1988年、困ったことが起きた。
それまで、ピンク・レディーでも少女隊でもセイントフォーでも、何だったらおニャン子クラブからでも誰か一人の推しを見つけられた。
しかし Wink が出てきてしまった時、僕にはどちらか一人を選ぶことはできなかった。マイセンの陶磁器人形のように透き通った白い肌。クールな表情から一瞬見せる微笑み。ちょっとだけ背伸びをしたルージュ…。
「無理、どっちか一人を選ぶなんて無理」
そう思った瞬間、私の中で何かが弾けた。
厳格な家で育った私は新聞を読みながらご飯を食べるとか、寝ながらタバコを吸うとかは許されていなかった。いつも「新聞を読むなら読む、ご飯を食べるなら食べる、どちらかにしなさい!」と怒られていた――
それは言い換えれば「鈴木早智子なら早智子、相田翔子なら翔子、どちらかにしなさい!」と怒られているようなものだった。
が、しかし、愛が止まらない! それは、私の心に JUST「どっちも」という選択肢が生まれた瞬間だった。
キリリとした目元の早智子、ちょっと甘い目をした翔子、私の中で「どっちも」がもう止まらないのである。心が解き放たれた私には理性のバリアは効かない。
その後、彼女たちは少しずつ少女から大人の女性へと変貌を遂げていく――
デビューから2年後にはノーランズのカバー「Sexy Music」(90年)を歌うことになるのだが、その衣装も少しずつ大人階段を上っていたように思う。
彼女たちは歌う “昨日の続きくりかえす記憶(レコード)ならいらないわ”
そう、最早彼女たちは少女ではないのだ。“せつなさに似た 不思議な気持ち あなたの腕で愛に変えて”
変えますとも、変えますとも、こちとらすでに理性のバリアは効いておりません。
しかし残念なことに Wink は1996年に活動を休止し、二人は別々の道を歩むことになるのだが… でも大丈夫「どっちも」という魔法の選択肢を手に入れた私は、今でも二人とも好きだから。
歌詞引用:
愛が止まらない / Wink
Sexy Music / Wink
2018.06.23
YouTube / PolystarTube
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