「T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 “SINGLES” ~波紋~」8月にスタート
90年代に音楽シーンを席巻したビーイング王国の一翼を担い、「離したくはない」、「Bye For Now」などのヒットを連発したT-BOLAN。この夏、史上初のシングル全曲を披露するツアー「T-BOLAN LIVE TOUR 2023-2024 “SINGLES” 〜波紋〜」をスタートさせる。今年の8月から来年にかけて大ホールを中心に全国をくまなく周る大規模なツアーだ。
ビーイングといえば、ライブは行わない、テレビ出演もしないという制限の中でシステマティックにヒットを量産してきたという印象があるが、T-BOLANは、そんなパブリックイメージでは括りきれない熱いロックバンドとしてのスピリットが溢れていた。
1990年結成、記録にも記憶にも残る国民的バンドT-BOLAN
1990年に結成、翌年にビーイングからデビュー。最盛期とも言える1991年から1995年までの4年間で累計1700万枚以上のセールスを記録。しかし、その後の活動は順風満帆とも言えなかった。1999年にヴォーカルの森友嵐士が「心因性発声障害」と診断されたことでバンドはやむなく解散。
しかし、大ヒットを連発した90年代を自らのアイデンティティにするでもなく、森友はミュージシャンとしての矜持と、ミリオンセラーのその先を見据える飽くなき探究心で懸命なリハビリを重ねる。そして2009年に奇跡的に復活。ここまで、自身との戦いに費やされた年数は10年。
2012年にオリジナルメンバーでT-BOLANが復活。2014年、大阪、東京で行われた単独ライブは1995年以来19年ぶりとなった。
「じれったい愛」「マリア」「すれ違いの純情」「刹那さを消せやしない」「おさえきれない この気持ち」「わがままに抱き合えたなら」「LOVE」…といった数々のシングルヒット。誰もが口ずさめるメロディと激しくフックを効かせたメロディ。今も日本のどこかでカラオケでT-BOLANの曲が歌われている。数々の記録を樹立し、人々の記憶にも鮮明に残る。記録にも記憶にも残る国民的バンドであったにもかかわらず、過去に固執している印象は全く感じられない。
ロックバンドのあるべき姿を見せたT-BOLANの2000年代
2015年にはベーシストの上野がくも膜下出血で倒れるというアクシデントがあったが、2017年には、再びバンド活動を再開し、2018年には24年ぶりとなる全国ツアーを敢行。
そんなT-BOLANの2000年代は、やはり、バブルの残り香の中ヒットを連発したバンドのイメージとは相反する。まさにライブを主軸に汗をかきながらライブで観客を沸かせるというロックバンドのあるべき姿だった。
今回のツアーは彼らのキャリア初となるシングル曲のみで構成されるシングルベストツアーとなる。しかし、これは単なる懐メロツアーで終わることはないだろう。
28年ぶりのオリジナルアルバム「愛の爆弾=CHERISH 〜アインシュタインからの伝言〜」
それは、昨年、リリースされ、28年ぶりのオリジナルアルバムとなった『愛の爆弾=CHERISH 〜アインシュタインからの伝言〜』を聴けばわかるだろう。このアルバムはパンデミックの中で制作されたT-BOLAN初のコンセプトアルバムでもある。普遍的なアメリカン・ロックをフォーマットにしながら90年代の活動期よりも、より音が剥き出しになっている印象を感じる。時にはギミックなしのギター本来の音が、時にはピアノ一音一音の素朴な音色が森友のヴォーカルと見事なアンサブルを見せる。
そこに存在するのは、時を経て熟成した今のT-BOLANだった。90年代のヒットチャートを席巻した懐かしのバンドという印象は微塵もなく、パンデミックを経てどのような返答を出したのかという現在進行形のロックバンドらしさを感じる。
そんな現在進行形のバンドが、当時のヒットシングルをどのように奏でるのか興味は尽きない。苦境を潜り抜け、それでもバンドにこだわり結成30年を越えた今だからこそ聴こえる音がある。かつての名曲たちに新たな命が注ぎ込まれ2023年の今に放たれるのだから。
▶ ビーイングに関連するコラム一覧はこちら!
2023.06.10