皆さんはクインシー・ジョーンズという名前を聞いた時、何を思い出すだろうか。
僕たちの世代の人間なら、「愛のコリーダ(Ai No Corrida)」を最初に思い出すに違いない。この曲名は76年公開の日仏合作映画『愛のコリーダ』から採られたものだというのは、皆さんご存知だろう。
大島渚が監督を務めたこの作品は、フランス語のタイトルが『L’Empire des sens(官能の帝国)』というように、日本初のハードコアポルノとして話題になったが、国内では今でも修正なしには上映できないらしい。いずれにせよ、なぜこの曲にこの題名が付けられたかは謎だ。
次に思い出すのは、「ウィ・アー・ザ・ワールド」のレコーディングの場面である。ソロパート録音中にスタッフが雑音を入れてしまい、クインシーが珍しく声を荒げて怒り出すシーンがあった。すかさずスティーヴィー・ワンダーが「…クインシー… 怒るなよ」となだめ、その場を取り繕ったというのは有名な話だ。
まあ、それはともかく、クインシーは50年代から第一線で活躍を続けている作曲家、指揮者、アレンジャー、プロデューサーである。米国で平均視聴率45%を記録したと言われるTVドラマ『ルーツ』の音楽や、世界で最も売れたアルバムであるマイケル・ジャクソン『スリラー』のプロデュースも彼の手によるものだ。
80年代にはマイケル・ジャクソン以外にも、ブラザーズ・ジョンソン「ストンプ!」、ジョージ・ベンソン「ギヴ・ミー・ザ・ナイト」、ドナ・サマー「恋の魔法使い」、パティ・オースティン&ジェームス・イングラム「あまねく愛で」といったヒット曲を生み出している。
だが、僕が最も質の高い作品だと思っているのは79年にリリースされたマイケル・ジャクソンの『オフ・ザ・ウォール』だ。
このアルバムからは「今夜はドント・ストップ」と「ロック・ウィズ・ユー」の2曲の全米No.1ヒットが生み出されているが、この2曲に限らず、トータルアルバムとして完成度が高い名作だと思う。
MTV前夜とも言うべきこの時代、音楽が純粋に音楽として勝負しなければならなかったからこそ、こういう作品が生まれたとも言える。だから、この作品を聴いてしまったら、『スリラー』も「ウィ・アー・ザ・ワールド」も “おまけ” みたいなものである。
脚注:
■ Michael Jackson
Off The Wall(1979年9月8日3位)
Thriller(1982年12月25日1位)
■ Quincy Jones
Ai No Corrida(1981年5月30日28位)
■ USA for Africa
We Are The World(1985年4月13日1位)
2016.07.27
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