2023年 8月30日

ディープすぎて沼!80年代女性アイドルの入手困難音源を超マニアック解説(後編)

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コンピレーションアルバム「スポットライト ~会いたかった!! 80's アイドル」発売日
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ディープすぎて沼!80年代女性アイドルの入手困難音源を超マニアック解説(前編)

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『ディープすぎて沼!80年代女性アイドルの入手困難音源を超マニアック解説(前編)』からのつづき

入手困難となった女性アイドルたちの30曲をよりぬき


さて、8月30日にユニバーサルミュージックから発売されたばかりの『スポットライト〜会いたかった!! 80’sアイドル』。なんと、オリコン発表アルバムデイリーランキングで37位に登場したというのだから、その注目度には目を見張るものがあるというものヨ。歌謡曲愛好家の濱口英樹氏が、東芝EMI、ポリドール、トーラス、日本フォノグラム、キティ所属した女性アイドルたちの歌声を厳選、入手困難となっている30曲を2枚のディスクにまとめちゃったという… 大胆素敵なコンピレーションCDであることは前編でもご説明したとおり。

後編ではディスク2収録の楽曲にズームイン… 陰で支えるB班のBEPPAN(別班)としての立ち位置はそのままで、裏・ライナーノーツを書き進めたいと思うのである。未知のアイドルばかりだワ… という方が置いてきぼりにならぬよう、ワンダブル・コミュニケーションを心がけてまいりますので、どうか引き続きお付き合いくださいませネ。

​​ホリプロタレントスカウトキャラバン第8回大会優勝者、田中久美


ショッパナは田中久美(以下、全て敬称略)「火の接吻」で、イタリアンツイストをベースに仕上げてみました風の楽曲。当時の宣伝文句は「ヨ・コ・ハ・マ・体・験」で、石野陽子「ロマネスク・ヨコハマ」と似た雰囲気を持つ。この方については「だれ? の嵐」に巻き込まれる人の数は減少に転じるのではないかと思われる。本ディスク収録組の中では割と有名人で、大手ホリプロ所属のアイドルさんだったからだ。ホリプロと言えば例の… そそっ、「ホリプロタレントスカウトキャラバン」における第8回大会の優勝者で、10万人を超える応募者の中から頂点に立った方なのだ。それだけじゃないぞ… ディスク1の解説で収録楽曲中の売上No.1はベッシーの「ト・シ・ヒ・コ」と言及したが、最高順位No.1の栄光は田中久美の頭上に輝く(オリコン最高59位)のである。ディスク2にてしっかり久美nity(クミニティ)を形成、リーダーシップをとっている感がしてなんだかウレシクなるのである。この勢いでアルバム『Kumi~地中海DOLL』も矢継ぎ早にCD化していただきたいものである。



ディスク2-2は、またもや海のむこうからコンニチワ組となるプリシラ・チャン「千年恋人」。プリシラと言えばテレビまんが「カリメロ」のひねたヒロイン雌鳥を思い出すが、全くの別人である(←というかアチラは鳥なので)香港出身、母国ではスターというフレコミでニッポンにやって来たが、1985年という時代にマッチングしきれず? いまひとつ話題にならなかったと記憶する。アグネス・チャンが日本の歌謡シーンに登場以来、アジア諸国から多くの歌姫が出稼ぎにきたが、その流れが85年になっても脈々と続いていたことに今さらながら驚いてしまう。宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』の広東語吹き替え版でナウシカ役を演じる等の話題もあったが、なによりも現役バリバリなのがプリシラのスゴイところである。

ディスク2-3の黒沢ひろみは、味の素から発売されたソイミルクソーダ「ピナ」の白百合学園ガールズラブっぽいコマーシャルで話題になった目ヂカラ美少女。性の多様性LGBTQと騒ぐ今日から遡ること38年も前のことなのだから、当時としては斬新なアプローチだったと言える… やるな味の素! 本ディスク収録「夏の蜃気楼」は2枚目のシングルで、ディスク1収録のMAKOTO「ムーンライト ツイスト」同様に松尾清憲の作曲。お約束どおりの、ポップなフィーリングに包まれるゴキゲンな夏うたに仕上がっている。



