2024年 11月12日

 【一周忌:KAN】大勢のアーティストに愛されたミュージシャンズ・ミュージシャン

20
0
 
 この日何の日? 
「KANタービレ~今夜は帰さナイトフィーバー~」開催日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 2024年のコラム 
大橋純子の最新ベスト「1988-2024」世界的に注目されているシティポップの本質がここに!

大橋純子の最新ベスト「1974-1984」元祖シティポップ・クイーン!せめぎあう洋楽と歌謡曲

瑞々しく弾ける歌声!アイドル松田聖子のイメージをつくった作詞家は三浦徳子である

忌野清志郎に似たZERRY率いる覆面バンド「THE TIMERS」のアティテュードは今も有効なのか?

和田加奈子【35年ぶり単独ライブレポ】シティポップの名曲「夏のミラージュ」も披露!

THE MODSがついに動き出した!新たな一歩となるアコースティックライブいよいよ開催

もっとみる≫




より多くの人に知られるようになったKANの作品


KANさんが空の上に飛び立ち、お引越しをしてから1年が過ぎようとしている。空の上での暮らしにも慣れて、お元気にされているだろうか。“KANさんの作品は、お空に旅立ってから、より多くの人に知られるようになりましたよ” と彼に手紙を書きたい気分になる。

この366日(閏年)の間に、KANさんの発表した作品は、ほぼ全曲サブスク配信され、彼の歌を初めて聴く人たちにとっても、楽曲へのアクセスが飛躍的に向上した。「愛は勝つ」以外にもいろいろな曲があることを知った方も多いと思いたい。

KANさんの往時の映像や楽曲は、61歳の若さで世を去った衝撃事案ということもあって、多数のテレビ・ラジオ等でオンエアされたり、BGMとして使われることもあった。テレビにおいては、そのほとんどが1991年に大ヒットした「愛は勝つ」にまつわる映像で “ああ懐かしい” という雰囲気が大多数だったように見えたが、他の歌手の方がKANさんの曲をカバーする場面が地上波やBSでいくつかあったので少し触れておきたい。



「愛は勝つ」を完全に自分のものにして歌った根本要


ひとつは、2024年3月30日にBSフジでオンエアされた音楽特別番組『歌う ~ずっと好きだった曲~』。ASKAさんがKANさんのバンドで「Moon」を、佐藤竹善さんと塩谷哲さんで「カレーライス」といったカバーを披露している。そしてもうひとつが、スターダスト☆レビューによる「愛は勝つ」。こちらはNHKの『The Covers' Fes』でのオープニングで披露された。

筆者はこの『The Covers' Fes』のステージをNHKホールで観ていたのだが、おなじみの楽曲を、根本要さんが完全に自分のものにしていたように見えた。また、KANさんを慕う若手のミュージシャンやアマチュアの方のカバーがYouTubeでも多数見受けられる。ミュージシャンのみなさんが、このようにしてKANさんの楽曲を歌い継いでくださっているのは、いちファンとして非常にありがたい。

トリビュートライブ「KANタービレ~今夜は帰さナイトフィーバー~」が開催


2023年12月の空の上へお引越しした直後に記した拙稿でも、たくさんのミュージシャンに愛された “ミュージシャンズ・ミュージシャン” であったことや、FM802 / FM COCOLO / STVラジオでオンエアされた「KANのChristmas Song 2023」について記したが、2024年11月12日には、錚々たる面子が揃ったトリビュートライブ『KANタービレ~今夜は帰さナイトフィーバー~』が横浜ぴあアリーナMMで開催される。KANさんのバンドのキーボードを担当する磯貝サイモンさんによると “KAN歌謡祭” だそうだ。

発表されている出演者はHOSTSとしてスターダスト☆レビュー、馬場俊英、スキマスイッチ、秦 基博。ARTISTS(ゲストヴォーカリスト)としてはASKA、K、桜井和寿(Mr.Children)、佐藤竹善(Sing Like Talking)、塩谷哲、杉山清貴、谷村有美、トータス松本(ウルフルズ)、林幸治(TRICERATOPS)、藤井フミヤ、山崎まさよし、和田唱(TRICERATOPS)といった方々。KANさんが生前親しくしていたり、御縁があった、たくさんのゲストがKANさんの歌を歌い、KANさんの思い出話をする時間になる。

誰が、どの作品を、どのように披露するのだろう。そこはホストの各アーティストがいい塩梅で振り分けてくださるのだろう。アーティストのみなさんの個性的な声で聴くKANさんの楽曲も楽しみだ。



