビートが気持ちいい林立夫のドラムス、自由なライン取りで動く後藤次利のベースが曲を支える。そして高中のギターからは、この後トレードマークとなるヤマハSGではなく、ミカ・バンドの頃から使い始めたと思われるストラトキャスターのハーフトーンが聴かれる。
カッティングにはオートワウをかけているようだ。この曲は歌モノということもあって、高中らしいギターのメロディラインは間奏部分で聴かれるくらいで、ソロらしいソロもない。歌詞を書いたのは高橋幸宏。歌詞の中には、このタイトルを連想させるものは一切出てこない。それどころか歌詞自体が抽象的なのだが、あえていうなら、東京から旅立つ前の2人が南の島を夢見ている、という解釈はできそうだ。総じて、高中のソロキャリアの中でも最も “高中らしくない” 曲だともいえそうだ。
50年前の「トーキョーレギー」が、いま世界で聴かれる理由 当時はまだ方向性も定まらず、おそらく後の “高中=夏” というイメージもなかったはずで、ここでセイシェルというテーマを採り上げなかったら、後のソロキャリアもなかったかもしれない。そんな時代の曲が、世界まで含めればいちばん人気だというのは、歴史観に囚われないネット時代ならではの聴かれ方なんだなと思う。
ここしばらく、シティポップの後の流れとしてジャパニーズ・フュージョンの再評価が進んでいるが、高中の再評価にもそういった一面がある。この「トーキョーレギー」は歌入りという点も含め、シティポップ的な解釈で聴かれているような印象が強い。同時に、本来のインスト曲の人気については、また別の角度からの検証が必要だろう。ひとつ確実なのは、時代の流れに負けない強さを持った音楽だということだ。
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2026.09.25