​​3連ロッカバラードに美しいメロディをのせた、ロサ ビアンカ「あ・や・ま・ち」


ディスク2-4に収録のウーパールーパー&チェイン「ウーパー・ダンシング」、同2-6収録のブスっ子くらぶ「高校時代」は本ディスク上である意味浮いた存在なのだが、各々の作家陣は豪華である。前者は尾崎亜美作品で本人もパピ名義で発売、日清焼きそば「UFO」のコマーシャルソングとして使われたが、それと同じ曲をあえてカバーしたのはどういうコンセプトに基づくもの? しかもB面には「インストラクター編」なるナゾ極まるバージョンも。ブスっ子くらぶは、そのネーミングからも察しがつくとおり、おニャン子クラブ人気にあやかり系のユニット。作曲は中森明菜「キャンセル!」や立花理佐「疑問」で知られる伊豆一彦で、舟木一夫「高校三年生」っぽい青春歌謡風味。それにしてもこのネーミング… みなさんそれなりに整ってらっしゃるのにネ… 規制ユルユル時代の成せる業?

同2-10収録の3人組「ふられ上手な女たち」も同系統に属するが、小田裕一郎作曲・笹路正徳編曲によるゴキゲンなモータウンサウンドが心地よい。怪物ランドが出演、テレビ朝日『なに.ソレ!?』のエンディングテーマだったから覚えている人も多少はいるのかもしれない。

続くディスク2-5収録の酒井雅子「キャッツ・ダンス」は西島三重子の作品。映画『11ぴきのねことあほうどり』の主題歌という割にハジけ具合が足らない感じだが、西島エッセンスは随所に感じられる。『11ぴきのねこ』と言えば『スタ誕』出身の北原裕「愛は今から」を思い浮かべるが、コチラも同様に薄暗い楽曲だったような...なんて、またしてもマニアならではの蛇足をネジこむのだから困った性分だこと。ポニーテールが良くお似合い、声質も良いので売り方次第では人気アイドルになれたのでは? すかさず、1枚屋さんで終わらせるにはもったいない!!… と叫ぼうとしたが心配は無用のようである。アイドル廃業後は美魔女雑誌のモデルを経て太田プロダクションに所属、その美貌を活かしながらアジア諸国のメディアや媒体でもご活躍中とな… やるわね、貴女!

ディスク2-7のロサ ビアンカ「あ・や・ま・ち」は、前出のベッシーやプリシラ・チャン同様の海のむこうからコンニチワ組。と言っても実際に海のむこうからだったのか、日本生まれだったのかはよく分からない。プロフィールには「ポピュラーソング、ラテンはもちろん、演歌に至るまであらゆるジャンルの曲を、ラテン民族の情熱と、すばらしい歌唱力、豊かな声量で歌いこなす、本物のエンターティナーです」(←句読点多すぎじゃ? カタコトを文面で演出?)と書いてある。この楽曲も伊藤薫が作詞と作曲を手がける二刀流スタイルで、3連ロッカバラードに美しいメロディをのせた… いわゆる、道ならぬ恋の歌。コレと似た3連ロッカバラードでキティレコード音源、デビル雅美「瞳 ためらい」という隠れた傑作も存在しているため、ぜひ続編に繋いで収録を期待したいところ。



​​心地よいメロディラインは、岩城一生。徳永希衣子「ロマンス通信」


ディスク2-9&13に収録の渡辺絵麻松永夏代子においては、似たようなスタンスを感じさせる。どちらも純粋なアイドルというよりはアーチスト風味が強めのタイプだったからである。前者の「青いハートのストレンジャー」はテレビ東京系のアニメ『マシンロボ クロノスの大逆襲』のエンディングテーマ。

テレビ東京系列での放映だったこともあり、その認知度は低めなのだが、一部の熱狂的なファンは存在している模様。ひととおりの活動を終えた後、地元・福島へ戻り飯坂温泉でバンドのボーカルを務めているという本人からの書き込みが存在するが、それとて相当古めかしい情報と化している。後者は「メランコリーの軌跡」の “ぷちヒット” で知られるが、本ディスク収録「浮気なSACHIOに首ったけ」は3枚目のシングルで、ピカソの辻畑鉄也が手がけた楽曲。むむっ!? ヒロシに騙されるあの曲にちょっとばかり似ている… 気がする。

