南沙織、森高千里―― ともに大ヒットした「17才」
1977年、TBSに入社した私は、制作部に配属され、ピンクレディーの『たまりまセブン大放送!』のADを皮切りに、『ザ・ベストテン』『輝く!日本レコード大賞』 『日本有線大賞』など、2015年の定年まで、数々の音楽番組に携わり、音楽と離れたことのない制作人生だった。
数々の歌手、アーティストと仕事をしてきたが、そうは言っても私も男子。特に好きな… というか好みのタイプの女性歌手が、入社当時は、キャンディーズの蘭ちゃんと南沙織。そして、私が30代になってからは、何と言っても森高千里だった。
南沙織と森高千里。私が大ファンだったふたりをつなぐのが、ともに大ヒットした「17才」である。
1989年夏、大ヒットした森高千里の「17才」―― そもそもこの曲は、1971年、元祖アイドル・シンシアこと南沙織のデビュー曲として発表され大ヒット。沖縄出身の小麦色の健康的な美少女が歌う「17才」は、まさに夏の太陽と海を感じさせてくれた。
そして、それから18年後、この曲は、80年代バブル期のディスコシーンを彷彿させる、ユーロビート調ディスコサウンドとして、夏の太陽から東京の盛り場のナイトシーンをイメージさせる「17才」に生まれ変わったのである。
「ザ・ミーハー」「ストレス」本音とユニークな歌詞で注目
森高千里は1987年デビュー。当初は女優やCMに出演していたが、映画の主題歌を歌って歌手デビュー。はじめはオーソドックスなアイドル風だったが、単なるアイドルとは違う端麗さとアーティスト性を持つシンガーとして徐々に頭角を現し、自ら詞を書き、彼女独特の世界を築きつつあった。
「ザ・ミーハー」「ストレス」など、他のアイドルとは違った、本音とユニークな歌詞で注目を集めていたが、まだ大ブレイクというまでには至ってなかった。
私がプロデュースを担当した、TBSテレビ深夜の公開音楽番組『キラリ・熱熱CLUB』という番組でも、川崎クラブチッタで88年12月の第2回に30分間彼女のライブを収録したが、まだ会場が満員というわけではなかった。しかし、他のアイドルとは一線を画す、透明感とさわやかさを持ち、それでいてアーティスティックな顔も持つ彼女に私は一目惚れしてしまったのである。
「17才」で再びザ・ベストテンのスポットライトに登場!
そして89年5月、7枚目のシングル「17才」が大ヒット。彼女は一躍スターの仲間入りを果たす。それまでの路線も継承しつつ、トレードマークのミニスカートとキラキラ衣装、POPな振付。長尺のイントロと間奏が印象的なダンサブルなアレンジで新しく生まれ変わった「17才」は、特に若い男子たちのハートを鷲掴みにしたのだった。
私が担当していたTBSテレビの『ザ・ベストテン』では、89年3月に「ストレス」でスポットライトに登場。しかし残念ながらこの曲はランクインならず。そして6月15日、「17才」で再びスポットライトに登場。この回は、私が担当ディレクターだったが、演出意図としては、彼女の美脚を綺麗に撮ってめいっぱい見てもらおうと、彼女を高い丸台の上に乗せ、全てのカメラが下からのアオリの絵中心になるよう演出した。
ハンディカメラが丸台の周りを下からアオリで動き、カメラマンは嬉々として動き回っていた。刺激的ではあったが、美脚と全身を余すところなく押さえることができ、意図通りの演出ができた。しかし放送後、プロデューサーから「この番組はそんな下品な番組ではない」と怒られてしまった。
後で聞いた話によると、森高も全国放送を楽しみにしていた熊本のお父さんに「お前は東京でどんな仕事をしてるんだ」と言われたそうである。彼女には悪いことをしたと思うが、でもあれで “人気に火が付いた” と今でも密かに思っている。
「私がオバさんになっても」がメガヒット!
そして「17才」はザ・ベストテンでも3週間後にランクイン、森高千里を代表する曲になった。そしてこの曲をきっかけに大ブレイク。
90年代に入ると、自らの集大成ともなる「私がオバさんになっても」がメガヒットとなりスターとしての地位を盤石のものにする。
さらに「雨」「渡良瀬橋」など全く別の路線でも次々ヒットを出し、今も歌われるスタンダードナンバーとなってゆく。
その後、2000年代に入ると、結婚、出産、育児に専念し、活動を抑制していたが、2008年ごろから再開。ここ数年は積極的にライブを行っている。2022年から2023年にかけてデビュー35周年として全国ツアーを敢行。
50代とは思えない “若さ” と “かわいらしさ” の魅力が全開
私も昨年10月。東京の豊洲PITで行われたライブに行ってきたが、50代とは全く思えない今でも変わらぬ若さとかわいらしさの魅力が全開。
満員の会場も一体となった素晴らしいライブだった。「私がオバさんになっても」と歌いながら全く「オバさん」にならないのはもはや奇跡というか驚きでしかない。
35年間、私も彼女の大ファンであり、今でも業界人ではなく、いちファンとして応援してるし、心から楽しんでいる。かつて関係者席で拝見したこともあるが、皆静かにステージを観てるのが我慢できなくて、今では一般席でファンの人たちと一緒に歌い、振り付けをやりながら楽しんでいる。
並んでグッズやパンフを購入するのも楽しみである。今回は、あいにくコロナ禍で、大声で一緒に歌う事はできなかったが、次のライブでは「17才」で一緒に「♪好きなんだもの〜」とステージに声をかけられるのを楽しみにしている。
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2023.04.11