KAN最後のライブとなってしまったステージを完全収録


さて、この公演に先立ち、2024年10月30日に2枚組のベストアルバムとライブのBlu-ray Discが発売された。2枚組のベストアルバムは『IDEAS Ⅲ ~the very best of KAN〜』。ライブのBlu-rayは『BAND LIVE TOUR 2022 (25歳) 』。このうち後者のライブ映像について少し紹介しよう。

この映像作品は、旅立ってしまう10か月前の2023年1月10日にZepp Diversity Tokyo
で開催された、結果的にKANさん最後のライブとなってしまったステージがほぼ完全収録されている。KANさんの魅力が余すことなくパッケージングされているのに加えて福音声(副音声)として、過去~現在にかけて関わりがあったミュージシャンを含め、プライベートでも親しくされていたKANさんの友人41組がコメントを寄せている。今回 “KANタービレ” に参加する秦 基博さんや馬場俊英さんも客席で観覧していたとのこと。

筆者は足掛け3日ほどかけてライブと副音声をそれぞれ2回ずつゆっくりと視聴し、とくに副音声には何度も泣かされた。特にデビューの頃に編曲を担当した松本晃彦さんが当時の東中野のアパートでのエピソードを涙声でお話していていたのには、つられて泣いてしまった。舞台監督の方による “KANさんismは永遠に” というメッセージは彼のステージに関わったみなさまの総意だろう。お客さんに楽しんでもらおうというKANさんのスピリットは、KANさんの仲間たちに染みついている。

デビュー以来はじめて披露した「今夜はかえさないよ」


この作品の聴きどころのひとつとして「もしもし木村です」を紹介したい。筆者が1987年にKANさんを初めて知った、「今夜はかえさないよ」の歌詞違いの元曲だ。もともとは木村和さん(KANさんの本名)の留守番電話のオートメッセージのために宅録マルチトラックで作られたものとステージでも語っているが、1987年のデビュー以来はじめて披露したものだった。

当時のレコーディング・ディレクターが気に入って別の詞をつけて「今夜はかえさないよ」になったという。当時の友人の方も副音声でエピソードを披露している。その元データをちゃんと保存している木村和さんという方は非常に素晴らしい。もちろんオートメッセージとしても非常に完成度が高い。気になる方はこのブルーレイを入手いただいて、聴き比べて欲しい。



ずっと親しめる音楽家として、みんなで後世に語り継いでいきたい


根本要さんはKANさんについて “俺たちに楽しい記憶だけを残してくれた、あんな人生を送れたらすごくいい、Grateful Dead” と2024年10月のラジオ番組『wabi-sabi レディオ・ショー』でも話していた。

『KANタービレ〜今夜は帰さナイトフィーバー』では、KANさんを愛するアーティストたちによる、KANさんの楽曲の素晴らしいカバーが、ぴあアリーナMMに響き渡ることだろう。何が飛び出すかワクワクしている。主役がいなくても主役がそこに降りてきているような、そんな空間になるといい。なお、ホストの根本要さんによると、このトリビュート公演は、映像化も検討されているとのこと。

“カンタービレ” とはイタリア語で “cantabile”。“歌うように” “表情豊かに” という意味で、クラシック音楽で発想記号として使われる。大空に旅立った後も、表情豊かなKANさんの音楽は、きっと、愛するみなさんの心の中で時間を重ねていけるのだろう。たとえ、その場に姿は見えずとも、彼の音楽と存在は、多くの人の心の中で、きっとずっと一緒に時間を重ねていく。KANさんのことは、ずっと親しめる音楽家として、みんなで後世に語り継いでいきたい。

▶ KANのコラム一覧はこちら!



2024.11.12
20
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1965年生まれ
コラムリスト≫
30
1
9
8
4
日本における「カノン進行」の源流を探る旅(その3)
カタリベ / スージー鈴木
57
1
9
9
0
日本における「カノン進行」の源流を探る旅(その4)
カタリベ / スージー鈴木
53
2
0
1
0
【追悼:KAN】魅力的な歌の中から1曲選ぶので「よければ一緒に」ラララで歌いましょう
カタリベ / 彩
37
1
9
8
7
J-POP界の盲点に君臨する男、KAN は「愛は勝つ」だけじゃない!
カタリベ / 古木 秀典
28
1
9
8
7
KAN「NO-NO-YESMAN」鍵盤男子が好きだった!
カタリベ / 彩
50
1
9
9
0
伊藤銀次「テレジオ7」収録エピソード! KANが、永井真理子が、BUCK-TICKが…
カタリベ / 伊藤 銀次