終盤に差しかかると畳み掛けてくるのは、ディスク2-8、11、12のポリドール娘たち。8の中島康子「瞳の翼で」&12の吉田早都子「たんぽぽ」は同レコード会社のCROSSからの発売。自主も扱っていたレーベルのようだが、いずれもメジャーデビューということでよろしいのかと思われる。前者は森田公一歌謡アカデミー出身の女子で、作曲はもちろんセンセイが担当。後者は阿久悠&平尾昌晃コンビの作品で、いずれも大先生方が関わった楽曲になっている。どちらも勉強しました風のさえずる歌声が特徴だが、このような才能ある娘たちをあっけなく撃沈させていた事実… これは今こそ改めて紐解くべき戦国絵巻ではなかろうかと思うのである。

それは11に収録、徳永希衣子「ロマンス通信」も同様だ。正規ポリドールレーベルからの発売、心地よいメロディラインは『霊幻道士2』の音楽に関わった岩城一生によるもの。涼をもたらすシンセ音とズシンと胸をエグるチョッパーベースを絡めた編曲はあかのたちお… う〜ん、素晴らしいことこの上ないのだが、ヒットした形跡は一切ない。その後、しばしのブランクを経てKiikoを名乗り「六本木トランジット」という曲を発売したが、そのB面がリテイクすらない「ロマンス通信」。これじゃまるで、あおきあい「四次元酒場」と同じやり口(←知る人ぞ知る?)じゃね~か〜と絶叫してしまいそうになる。良曲なんだもん、もう1回聴いてほしくて入れちゃった… のかもしれないが。



​​『毎度おさわがせします』の一般オーディションで優勝した川奈雅子


そして〆となるラスト2曲を飾るのは、ピンクと天然色による彩り。ピンクジャガー「DANGER ZONE」はセイントフォーのやる気まんまんコンビ、鈴木幸恵&浜田範子による2人組。セクシーアイドルユニットというフレコミでの再デビューで、本ディスク収録曲はデビュー曲「待てないON THE BEAT」に続く2枚目のシングル、と書くといかにも後続があったかのように思えてしまうが、残念ながらラストシングルである。ユニット解散後、セクシー云々は浜田範子に脈々と受け継がれ、お脱ぎになる仕事でご活躍されていたのはご存知のとおり。

川奈雅子「天然色(カラフル)ヴィーナス」はTBS系列のドラマ『毎度おさわがせします』の一般オーディションで32,000人の中から優勝をもぎとった女の子。ポスト中山美穂っぽいコを選ぶのが目的だったため、そのイメージには合致していたと思ったが、いかんせん運に恵まれなかった。『毎度おさわがせします2』に出演はしたものの、同オーディションで準優勝の藤井一子の方が目立ってしまうという結果に。挙句の果て、歌手デビューの2日前に交通事故に遭いキャンペーンがすっ飛んでしまったといふ… ガ〜ン。アイドル界の天然色(カラフル)ヴィーナスになるべく、あと一歩のところまできていたというのにネ。ヴィーナスってやっぱり… 気まぐれなのかしらん?



全楽曲を聴いた感想として、レアアイドル歌謡全集として楽しめるのはモチロンだが、それ以上に「音楽」として楽しめる楽曲がセレクトされているということ。監修の濱口氏からも…

「音楽として楽しめるもの、新しいタイプの歌い手や楽曲が続々と登場した80年代の熱気を感じていただけそうなものを中心に選んだ」

とのご回答をいただいた。それこそ、熟考しながら選曲したお姿が目に浮かぶようなセレクションと表現すべきだろう。その結果として、よくある寄せ集めコンピレーション盤とは明らかに異なる何かが感じられるのである。懐かしのアイドルたちに「会いたかった!!」とノスタルジーに浸るも良し、知らないアイドルばかりだけど未知の世界どきどき旅行に出かけてみたい!! というのもOK… どちらのパターンでもご堪能いただけるであろう、充実の2枚組なのであ~る。

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カタリベ
1968年生まれ
チェリー|昭和TVワンダーランド
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